2025年度企画展示「クジラの化石展」展示解説担当学生の最終考察レポート
ミュージアムマイスター認定コースの一環として、2025年度企画展示「クジラの化石展-札幌市博物館活動センターのコレクションより-」では7名の学生が、博物館の展示解説ボランティアの方々とご一緒に展示解説に取り組みました。
事前に、展示を企画した札幌市博物館活動センターの担当学芸員からは展示内容について、総合博物館の博物館教育担当教員からは解説の意義と方法について説明を受けました。会期中、解説に慣れていらっしゃる博物館の展示解説ボランティアの方々からアドバイスしていただいたり、他学生解説スタッフの対応を参考にして、6回の解説に臨みました。展示室での対応や質疑応答の内容は担当学芸員と教員でチェックし、解説スタッフ全員で共有しました。毎回、解説終了後にはミニレポートを提出して担当教員からのフィードバックを受けました。また、互いの対応や課題、思いを話し合う中間報告会にも参加し、展示解説についての個々の意識や臨機応変な取り組み方を共有することができました。
以下、7名の北大生の最終考察レポートをご紹介します。
今回最も印象に残ったことは、「札幌でクジラの化石が見つかり、札幌の名前を冠した学名をつけられたこと」に、多くの方が関心を持ったということである。私は学部時代から生物学を専攻してきたが、生物学という分野は一般の方にとって馴染みがない部分が多く、関心を得にくいという印象があった。特に、古生物学は恐竜の人気が突出しており、恐竜の化石もある博物館でクジラの化石に関心を持つ人は少ないのではと危惧していた。しかし、いざサッポロクジラについて説明をすると、幅広い層から関心を寄せられた。特に札幌に住んでいる方は、地元が900万年前は海の底で、13mもの大きな鯨が棲んでいたということに驚いていた。サッポロクジラの化石の発見経緯も身近なことであり、さまざまな質問をいただいた。道外や海外から来た方も、自分が今いるところを鯨が泳いでいたということに興味を持っており、化石資料自体の価値だけでなく、それを地元で展示することの意義を感じた。
岩﨑 美穂(理学院 博士課程1年)
北海道大学総合博物館の来館者は、地域の方々や学生に加えて観光客も非常に多く、来館の目的や興味関心がある分野も多岐にわたる。そのため、単に知識を身につけて解説に臨むだけでなく、会話の中から反応が良い話題を探ったり、出身地や来館目的などの情報を手掛かりに話を広げたりといった工夫が求められた。自身が伝えたい内容を意識しつつも、来館者とのやり取りから得られるコミュニケーションのヒントを拾い、状況に応じて柔軟に対応することの重要性と難しさを実感した。
誰かと話しながら展示を巡る人、特に目的を持たずに訪れる人、一人でじっくりと鑑賞する人、丁寧に写真に収める人、メモや絵として記録を残す人、特定の展示に強い興味を示す人、何度も繰り返し訪れる人。展示の楽しみ方は自由であるからこそ非常に多様であり、それゆえ解説員のあり方も一様ではない。来館者と関わりながら展示に向き合うことで、これまでとは異なる博物館の楽しみ方を知ることができた。
鎌田 歩果(大学院保健科学院 保健科学専攻 修士1年)
展示解説員を務める中で、「私だからこそできる解説とは何か」を意識して取り組んだ。本企画展は、クジラの化石を主題としつつ、展示後半では植物分野や博物館の役割、札幌市博物館活動センターの活動についても扱った。しかし、クジラの展示のみを観覧する来館者が多く、いかに展示後半の内容も伝えることができるかが課題であると認識した。そこで、クジラの展示解説を糸口に植物にも当てはまる事例や、博物館の活動に繋げて解説を行った。このように展示間の関連性を示すことで、来館者の視野を広げることができ、解説員が在廊する意義を見出せたと言える。
加えて来館者との対話を通じて、博物館の役割のひとつである「交流活動」を実践する機会となった。「クジラの化石展」というフィールドで、多様な世代・専門分野を持つ来館者と互いの分野の知識や意見を交わし合うことは、新たな発想が生まれ、各々の分野に微力ながら貢献する可能性を持つと考える。
田邊 陽子(農学部 森林科学科 2年)
