2023年度卒論ポスター発表会 発表者・運営スタッフの事後考察

2024年3月2日(土)・3日(日)に開催された2023年度卒論ポスター発表会で、ポスター発表をした学生と運営に携わった学生の事後考察を一部ご紹介します。

発表会当日の様子はこちらをご覧ください。

 

<発表者の事後考察>

三年前に運営スタッフとしてこの発表会に携わらせていただいたことも遠い昔の記憶となり、今回は発表者としてこの会に臨んだ。準備段階において、学科内での発表ポスターから簡単に今回のポスターが作成できると安易に考えていたが、導入において限られた紙面のなかでいかに前提知識を共有するかで悩まされた。発表会当日、すらすら内容を理解してくれる方がいらっしゃった一方、発表が終わった後にそもそも最初の部分から分からなかったという意見もいただき、限られた時間の中で専門度が高い内容を伝えることの難しさを痛感した。この会は学生から市民の皆様へ向けた発表会という稀有な機会であるが、市民の方とお話する中で自然災害や環境問題への意識の高さを伺うことができ、そのような関心が高い箇所とより絡めて発表を行うことができればより興味を持っていただけたのではないかと考えた。発表内容以上に大きかったのは、聞いて頂いている方の頷きや内容を理解しようとしてくれている姿勢が発表する上で非常に励みになると実感したことであり、今後私が聞く側になった際もそのような姿勢を心がけていきたい。

荒岡 柊二郎(理学部 地球惑星科学科 ジオテクトニクスグループ)

 

 

卒業研究のポスター発表を通じ最も実りを感じた点としては、分野外の方々からもご意見・ご感想を戴けたことにある。何度も練習に付き合って下さった、博物館の先生方や運営スタッフの方々は勿論、市民や審査員と交流ができたことが印象深い。ポスターの前には自分と数名の聴衆しか居らず、内容を話しながら一々相手の反応を確認することができるため、それぞれの人がどのようなことに興味があり、何に対して面白いと感じるのかが伝わってくる。また、聴き手としても話し手との距離の近さから、素朴な疑問を投げかけてきて下さる。分野外の方ということもあり、思いもよらない視点を持っている方も多い。研究が始まり一年しか経っていないとは言え、自らの研究内容については詳しくなっているものである。その中で、自分の中で解決した疑問は既に当たり前のものとして扱われていく訳であるが、市民向けポスターを通じて、新鮮な視点を持って自分の研究を概観できたように思う。

石川 弘晃(農学部 生物資源科学科)

 

 

卒論ポスター発表会を終えて、自分の卒業論文に対する理解が深められた機会であった。その理由の1つ目は、自分の専門ではない人、初めて聞く人に伝わるように説明するために、研究における目的や背景、構成を改めて見直せたということである。ポスターの中間発表や発表会当日に、他の発表者の方々や先生方からいただいた疑問や感想から、普段共有の認識を持っている人たちの間で、当たり前に考えていたことが、当たり前ではなく、そこをどう説明していくのか、自分でかみ砕いて説明していくなかで、新しい切り口や論点につながった。2つ目は、発表会当日に、これまでの卒業論文に取り組んだ期間の中で一番、短時間に何回も説明したことである。1日目よりも2日目、一回前よりも、と説明の構成がよくなっていくことを感じた。今回の経験から、人に何かを伝えるとき、どれだけ発表の構成を考え、みんなが分かるように伝えられるか、を意識していきたい。

伊藤 貴洋(工学部 環境社会工学科 建築都市コース)

 

 

今回のポスター発表により、自分の研究分野についてさらに知見を深めることができた。まず、ポスターや発表原稿の作成では、自身の研究の要旨を可視化することができ、内容の整理につながった。ポスターや発表原稿の作成は、研究内容を前提知識のない第3者に、15分という短い時間で説明することが目的であったが、結果として、自らの研究の不十分な点を見つめ直す良い機会となった。また、発表では建築とは違う分野の視点から多くの知見を得ることができ、沢山の学びを得ることができた場であった。それと同時に、今回の研究は、あくまでも建築分野に視点を絞り、相関関係を分析したものであるという事を上手く伝えきることができなかったことも実感し、今後の課題としたい。

