概要
研究者が生成・収集した学術資料のうち、写真・映像や音声、フィールドノート、実験ノートなどの学術活動に関わる記録資料群の体系的なアーカイブ化は、未開拓の分野である。アーカイブの収集保存対象である“資料”としての映像と、アーカイブを活用するための“機能”としての映像の両者を扱う映像資料学を切り口に、学術資料アーカイブの構築実践と関連する課題について研究を進めている。
テーマ
学術資料の再資源化
学術活動の現場で生み出された記録資料の主要な役割である「証拠性」以降の資料の果たす働きに関心がある。資料にまつわる様々なコンテクストは、資料の相互連繋を強め証拠性を補強する一方で、適切に分節化・抽象化すれば見知らぬ資料同士を結びつけ、研究に用いられる可能性も高めることができる。このような再資源化に適した学術資料アーカイブズのあり方を研究している。
映像資料学の構築
映像資料学は主として二つの方向を持っている。学術活動を記録し媒体に定着する/博物館資料や学術資料の暗黙知・コンテクスト情報を記録する/あるいは既存の学術資料やそのコンテクストを編集し映像作品として組立て発信する、という新しく映像を創り出す取り組みと、既存の映像を再資源化するという取り組みである。後者においては、映像メディアの独立性・可搬性が原因で、もとのコンテクストから切り離されて残存することが多く、その方が資料の利便性が高い場合がある。映像資料の特性に合わせたアーカイブズを検討すると共に学術映像資料の分類の検討も行っている。
学術映像史
研究者による映像メディアの利用史研究を行っている。研究者自らが主導した映像実践のあり方、映像制作を生業とする職能集団との協働、社会発信の方法などを手掛かりに調査を進めている。
今後の展望
学術資料アーカイブや博物館資料の利用者は、研究者にとどまらない。とくに資料価値が未分化の状態においては、幅広い利用のあり方を検討する必要がある。利用者研究として、アマチュアやナチュラリストの概念と活動、また利用者が博物館やアーカイブに対して抱く公共性概念についても研究を進展させたいと考えている。