2022年度卒論ポスター発表会 発表者・運営スタッフの事後考察

2023年3月4日(土)・5日(日)に開催された2022年度卒論ポスター発表会で、ポスター発表をした学生と運営に携わった学生の事後考察を一部ご紹介します。

発表会当日の様子はこちらをご覧ください。

 

発表者

研究を進めていく上で、いずれは専門外の方々に対しても自身の研究内容を説明する機会が訪れると思い、その練習をするために今回の発表会に参加した。中間発表会では、ポスターを分かりやすく仕上げるために重要なことを多く学んだ。今まで当前のように使っていた専門用語を市民の方向けに言い換えたり、文字の色や大きさ等デザインに気を配ったりするなど、学部向けの発表では意識していなかった点にも取り組み、ポスターを洗練させることができた。発表会当日では、想像以上に多くの方に発表を聞いていただくことができた。その中で、発表時の立ち位置・声の大きさに注意することや、市民の方との対話を試みることに難しさを感じた。一方で寄せられた質問に正確に回答し、できるだけわかりやすい説明を心がけることで、多くの方に研究内容を理解していただいた。また、恐竜が好きな方や研究者に憧れを持っている方に対して、自身の体験をもとに研究の面白さやエピソード等を語り、楽しく会話することができた。最終的に幅広い層の方から「面白い」と言っていただけたことは、自身にとって大きな励みとなり、非常に有意義な経験であった。

伊藤 政矩(理学部 地球惑星科学科 進化古生物学研究グループ)

 

今回この卒論ポスター発表会へ参加するに先立ち、来場者に自分の研究に興味を持ってもらえるだろうか、そもそもたくさんの人の前で話せるだろうか、対応できるだろうか、というような不安があった。それらの不安は、中間発表を重ねアドバイスを受け、前回より改善された点を褒められることで薄れていき、さらに発表会当日に相槌を打ちながら聞いてくださる来場者の表情を見た際に払拭された。同時に、来場者に自分の知識や研究の内容を最大限伝えたい、という思いが強くなった。どうしたらその思いが発表に乗って目の前の人に伝わるかを意識するにつれ、声は大きくなり、来場者の顔を見る回数や身振り手振りは増えていった。課題はまだ多く残されているが、自分の成長を短時間で感じたのは初めてだった。卒論ポスター発表会は、学生である発表者や運営スタッフにとって刺激や学びになるだけでなく、来場された様々な世代の方々にとっても新しい知識や興味のきっかけを与えられる機会となり、大学および博物館の教育機関としての機能を十二分に果たしていると感じた。また、そのような意義深い行事に携わることができたというこの経験は、自分にとって大きな糧となった。

大野 真緒(理学部 地球惑星科学科 進化古生物学研究グループ)

 

本発表会を終えて、専門外の方へ単純で理解しやすい説明の必要性を重々感じた。特に工学というのは世の中の事象を理解するとともに、我々人間にとっていかに利便的で感性に寄り添えるかが大切だと考えている。自分の研究は過去にたくさんの方々が住まわれた住宅がつくる街並みを対象としており、ご覧いただいた審査員の方や市民の方々から実際に住まれていた過去の話を聞くことができた。親近性のあるテーマを扱うことで発表の場であると同時にヒアリング調査の場でもあったところが、今回面白いなと感じた次第である。また住んでいたからこそできる質問はとても鋭く新たな視点をくれるもので、専門分野に固執していたままでは気がつかないものが多々あった。そういう意味で、人々の感じたことに耳を傾ける必要性もまた改めて感じており、今後の研究における姿勢が身についたと思う所存である。ここにこの機会をいただいたことに感謝したい。

髙橋 陸(工学部 環境社会工学科 建築都市コース)

 

卒論ポスター発表を終えて、実感したことが2つある。1つ目は、卒業論文の内容を専門ではない人々に分かりやすく伝える難しさである。普段のゼミや卒論発表では、研究に関するある程度の前提知識をもった人々に対して発表を行っていたために、より内容に踏み込んだ議論になることが多かったが、今回の発表ではそういった内容の質疑は少なく、研究に至ったきっかけや背景など良い意味で素朴な疑問が多かった。そして、そのような核心的な疑問に対して端的に応答することは非常に難しいと感じた。最初は自身の知的好奇心から楽しみながら研究を行っていたが、いつの間にか卒業するための研究になっており、そういった事象を忘れていたのかもしれない。2つ目は、コミュニケーションの楽しさである。コロナによってここ最近まで対面機会が少なく、パソコンの画面を通してコミュニケーションを行っていたが、やはり相手の目を見ながら身振り手振りで発表を行い、理解してもらえた時の嬉しさは対面でしか得られないと感じた。卒論ポスター発表会では、これら2つのことが強く実感でき、非常に良い経験となった。このような会が今後も引き続き継続されることを願う。

