2016年度卒論ポスター発表会 発表者・運営スタッフの事後考察

3月4日(土)~5日(日)に開催された2016年度卒論ポスター発表会で、ポスター発表をした学生と運営に携わった学生の事後考察をご紹介します。

発表会当日の様子はこちらをご覧ください。

 

発表者

今まで存在すら知らなかったポスター発表会だったが、参加してよかったと思う。必死にまとめた卒業論文をたった1枚のポスターにまとめるというのは想像以上に難しかった。中間発表を重ね、多くのアドバイスをいただき、他学部の学生の発表を聞く中で、ポスターの構成を工夫し、徐々に伝え方や語り方のコツを掴んでいけたと思う。普段とは異なる分野の学生、先生とともにこうしたステップアップを体感できるのは大変良い刺激になった。発表会当日では、市民の方々と対話する中で、自分の考えを伝えることの楽しさを心から感じた。私の研究は建築や都市という一般の方々にも身近なテーマであったので、様々な立場から意見をいただく事ができ、大変参考になった。今後も今回の経験を生かして発表の場に積極的に参加していきたいと思う。

(工学部 建築史意匠学研究室 會澤 拓磨)

 

私はこの春、北大を卒業すると同時に、約1年間取り組んできた研究に終止符を打つ。折角取り組んできた研究を、様々な人に聞いていただきたいと思い、今回の卒論ポスター発表会にエントリーした。

準備がいざ始まってみると、楽しいと思う反面、辛いと思うことも多かった。まず、ポスターを作ること自体が初めての経験だったので、レイアウトや配色などデザインに悩まされた。また、卒論発表の時期と準備期間が重なっていたため、実験との時間配分にも悩んだ。中でも一番悩まされたのは「伝える」ことであった。分野外の人にも理解してもらうには、どこまでの予備情報が必要なのか、最初は全く見当がつかなかった。しかし、中間発表会で他分野の発表者や先生方からいただいた意見をもとに推敲を重ねるにつれ、自分でもそれが分かってくるようになった。

発表当日は、本当に楽しかった。専門が近い方に研究に直結するようなアドバイスをいただいたと思えば、逆に小さなお子さんに、分かりやすかった!と笑顔で言ってもらえることもあり、たくさんの言葉をたくさんの方々と交わす、非常に有意義な2日間であった。このような機会を設けてくださった博物館の先生方および来場者・審査員の皆さんには感謝してもしきれない。

最後に、共にこの発表会を経験した13人の同期達に感謝したい。各人から非常に多くの刺激を受け、楽しい時間を過ごさせてもらった。どうもありがとう。

(農学部 応用生命科学科 熊野 舞香)

 

今回の市民向けポスター発表では、専門外の人々に自らの卒論を発表し、それに対するアドバイスをもらうという、貴重な経験を得ることができた。私は火山岩の岩石学、地球化学的研究を行っているが、これらの議論を行う際に必要な専門用語、前提知識をわかりやすく伝えるという点に苦心した。その結果、議論に使う図表に合わせて解説用の図も多く盛り込んだので、図と文字数がやや多く、レイアウトとしても少し見づらいポスターとなってしまった。これについては、他メンバーのポスターが非常に見やすくきれいだったので、将来ポスターを作る際には参考にしたい。また、市民にとって一般的ではない話について少しでもわかりやすく理解してもらうためにたとえ話をしたが、かえってわかりにくくなるなど、コミュニケーションという面でも多くの課題が浮き彫りになった。今回のポスター発表を踏まえて反省すべきことは数多くあるが、多くの方から励ましの言葉を頂いた。このような機会を設けてくださった博物館の皆様、多くの助言をくれた同期の皆、そして自分の発表を聞いてくださった来場者の方々に深く感謝する。

(理学部 地球惑星科学科 榎枝 竜之介)

 