上野 怜也(工学部 環境社会工学科 建築都市コース)

 

 

私が今回の発表を通して最も強く感じたことは、発表を聞いて下さる方一人一人にしっかり向き合うことの重要性と楽しさである。私の研究テーマは特に身近にあるものではなく、来場者の方に理解して、興味を持っていただくための工夫が一番の課題であった。そのため、発表の中では一方的に説明してしまうのではなく、来場者の方と会話することを心がけた。説明を途中で一度区切って疑問点を聞いたり、少し化学的な部分はどの程度知識があるかを確認したり、時には私の研究に興味を持った理由を尋ねたりした。結果的には私の予想以上に深く理解していただくことができ、さらに今後の研究が楽しみだと言って下さる方もいて、研究のモチベーションにも繋がった。臨機応変な対応をしながら、楽しんで発表を行うことができたことから、今回の発表だけでなく、これまでの博物館での活動や1年間の研究を経験した自分自身の成長を強く感じた。今後このような機会があれば積極的に参加していきたい。

木元 友理香(工学部 環境社会工学科 資源循環システムコース)

 

 

卒論ポスター発表会全体を通して、非常に多くのことを学ぶことができたが、特に私にとって有意義であったのは「どうすれば一般の方にわかりやすく、そして魅力的に伝えることができるか」を学べたことである。当初、ポスターのレイアウトを考えるにあたり、学科発表ポスターの作成時よりも「図の多用」、「平易な文章」ということは意識していたつもりであった。しかし多くの方にご意見をいただく中で、一般の方にもわかりやすく、より興味を持っていただけるようなポスターは自分が思っているより何倍もかいつまんだ説明をしなくてはならないということがわかった。また、このことは発表時の口頭説明においても当てはまる。最初は専門用語をそのまま使って説明してしまうといったことがあったが、回数を重ねるごとに聞き手の理解が追いついているかを顔を見てある程度判断できるようになり、こういった発表の場では、聴衆の知識レベルに基づいて口頭説明のレベルを柔軟に変えることが重要だということがわかった。

菅 遥斗(理学部 地球惑星科学科 進化古生物学研究室)

 

 

私は卒論ポスター発表会を通して、聴く人とのイメージの共有が重要だということを学んだ。大学の研究は専門性が高いうえに、ポスターでは限られた情報しか伝えられないため、ポスター一枚だけで自分の研究内容を深く理解してもらうことは難しい。そのため、研究対象の大きさや質感、行っている研究の内容を、たとえ話などを用いながら丁寧に説明し、聴く人に自分の研究を詳細にイメージしてもらうことが重要だと学んだ。また、わかりやすい解説を行うためには、聴く人の反応や表情を観察し、適宜解説を変えながら柔軟に対応することが必要だと学んだ。理解されていないようであれば説明を追加し、より平易な言葉に置き換えることで、聴く人の理解を促進する必要があると学んだ。以上のスキルは研究発表に限らず、幅広い場面で役立つと考える。今回学んだことと浮き彫りになった課題をもとに、今後も相手に合わせた表現を心掛けていきたい。

杉浦 寛大(理学部 地球惑星科学科 進化古生物学研究室)

 

 

今回参加した博物館卒論ポスター発表の魅力はさまざまな前提知識を持っている市民の方に発表をするということだと思う。そのためまずは内容をわかりやすくするために、普段は既知のものとして飛ばしてしまうことも一つ一つ丁寧に説明することを心がけた。しかし発表をする中で実際は内容の分かりやすさだけではなく、聴衆の方々がどのような知識を持っているのかを知ることが必要であると感じた。そこで行ったのが発表前の自分の研究題材についての質問である。これは返答によって相手に合わせた説明に変えられるとともに、コミュニケーションを行うことで聞いている方の興味を引くことができるという点で効果的であったと思う。これらの工夫は一定の知識を持つ研究室内や学科での発表ではなおざりになってしまうため、僕にとってこの経験は大きかった。このような機会を設けていただいたことに感謝するとともに、これからの発表に活かしていきたい。