増田 啓佑(工学部 環境社会工学科 建築都市コース)

 

発表会に際して、専門外の人に自分の研究を伝えることの難しさはもちろん、専門外の人に“しか”分からない自分の研究の難解な所を発見できたことが、二日間を通しての大きな収穫であった。中間発表やリハーサルでポスターの内容やその発表の仕方を改良していくことで研究者でない方に向けて表現や説明を修正したつもりであったが、実際に発表を行ってみると、聞いている方の得心のいかない様子が見受けられ、より論理関係の明確化と用語の説明を行う必要があると痛感した。また、自身の発表が、専攻である古生物学だけでなく、医学の内容も絡めたものになっていたために理解のための具体例や例えを入れたつもりであったが、来館者の方により身近な例にする必要があったと感じた。多分野にわたる発表においてはそれぞれの分野に通底する部分をより明確にし、強調することも必要であると、一連の発表を通して感じ、今後に生かそうと思った。この発表会を通して、今後は研究発表を端的にかつ知的好奇心を掻き立てるような形で伝えることができるようになろうと強く思った。

矢倉 鉄平(理学部 地球惑星科学科 進化古生物学研究グループ)

 

 

運営スタッフ

前年度に引き続き、運営スタッフとして、卒論ポスター発表会に参加した。前年度での経験を活かして、当日のイレギュラーへの対応、来場者への声掛けなどうまくできていたと思う。前年度は発表者、スタッフともに人数が多かったため、2会場にわけるなどの対応が可能であったが、今年度に関しては、発表者5人・運営スタッフ7人であったので、人手に余裕があったわけではないといえる。加えて、コロナ禍が終息に近づいているためか、前年度よりも来場者が増えていたようにも感じた。これに関連して、パネルの配置を会場に入った際の目につきやすさなども考慮して設定していたが、当日2日目において質問の声の反響等により、発表の声が聞こえづらいという指摘を審査員からいただき、急遽変更した。発表者、スタッフの人数にもよるが、一般公開と審査の時間あるいは会場を分けるという選択肢を考慮すべきと考える。その他当日までの準備に関しては、今年度のスタッフは全員積極的に意見を出し動いてくれたので、大変やりやすく助かった。引継ぎ資料には記されているが、ポスター・リーフレットの作成に際して、数人に負担が偏りがちなので、綿密に連絡を取る、集まって作業する回数を増やすなどしても良かったと思う。

荒川 大地(理学部2年)

 

学部2年時に参加した夏の企画展での解説員経験から本発表会に運営として携わることへ抵抗も特になく、同じように取り組めば大丈夫という余裕があった。しかし実際、運営スタッフだけで広報から当日の流れまでを決めることは解説員の時とは違う自主性が求められた。運営を考えていくうえで発生した足りないところや必要なところをいかに見つけ、解決していくのかを、前日までスタッフ全員で話し合ったのはとても良い経験となった。また、驚かされたのは後輩たちの推進力・注意深さだ。何度も推敲を重ねたリーフレットやポスター、アンケート集計シート作成など、私が1年生の時には考えられないほど周りが見えていて仕事もテキパキこなす後輩たちに大変感心した。発表者である先輩を見て”卒論”への具体的なイメージを膨らませることができ、聡明な同学年や後輩たちには良い刺激をもらうことができた。来年度卒論を市民向けに発表するという選択肢が自分の中で生まれたことも非常に意義のある参加となった。

柿澤 彩花(工学部 応用理工系学科3年)

 