「シェイクスピアを読んだことがない」「熱力学第三法則を知らない」といった人というのは、その分野に詳しい人からすれば信じがたいことだというのを聞いたことがある。同じように「セントラルドグマ」と言って通用しないのは、生物学の研究をしている人にとって外国人と接している感覚に近いものがあると感じた。今回のポスター発表では、そういった研究の基礎を、知識のバックグラウンドの異なる人たちにいかに分かりやすく説明するかが一番の課題であったと思う。ポスター作りには時間があまりなかったことに加えて、この自分の手には余る大きな課題のために苦戦を強いられたが、なんとか他分野の人に少しでも分子生物学のおもしろさを伝えたいという一心で取り組んだ。その甲斐あってか感想の中には嬉しい報告もあって、今回の発表会で得られたものは大きかったと思う。また同年代で研究テーマに熱中している他分野の人と接するのは自分にとっては大変良い刺激になったので、今後これらの経験を生かせるようにしたい。

(農学部 応用生命科学科 佐々木 駿)

 

今回のポスター発表会で、他分野の人に自分の研究を伝えることの大切さを学んだ。自分の研究は都市の歴史や成り立ちがテーマだったため、市民にも親しみやすいのではと自分では思っていたが、「伝える」ということはそう単純なものではなかった。相手への伝わり方は、話し方やポスターのデザイン、見やすさなどでも大きく変わることを痛感した。発表当日は、魅力的な話し方をする発表者やわかりやすいポスターを作った発表者がすぐそばにいたこと、また学内の卒論発表では指摘されないようなことを来場者の方に指摘いていただいたことなど、とても刺激的な時間であった。

ポスター作りも限られた時間の中で、中間発表を通してレイアウトや話し方など細かい部分まで指導していただき、とても勉強になった。この会を通して学んだ全てのことは、論文発表などに限らず様々な場面で生きてくると心から感じた。またこのような会があれば参加したい。
(工学部 環境社会工学科 林 泰佑)

 

僕らの研究分野である化石や古生物にとって重要なことは、たくさんの人がしり、生命史に興味を持ち、そして僕たちの地球の中での立ち位置を考えるきっかけになることだと思う。今回の卒論ポスター発表会では、このことを大事にしたいと強く思ったため、色々な人に意見をもらい、ポスターを作成した。色の配色、フォントのサイズ、そしてレイアウト。人の目線の動きや見易さを考えることで、手間や時間がかけた。一方で、いざ来館者に発表してみると、見てもらうことだけを意識した時には気づかなかったことがわかる。初めての公でのプレゼンテーションの難しさに気づき、そして伝えたいことを相手に楽しく伝える技術を学ぶ必要性を強く意識することになった。未だに学会の発表の経験がない自分にとって、専門知識を共有していない人たちに対して、いかに共有しようと取り組むかを考えることは非常に有意義であったと思う。今回の経験を糧に、面白いこの研究分野を伝えていく立場へと躍進したい。

(理学部 地球惑星科学科 久保 孝太)

 

私は「殻の性質が異なるダッタンソバ」の形態学的研究について発表した。ポスター作成当初は自分の価値観に縛られ、聞き手のことをあまり考えられていなかった。しかし、数回の中間報告会でいただいたアドバイスを取り入れていくにつれて、ポスターや発表の内容が良くなっていくことが自分でも分かった。さらに発表会では、中間報告会やリハーサルでいただいた指摘を受けて、時間内に説明方法を修正し、発表会の最後では納得のいくパフォーマンスができた。ポスター発表会全体を通して、自分の価値観にとらわれず、聞き手がわかりやすいように発表をしていくことが大事なのだと身を持って体験した。また、発表を聞いてくださった方と自分の研究の面白さを共有できたとき、研究生活はつらいこともあったけれども、本当に続けていてよかったと思えた。これからも頑張っていきたい。

(農学部 生物資源科学科 下山 花)

 