私は展示解説を受けることが苦手で、博物館に展示解説員の方がいると、話しかけられる前に展示室を出てしまうことも多かった。来館者として展示解説の良さを実感したことがなかったため、初めは「展示解説でより良い博物館体験を作る」ことよりも「展示解説が博物館体験の邪魔をしない」ことを意識していた。そのため、初めは恐る恐る話しかけ、簡潔な解説をすることしかできなかった。しかし、来館者の方から質問を受けて対話を重ねる中で、興味や解説の⾧さの好みが人それぞれであることを実感した。また、解説を重ねるうちに解説内容の幅が広がり、解説の⾧さ調整を柔軟に行うことができるようになったため、リアクションを見ながら、少しずつ解説を行うスタイルを身に着けることができた。意識も自然と「展示解説でより良い博物館体験を作る」ことへ変化し、全6回の展示解説を通して、来館者の方の興味や好みに合わせた展示解説を行うことで、より良い博物館体験を作り上げることができる、ということを解説者側から実感することができた。
徳井 翠(理学部 地球惑星科学科 4年)
私は今回の展示解説で初めて北大総合博物館の展示に運営側として参加した。始めは、鯨類の研究に興味があるためという理由で参加したプロジェクトだったが、解説を重ねるごとに、博物館でのコミュニケーションは解説員→来館者という一方的なものではなく、相互に意見や考え、体験を伝え合う「対話」であること、その対話が来館者に展示の記憶をより強く印象づけること、来館者にはそれぞれ異なるバックグラウンドがあり、それを踏まえて展示を見ていることなど、来館者目線では分からない、解説員を経験したことで初めて実感し、学んだことが多くあった。そして、これらを意識して解説を行うことで、ただ知識を放出するだけではなく、心の中で常に、来館者それぞれの人生の中に少しでもこの展示が記憶として残るものになれば良いなと考えながら話をするようになり、自分自身の博物館に対する考え方が大きく変わった機会となった。今回の解説員の経験を機に、ミュージアムマイスター認定コースに登録した。今回のクジラの化石展示解説で得た考えを、これからの活動でより深めていければと思う。
三﨑 優香(水産学部 海洋生物科学科 2年)
私はもともと古生物に興味があり、今回の展示解説プロジェクトに参加した理由もサッポロクジラの研究に関わった先生方から直接お話を伺いたいという思いが大きかった。そのため自分が解説を行うこと自体には、当初それほど強い関心を抱いていたわけではない。実際最初の解説では、本当に話を聞きたい方とそうでない方をうまく見分けられず戸惑う場面も多かった。しかし、回数を重ねるうちに自分の好きなことを人に伝える楽しさを実感できるようになった。また、自分と同じく化石に興味を持つ来館者の方々との交流も心に残っている。特に「すごく楽しそうに解説していて、聞いているこちらも楽しかったです。頑張ってください。」という言葉を何度かいただき、解説板や音声ガイドではない“人による解説”ならではの魅力を知ることができた。私は、今回の展示解説プロジェクトを通して、自分の関心のある分野について聞き手を巻き込みながら楽しく伝えられる、という自分の新たな長所に気づくことができた。今後も機会があれば、このような解説の活動に携わっていきたい。
三好 礼人(総合教育部1年)
私は文学部所属で、企画展「クジラの化石展」で取り上げられたクジラと植物、その両方が専門外だ。そんな私が展示の解説者を務め、貢献できたのではないかと思えたことがある。それは、展示のストーリーを辿る手助けをすることだ。
今回の企画展には目玉であるサッポロクジラの頭部化石レプリカ以外にも、北海道各地で見つかった各時代のクジラ化石や札幌の希少植物標本等が展示されており、最後に札幌市の博物館計画に関するパネル展示という流れになっていた。展示の順番も緻密に工夫されたものだったが、展示品ひとつひとつに集中していると全体の大きな流れを見逃してしまいがちであると、展示解説をする中で気づいた。そこで、単体の展示物の解説ではなく、前後の展示と関連付けた解説や続く展示への誘導を心掛けた。
事前研修で習ったことや自ら素人なりに調べたこと以上の詳細な解説はできなくとも、自らも学びながら展示全体のメッセージを伝える手助けをするひとつの方法を発見できたのではないかと思う。
山中 葉奈子(文学部 人文科学科 映像・現代文化論研究室 4年)