祖父江 陽介(理学部 地球惑星科学科 進化古生物学研究室)

 

 

言葉の選択と伝え方・ビジュアライズされた情報。この2つの重要性を痛感した。自分の研究を学部内発表や学会など同じ専門の先生方に対して発表する場合とは異なり、今回の卒論ポスター発表会では他分野を専門とする先生方や一般の方に対していかに自分の研究を伝えるかという難しさがあった。建築に関して論じる際には一般的に使用される「開口部」や「動線」などの用語も定義からかみ砕いて説明する必要がある。この葛藤のおかげで1つ1つの言葉の選び方や伝え方といった、ごく基本的なことでありながらも非常に難解である問題に対していかに対処するかを改めて考える良い機会となった。また、発表時に聞き手が最も関心を持ったのは写真やイラストなどの視覚的に表現された情報であった。同じ内容の説明でも、写真の有無によって聞き手の理解の解像度は大きく異なり、全体としての理解度にも違いがあったように思う。普段とは伝える対象が異なることで得られる経験もより多様であったと感じ、この知見を今後の活動に生かしていく所存である。

三上 凌平(工学部 環境社会工学科 建築都市コース)

 

 

発表会当日および発表準備にかけた期間は、刺激に満ちたものだった。一つは、専攻を異にする志の高い学生たちとの交流による。発表に向けた事前準備では、他の発表者や運営スタッフから忌憚のないさまざまな意見を受け取り、自身の発表のための参考とさせていただいた。こうした刺激が無ければ、ポスター作成および発表準備は停滞し、満足のいく出来とならなかったであろう。大学生ではない来館者との対話もまた刺激的であった。年齢や職業を問わず多くの人々に発表を聞いていただく場は滅多にない。さらに、来館者との対話をとおして、自身が専門とするテーマに熱中するあまり、それを社会に還元する視点をもたないことに気づかされた。大学の研究室で種々の文献を渉猟するだけでは得られない、刺激的な「非日常」が、ポスター発表会にはあった。それもよく親しんだ大学構内に、である。このイベントの存在が、学生や市民に広く認知され、さらに盛況することを願ってやまない。

幸 一尋(文学部 人文科学科)

 

 

<運営学生の事後考察>

卒論ポスター発表会に運営スタッフとして参加し、多くの人々の協力によってこのイベントが実現していることを改めて実感した。中間発表会では聞き手として参加し、4年生の発表が来場者に分かりやすいものになるよう積極的にフィードバックした。全3回の中間発表会があったが、回を重ねるごとにより良い発表になり4年生の工夫や熱意を感じた。当日の来館者アンケートでも、発表が分かりやすかったとのコメントが多く、素晴らしい発表会であったと思う。また今年は4学部の学生が発表し、来館者の方に幅広い研究を伝えることができたと思う。運営業務は昨年度の運営経験者が作業内容の全貌や問題になりそうな点を共有してくれたため、非常にスムーズに遂行できた。リーフレット作成など個人に負担が集中してしまった点は改善の余地があるように思う。次年度以降は内外の広報に力を入れ、より多くの学部から発表者を募ることで、総合大学としての特色を出せればと思う。

来田 祐太朗(農学院 博士課程1年) 

 

 

私は主に広報ポスターの配布を担当し、運営スタッフの人数が少ないことを考慮しながら効果的な掲示場所を考えた。ただ、アンケートの結果では予想よりも街中のポスターを見て来場した方は少なかった。反省としては、掲示場所とあわせて掲示期間についても考え、もう少し前々から準備を進めておけばよかったと思う。来年度以降の運営スタッフにはさらなる改善を目指してもらいたい。私はミュージアムマイスター認定コースを通して昨年度の企画展展示解説と卒論ポスター発表会運営を経験しており、北大総合博物館でのイベントに関わるのは今回で3回目であった。他の運営スタッフが全員3学年以上上級生であることを知ったときは馴染めるか不安もあったが、他のスタッフと円滑にコミュニケーションがとれず負担が偏ってしまった前年度の反省を活かして積極的に発言したところ、どのスタッフも運営経験者としての自分の意見を尊重しながら柔軟に運営を進めてくださり、無事に発表会を終えることができた。また、来場者の方への声かけも前回より自然にできるようになり、過去の経験が活きているようで嬉しかった。今後も博物館での学びに積極的に関わり、さらに知見を深めていきたいと思う。