今回、卒論ポスター発表会に参加したことは、大変貴重な経験となった。建築都市コースでは、学部4年生の一年間に、卒業論文と卒業設計という2つに取り組む。そのため、卒業論文にかけられる時間がほぼ半年という、とても短い期間になってしまう。その中で研究をまとめるとなると、研究の背景となる部分や分析及び考察に、あまり時間がかけられなかったというのが正直な感想であった。そのため、実際に発表をするなかで、市民の方々が疑問として投げかけてくださる純粋な意見に答えられないと同時に、自分の中でも疑問となった。そしてこれらの意見は、引き続き修士課程でもこの研究を続けていこうと考えている私には、大変意義のあるものとなった。また、様々な分野の専門家である審査員の方々から、プレゼンの方法や今後の研究の課題などをご指導いただくことができ、貴重な経験となった。ありがとうございました。

(工学部 環境社会工学科 山縣 彩)

 

私は遺伝子の発現制御機構を分子レベルで見るという極めてミクロな世界の研究をしており、理解するための前提となる知識も多い分野なので、背景知識を持たない方々にどのように説明するかということに最も注力した。理解の助けになるようにと説明を加え過ぎてしまうと、情報量が増えすぎて逆に聞き手が話についていけなくなる。そこで、説明にあたって「何を言うべきか」ということ以上に「何を言わないべきか」ということを意識した。幸い、何人もの方々に面白いと感じていただくことができた。一方で、近い分野を専門とする方々に対しては科学的な正当性や実験結果の意味合いをより詳しく説明するように心がけた。しかしその際に頭の切り替えがうまくいかず、あまり科学的ではない言い回しをしてしまったこともあった。記載するデータの量があまり多くなかったこともあり、物足りない発表に聞こえてしまったかもしれない。

科学コミュニケーションにおいて最も重要なことは、噛み砕いた表現を用いながらも科学的に正確な説明をすることだと私は考えている。この卒論ポスター発表はその貴重な訓練の場となった。また、自分の研究を専門外の方々に理解してもらうことの喜びも感じることができた。今後も「わかりやすく、正しく伝える」という技術を磨いていきたい。

(農学部 応用生命科学科 山内 洋輔)

 

他分野の研究者の方や市民の方々の前で自分の研究について話すことは初めてで、反省点が多々あったが、さまざまなことを得られたポスター発表だった。ポスターの作成では、情報量の調節に苦戦しながらも、博物館の先生方やスタッフの方々にアドバイスをいただき修正を重ねるなかで、自分の研究の核となる部分を再認識できた。また、当日は来館者の方々から多くのご意見をいただいた。なかでも特に、「文系の研究は何を目指して行っているのか」という根本的なご指摘があったことは私にとって非常に大きかった。私の研究では芸術作品に対する解釈や考察を行っているが、理系の研究と比べて、はじめから明確なゴールが見えていない取り組みに意味づけを試みることの難しさと重要性を感じた。作品の「正しい意味」を限定して相手に押し付けるのではなくて、作品を論じることを通して、あるものの見方や問題意識を、分野を超えた他者と共有することを目指していきたい、とあらためて考える機会となった。稚拙な発表にアドバイスをくださった方々に感謝申し上げたい。

(文学部 人文科学科 佐々木 蓉子)

 

今回のポスター発表会では、研究内容を人に伝えることの面白さとともに、全ての人に分かりやすく自分の研究について伝えるということの難しさが分かった。研究内容に興味をもってもらうという最初の点で、技量不足を痛感するとともに悔しさも感じた。実際にポスターのレイアウトが見づらく、話の導入に興味をそそられないなど、反省すべき点も非常に多かった。今後、研究発表する機会に恵まれたときには、是非とも聞きたいと思わせられるように工夫していきたい。このように反省すべき点も多いが、今回の発表会は非常に良い経験となった。普段話したこともないような他分野の人々とも交流することができ、とても良い刺激になった。多くの人々がレベルの高い研究を行っているということも分かったので、私もこれから精進していきたいと思った。研究の世界にたずさわっている以上、適切に伝えるという使命を全うできるような実力を身につけていきたい。

(理学部 地球惑星学科 松尾 良子)

 

