概要
地質学は大地の成り立ちを解き明かす学問である。大地の構成物質である岩石・鉱物を解析することで、その岩石・鉱物を生成した固体地球(主に地殻およびマントル)の運動とダイナミクスを復元することが可能である。大陸衝突帯やプレート沈み込み帯などのプレート境界収束域で生成される変成岩および深成岩を対象に、地質調査、薄片の鏡下観察、各種解析(鉱物化学組成分析、全岩化学組成分析、ジルコンまたはモナザイトを用いた年代測定など)を通して、変成岩および深成岩の形成過程や起源・帰属解明等の研究を行っている。
テーマ
ゴンドワナ超大陸の形成過程の解明
東南極の一部やスリランカは、約7~5億年前のゴンドワナ超大陸形成に伴う大陸衝突帯に位置していたと考えられている。つまり、これらの地域に産する変成岩は、ゴンドワナ超大陸の形成過程を記録していることになる。第58次・第60次日本南極地域観測隊に参加し、昭和基地周辺の東南極リュツォ・ホルム岩体およびその周囲の岩体の広域調査・試料採取に成功した。東南極リュツォ・ホルム岩体の変成岩から鏡下観察およびジルコン年代解析を行い、一定の知見が得られており、更なる解析を進めている。
日本の基盤岩類の起源と形成史の解明
日本列島最古級の地質体である黒瀬川構造帯、長門構造帯、三郡蓮華帯の変成岩および関連する深成岩を主な対象として分析し、日本列島の初期の発達史の解明に取り組んでいる。そのほかに、日高変成帯などの北海道内や栃木県内の変成岩・深成岩類の研究にも着手している。
今後の展望
変成岩はプレート収束域における地殻変動の「化石」であり、変成岩中に含まれるジルコンという鉱物はその履歴を記録した強固な「タイムカプセル」とみなすことができる。変成岩およびジルコンの解析を通して過去の地球のプレート運動像を明らかにすることで、現在、日本列島の地下深部で起きているプレートの沈み込みまたは衝突でどのような現象が起きているのかを理解することに貢献する。東南極をはじめ様々な地域の変成岩類を解析し、各地域の地質史や過去の地球の地下深部で生じた諸現象を明らかにしていきたい。