2026年4月より、北海道大学総合博物館の館長を務めることになりました山内太郎です。
これまで私は、人類学・国際保健の分野において、「モノ」そのものではなく、「ヒト」、すなわち人々の暮らしや健康、そしてそれらを取り巻く環境との関係を主な研究対象としてまいりました。そうした歩みを重ねてきた自分が、標本や資料を扱う博物館の館長という役割を担うこととなったことに、不思議なご縁と同時に、大きな責任を感じております。
北海道大学総合博物館は、1999年の開館以来、本学の教育・研究成果を広く社会に発信する拠点として発展してきました。2016年のリニューアルを経て、現在では、本学の歴史を伝える展示や、各学部の最先端の研究を紹介する展示、バックヤードの一端を公開するミュージアムラボ、標本に直接触れることのできる展示室、さらには多様な企画展示など、特色ある取り組みを展開しています。また、約300万点に及ぶ標本・資料を基盤とし、教育・研究・社会貢献を一体的に推進する場として、多くの方々に支えられてきました。
教育面においても、本学学生に対する講義や演習の提供に加え、ミュージアムマイスターコースの実施、市民向けセミナーやワークショップの開催など、生涯学習の拠点として重要な役割を果たしています。さらに、札幌農学校第2農場や函館キャンパスの水産科学館など、学内各所の施設とも連携しながら、本学の知の蓄積を多面的に発信してきました。
こうした歩みの中で、本総合博物館は、学生・教職員のみならず、地域の皆さま、さらには国内外から北海道を訪れる方々にとっても、かけがえのない存在となりつつあります。一方で、大学を取り巻く環境は依然として厳しく、限られた資源の中で、教育・研究・社会連携をいかに発展させていくかが問われています。
北海道大学が掲げるキャンパスミュージアム構想は、歴史的資産や自然環境、学術資料を活かしながら、大学全体を一つの「知の場」として開いていく試みです。その中核を担う総合博物館には、学術資料の保存・研究機能にとどまらず、人と人、人と社会をつなぐ結節点としての役割が強く期待されています。
博物館は単に「モノ」を展示する場所ではありません。その背後にある人々の営みや知の積み重ねを伝え、新たな対話や気づきを生み出す場です。これまで「ヒト」を見つめてきた自分の視点を活かしながら、展示や活動を通じて、来館される皆さま一人ひとりが、自らの生活や社会、そして地球とのつながりを感じることのできる場を育てていきたいと考えています。
大学の博物館は、まさに「大学の顔」であり、社会との接点です。だからこそ、専門的な知を分かち合うだけでなく、市民の皆さまとともに学び、考え、新たな価値を共に創り出していくことが重要です。
今後は、スタッフおよび関係者の皆さまと力を合わせ、これまで築かれてきた基盤を大切にしつつ、より一層、社会や市民に開かれた博物館を目指してまいります。そして、本総合博物館が、北海道大学の知を体現する場として、また地域社会と世界をつなぐ拠点として、さらに発展していくことを願っております。
皆さまのご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2026年4月
山内太郎
(総合博物館長・保健科学研究院教授/人類生態学)