佐藤 英(理学部 地球惑星科学科 2年)

 

 

発表者11名に対して、運営スタッフが5名であることに最初は不安であった。しかし、少人数だからこそ各人が自らの仕事に責任を持ち、タスクを完遂させたことで当日準備までスムーズに進められた。文理問わず学部生・院生がバランスよく参加したことで、特定の思考に囚われることなく、柔軟な運営ができた。終了後に発表者から「発表は楽しかった」と聞いた。1回目の中間発表から当日までに何度もブラッシュアップを重ね、来館者の皆様に笑顔で発表する姿を見た上で、この言葉を聞くと、最初の不安が無かったかの如く消え去ったと同時に、私自身の研究活動に対しても、初心忘るべからずを心がける良い機会であった。また、アンケートでは多くの市民の皆様から「分かりやすい発表で興味を持てた」との回答をいただいた一方で、2日目では11名を審査する都合上「聞きたい発表が聞けなくて残念」との声もあった。これは来年度以降の運営で考慮する必要がある。

長峰 実央(理学院 修士課程2年)

 

 

どのような「伝え方」が適切か、発表者も運営スタッフも深く悩み、学ぶことができた卒論ポスター発表会であったと考えている。発表者にとっては、「どのように自身の研究を伝えるか」が大きな問いであったと思う。研究室内などの狭いコミュニティーでのコミュニケーションとは異なり、背景が様々な聞き手に対してどのように伝えるか、度重なる事前練習や発表会当日の発表を通じて、この問いに対する回答を探す手伝いが運営スタッフとしてできたなら幸いである。運営スタッフとして、私は主にリーフレット作製に携わった。普段、学会発表や論文紹介などで「研究内容」を紹介する機会は多いものの、「卒論ポスター発表会とは何か」や「発表者の魅力」をリーフレットという媒体で紹介するという初めてのことに、試行錯誤しながらも楽しく取り組んだ。真っ白なリーフレットの紙面に諸情報を配置することは、小箱に宝物を詰めるようなワクワクする作業であり、総合博物館および発表者の魅力を輝かせることができたなら本望である。

藤木 卓巳 (農学院 博士課程1年)

 

 

私は、全体の運営方法の検討のほか、学内・学外用の広報用ポスターの作成を主に担当した。発表会自体のこれまでの積み重ねの中で必要な情報が精査されていたため、記載する内容や構成自体にはさほど悩まなかったが、限られた紙面の中で重要な要素を適切に提示する方法について検討していく過程で、多くの気付きを得た。特に、公に提示され様々な人の目に触れる印刷物の制作という行為を通して、著作権や可読性などの問題について自分自身でも調査を行ったことで、視野を広げることができた。また、全体の運営においては、運営スタッフの人数が少ないことが課題と考えられていたが、実際に活動を進めていくと、他の運営スタッフの方々の判断が常に簡明かつ迅速であったことにより、むしろ大人数で煩雑な作業を細かく分業するよりも分かりやすく進めることができたと感じる。同時に、誤解や認識の違いが生じていることに後から気付くという場面もあり、このことは、確認の重要性を意識することに繋がった。自分の当日の活動の中では準備不足や主体性の欠如を感じる場面もあり、反省点は少なくないが、全体を振り返ると、博物館活動におけるチームの性質や、内外に向ける眼差しといった部分で新たに学んだ事柄も多く、非常に実りある活動となったと考える。

三田尾 有希子(文学院 修士1年)