概要
古生物学とは、地質学の一つで、過去の生物についての学問。化石を用い、生物の進化や生物と環境との相互作用といったメカニズムを追求するもの。進化や絶滅といったプロセスやメカニズムの解明、地球温暖化などの環境問題を考える上で、最も重要な研究分野の一つ。樺太や北海道を中心とした化石が保管され、これらを題材にした研究が数多くなされている。ニッポノサウルスやデスモスチルスの全身骨格も当館で保管されている。
テーマ
生態復元からみた、恐竜類から鳥類への進化
鳥類が中生代の恐竜類からどのようにして“鳥類化”したかが、現在の議論の的になっている。内温性は、どこまでさかのぼれるのか?脳の作りはいつから“鳥類タイプ”になっていたのか?食性がどのように変化し、原始的な鳥類は生態系においてどの位置に立たされていたのか?など、化石から復元できる生態から、恐竜の“鳥類化”のプロセスを探る。
アジア(モンゴルと中国)と北米(カナダ)における恐竜類の多様性
世界に恐竜王国は6カ国ある(中国、モンゴル、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、イギリス)。中国とモンゴルは、これまでも多くの化石を産出しているが、現在も未開拓の地が多く、恐竜時代において恐竜の多様性がどの程度だったのかは不明な部分が多い。比較的研究が進んでいて、同時代で同じ古緯度のカナダ・アルバータ州の恐竜と比較することで、大陸間で恐竜の多様性の相違を追求する。
北極圏での恐竜の多様性と適応能力
恐竜は、全大陸を支配した大型陸棲動物である。その分布域は、極圏にまで及ぶ。アラスカ州の恐竜研究を行い、当時の環境や生態系の復元、アジア−北米間においての恐竜の移動の時期と種類を解明、恐竜やその他の動物の内温性の有無といったことを追求している。
爬虫類における子育ての進化
爬虫類は一般的に卵生であるが、何度も胎生を収斂進化させている。進化型の主竜類(ワニ類、鳥類を含む恐竜類)は比較的複雑な卵の構造を持っており、胎生を行った形跡はないが、原始的なものには胎生のものもいた。また、鳥類に近い恐竜類は、雄が子育てをすることが知られているが、その特徴が爬虫類の進化の中でどこまでさかのぼれるのかは、未だ議論がある。原始的な主竜類を研究対象とすることで、卵生・胎生や雌・雄の子育ての進化が、いつどのように起こったのかを追求している。
ワニ類トミストマ亜科の起源と進化
現在生きている唯一のトミストマ亜科のワニは、東南アジアに棲息しているマレーガビアルである。このマレーガビアルはワニの進化の解明の鍵となる動物であり、世界的に注目を浴びている。トミストマ亜科の絶滅種に、大阪豊中市から発見されたマチカネワニがいる。このワニを中心に、東アジアから産出しているトミストマ亜科の化石を研究し、起源と進化を追求している。
今後の展望
恐竜の鳥類化というものを体系的に研究し、恐竜から鳥類への進化過程を探っていきたい。また、恐竜の多様性が地域によってどのように異なるかを調べ ていき、環境への適応能力やそれに伴うストラテジーのメカニズムを少しでも多く解明したいと思っている。現在、モンゴルやアラスカといった北方圏を研究対 象としているが、その調査範囲を広げていきたいと考えている。