コレクションの概要と特徴

キャビネット内の菌類標本

キャビネット内の菌類標本

1876年創立(札幌農学校創設と同年)、全体で177,000点の標本があり、宮部金吾(1860-1951)、伊藤誠哉(1883-1962)、村山大記らの重要なコレクションを含む。
北大における菌学の基礎は、札幌農学校2期生の宮部金吾によって固められ、伊藤誠哉が引き継いだ。伊藤は『日本菌類誌』の刊行に心血を注ぎ、第1巻 (1935)、第2巻第1~5号(1935-1959)、第3巻第1号(1964)を出版した。その後、第3巻第2号が1988年に大谷吉雄により出版されている。なお、伊藤は1945年から5年間北大の総長も務めている。


『蝦夷採薬草木図』のキヌガサタケ

『蝦夷採薬草木図』のキヌガサタケ

SAPAは長く農学部植物病理学講座により管理されてきたが、1999年に総合博物館が設立されたのに伴い、2000年に総合博物館に移管された。SAPAには、上記の『日本菌類誌』の基になった標本群や多数のタイプ標本が含まれている。また日本産標本が多いのは当然の事ながら、戦前の樺太や千島列島産標本をも含む点は特筆される。このようにSAPAは菌類標本庫としての質は日本でもトップクラスであり、特に菌学者にとってSAPAの標本は一度は検討を加えなければならないものとなっている。
ホイッタカーの5界体系において、菌界は動物界、植物界と並んで重要な1生物界として認識されている。従来の形態学的研究に現代的な遺伝子研究を組み合わせることにより、新しい菌類体系学がSAPAを基礎にして発展することが期待される。