私はこの発表会を通じて、博物館でのイベントを開催するためにとても多くの人が関わっていることを実感した。当日までの準備の一つに近隣の施設にポスターの掲示をお願いすることがあったが、快く引き受けて下さる方が多く、発表会が地域の方の協力のもとに成り立っていることを強く感じた。発表会当日は、始まって初めて気づく運営上の問題点に頭を悩まされた。例えば、発表者の方の負担をできるだけ減らすこと、全ての来館者の方に時間の制限なく楽しんでもらうことの二つを両立するのはとても難しかった。先生方や他の運営スタッフの提案により発表会の途中に新たな工夫を取り入れていくことで、より良い運営ができていたのではないかと思う。私が今後の自分自身の課題として捉えていることの一つは、グループワークでの仕事の偏りを無くすことである。今回の発表会では運営スタッフ間で仕事量の差があったと感じている。これからはグループ内の誰かに負担が偏らないよう上手く工夫していきたい。

木元 友理香(工学部 環境社会工学科3年)

 

今回、私は主にリーフレットと投票用紙の作成を担当した。リーフレットは、内容は昨年度のものを参考にし、レイアウトやデザインは新しいものを考えた。恐竜についての発表が多い今年度の卒論ポスター発表会では小学生やそれ以下の年齢の来場者も多いのではないかと考え、固すぎないポップさを目指しつつ、卒論発表のもつアカデミックなイメージからは離れすぎないようなデザインにこだわって作成した。結果として、字や色合いの見やすさ等もう少し配慮すべきだったと感じる点はあったものの、先生や審査員の方に好評していただけたものができ、嬉しく思う。投票用紙については、今年度はリーフレットとデザインを揃え、さらにアンケートを追加した。スタッフとして活動を始めるにあたって、例年どのような方が来場しているのかがわからず手探りな面もあったため、このアンケートを利用して来年度の卒論ポスター発表会がさらに良いものになればと思う。運営スタッフとして卒論ポスター発表会に参加することで、発表者のもつ熱意やそれを来場者に伝える大変さを知ることができた。何度もリーフレットの校正をしてくださった先生方や一緒に発表会をつくりあげた運営スタッフを含め、発表会に関わったすべての方々に感謝申し上げたい。

佐藤 英(総合教育部1年)

 

発表会当日の約3ヶ月前に、運営スタッフ、発表者の方々、先生方との初回ミーティングがあった。このような運営に携わったことは今までなかったため、準備期間は充分にあると最初は考えていた。しかし実際に作業を行うと、想像以上にタイトなスケジュールで、大学生活と並行しながらの準備は大変だった。最初にやることをしっかり確認し、役割分担、スケジュールをきちんと決めるべきだったと考える。事前準備では主にポスター制作を担当した。当初は大人向けと子供向けの 2 種類を作成していたが、差別化が難しく、結果的に学内向けと学内向けの 2 種類に変更して作成した。学外向けのポスターでは、市民の方々向けに研究内容を簡潔に説明した。それに対し、学内向けのポスターでは、いずれ卒論を書く在学生向けに文言を変更することで、差別化ができたと考えている。当日、運営スタッフとして活動する中で印象に残っていることは、老若男女問わず多くの方々が来場してくださり、常に会場が活発だったことだ。発表者の方々も生き生きと発表しており、中間発表会からより良い発表になっていることにも感動した。総合博物館という場所で、知識や経験が受け渡される瞬間に携わることができて嬉しく思う。

徳井 翠(総合教育部1年)

 

札幌生まれ札幌育ちの自分は、幼いころから在学中の現在に至るまで、北海道大学総合博物館を何度も訪れ、そして親しんできた。しかしこのイベントは、総合博物館をますます魅力的に映す。卒論ポスター発表会は、まさに大学と地域社会との橋渡しの場であった。日頃、学生が学生として市民と関わる機会は多くないように思われ、大学と地域社会とはどこか隔絶しているような感がある。しかし、卒論ポスター発表会においてはこの限りでない。発表者は、学部4年間の集大成ともいえる自身の卒業研究を伝えるとあって、その口ぶりに熱が込められる。それに呼応するように、来場者は次々と疑問を投げかける。さらに発表者は思考を深化させ、発表を洗練していく。また来場者は研究に触れ、知的好奇心が刺激される。こういった相互の関わり合いは、今回の発表会のような場でしか生じえないものではないだろうか。卒論ポスター発表会に運営スタッフとして携わり、大学と地域社会とが知的交流を果たすその瞬間を目の当たりにした。自分がその交流のために少しでも貢献できていたのなら、これほど嬉しいことはない。

幸 一尋(文学部3年)