卒論ポスター発表会を通して、ポスターの作り方や、専門知識がない者へ自分の卒論内容を説明する難しさを学ぶことができた。度重なる中間発表会では、先生方や他の参加者の意見を通じて、専門知識がないと自分の研究内容の捉え方や理解度がかなり異なるということを痛感し、苦労した。しかし、皆の意見を参考にし、試行錯誤した結果。完成度の高いポスターを制作することができた。本番にあたり、初めのうちは、発表に慣れていないこともあり、ぎこちない話し方だったが、後半になるにつれて、慣れていき、スムーズに話すことができたと感じた。自分の研究内容に意見をくださる方もいらして、大変参考になった。卒論ポスター発表の最大の魅力は、自分の研究内容を、他分野の参加者や市民の方々に話すことができることだと思う。研究は、どうしても同じ分野の人と行なうことが多い。そのような方には特に、またそうでない学部4年生であっても、良い経験になると思うので参加をお勧めしたい。

(農学部 生物資源科学科 菅野 厚志)

 

卒論ポスター発表会は、以前運営側として参加したこともあり、今度は発表側として関わりたく参加した。中間発表会への参加はキャンパスの立地上難しかったが、ポスター案についてメールで指導を受けて改訂を重ねて、完成させることができた。ポスター制作ではいかに見やすく分かりやすい構成かどうかを意識し、発表中は来館者の反応から随時対応する臨機応変な解説を心がけた。今まで培ってきた全てが試される場であり、2日間の発表は予想よりハードだったが、自身の研究が市民の方々へ伝わる瞬間は嬉しく、発表の醍醐味を得ることができた。また,卒論ポスター発表会は他分野の研究について知見を広められる絶好の機会でもある。水産学部は函館にあるため他学部と関わることも少なく、学ぶ内容も偏りがちだが、今回参加したことで他の学部の学生の研究を知ることができ、良い刺激を受けることができた。当初は距離的な問題から一時参加の辞退も考えたが、参加して良かったと思う。今後はさらに発展させ、より広く研究発表の場で活かしていきたい。

(水産学部 海洋資源科学科 江口 剛)

 

昨年このポスター発表会を見学した際、投票が締め切られたあとでも、発表者のみなさんが熱心に説明してくださったことに、私は非常に感銘を受けた。今年の講評会で審査員のお一人からいただいたメッセージ「恩送り」。私も「恩送り」として、足を運んでくれた誰か1人にでも興味を持ってもらいたいと思い、今回の参加を決意した。残念ながら去年の私のような学生は現れなかったし、説明を聞いている間じゅう首をかしげている来場者もいらしたし、異分野の先生方には論理の矛盾点を指摘され続ける2日間であった。それでも面白いと言ってくれる方も同じくらい多かったのでまだ再起は可能である。様々な視点からの感想や意見を頂けたことも大変勉強になった。恩を送るといいながら、運営スタッフ学生の春名君をはじめ、ポスター制作に関して辛抱強くご指導くださった先生方、発表当日に今後の研究の心がけについてご教授くださった先生方など、恩をいただいてしまうことのほうが多かったが、そこは今後の私の活躍にご期待いただきたい。

(農学部 応用生命科学科 永森 彩奈)

 

運営スタッフ

卒論ポスター発表会では、当日来場者に配布するリーフレットの作成を主に担当した。作成過程では先生方との議論の中で幾度となく修正を繰り返し、読んだ方が大学で行われている研究への興味を引き出すようなものをつくることができたと思っている。普段、理系学部の研究内容を知る機会はほとんどないが、発表者から、筆者を含めた分野外の人でも理解できるように研究を紹介していただき、自分の見える世界が広がったように感じている。理系学部でも都市の形成史のような文系的な分野を扱うことを知り、まさに視野が広がった。発表者はポスター発表の準備に粉骨砕身されている中、当日だけでなく運営準備の段階から気遣って下さり、感涙するほどに人の心の温かさを感じた発表会でもあった。

今回の会場は博物館リニューアルに伴い設置された「知の交差点」スペースであった。発表会での他分野の方との交流は、まさに知の交差であった。貴重な場を設けてくださった先生方、博物館職員の方、発表者の方、そして来場された方に感謝申し上げたい。

(文学部3年 春名 恭太朗)