授業報告 博物館コミュニケーション特論 特別編 5月20日

5月20日 総合博物館ボランティア活動取材

<背景>
博物館部(仮称)準備委員は518の博物館の教員連絡会議において、博物館部(仮称)の設立を提案した。博物館部の具体的な活動内容はどういったものか、博物館の内部の組織であることを望むのは何故かなど、様々な質問が投げかけられたが、特にボランティアとの違いについて説明を求められた。博物館に所属していない人が博物館活動に関わるための新たな組織を作るに当たり、既に存在するボランティアと比較して質問されるのは予測しており、準備委員で議論していたつもりであった。しかし、会議の場ではボランティアと我々の組織の違いを十分に説明できなかった。これは準備委員がボランティアの方々の活動の実態を十分に知らないためではないか。このような意見がその後のミーティングで準備委員から出たため、北大総合博物館で行われているボランティア活動の現場を見学して取材させていただくことにした。湯浅先生にお願いし、早速、520日午後3時から、化石ボランティア、昆虫ボランティア、図書ボランティア、そして地学ボランティアの活動を案内していただいた。
<ボランティアの方々へのインタビュー>
ボランティアの方々には、1ボランティア活動を行う動機、2)活動期間、3活動に用いる技術の習得方法、4)活動のやりがいについて質問した。下記に、それぞれの回答と、5)ボランティアの方とお話して特に興味深かった点をまとめる。 

・化石ボランティア

化石ボランティアの部屋では、化石のレプリカを作製している男女2名にお話を伺った。男性は、1化石が多数見られると思い、活動に参加し、2)ボランティア歴は1ヶ月半ほどで、3)作製したレプリカをメンバーに見せて意見をもらうことで、技術を習得しているとのことだった。女性は、2)ボランティア歴は半年ほどで、3)他の方の作業を見よう見真似で技術を習得していったとのことであった。また、4)上から何か命令されて活動する場でなく、自分のペースで活動できるのかボランティア活動の良い点だとおっしゃっていた

 

・昆虫ボランティア

昆虫ボランティアの部屋では、1 展翅等をしないまま保存していた昆虫標本の整理を行うために、ボランティアとして博物館活動に関わっている北大の元教授にお話を伺った。2)2001年に最初にボランティア募集がなされた時から継続して活動しているとのことだった。3専門家ではないボランティアの技術の習得方法は既に活動しているボランティアから教わるか、博物館で行われているパラタクソノミスト養成講座に参加するとのことであった。また、4)標本整理という目に見える 作業が達成感を生み出したり、整理、作製した標本が企画展に展示されることも、活動を続けていく上でよい張り合いになるとのことである。また、5)ボランティアの個々の活動内容については、本人の意思を尊重し、無理強いはしないとおっしゃっていた。

 

・図書ボランティア

図書ボランティアの部屋では、別の博物館で館長を務めていらした方がボランティア活動とその実績についてご説明下さった。博物館の未整理の資料から同じ著者名の論文を集め、論文集を作成するという作業を行っているとのことである。3)論文集の作成に難しいスキルは必要なく、 最初は11冊担当、慣れた方は10冊担当など、負担量の違いが習熟量に比例するとのことであった。また、4)皆で一丸となって作業を行う達成感や活動終了後のお茶会が、やりがいや楽しみのひとつであるとおっしゃっていた。 

 

・地学ボランティア

地学ボランティアは既にその日の活動を終えられていたため、お話のみ伺った。普段は岩石標本を整理しているとのことである。2名の市民のボランティアにお話を伺った。1人目のボランティアは、1)かつて仕事で土質調査に関わっており、職業的にも経験者であるため活動に参加したとのことであった。2)ボランティア歴は7年で、3)岩石標本のラベルの読み取り方などは自分で勉強したとのことである。また4)自分が整理している標本が、過去の地質研究に用いられていたことがわかることが、大きなやりがいであるとのことであった。5)4分野のボランティア活動にも参加しているとのことである。

もうお一方1)未経験ではあるが、何らかのボランティア活動をしたいと、参加したとのことであった。2ボランティア歴は2年ほどで、3)見よう見真似で技術を習得したとのことである。4)未経験の新たなことを知ることが多い点がやりがいであるとおっしゃっていた。ただ、5)学生ボランティアが少ないのが寂しく、学生は授業などで忙しくなるとボランティア活動から遠ざかってしまう点のが残念であるとおっしゃっていた。

 

<まとめ>
今回お話を伺ったボランティアの方々は様々な動機で博物館ボランティア活動に取り組まれていたが、どの方もやりがいを持って積極的に活動なさっていた。年配の方が多く、長期にわたって活動を続けている方はその分野で特に高い専門性を持っていらした。この高度な専門性は、ボランティアの方個人の研鑽によるものが大きいようである。今回の見学を通じ、ボランティア活動の実態の一部ではあるが、実感として知ることができた。これを踏まえ、ボランティア活動の見習うべき点と、ボランティア活動にはない特性という、両方を備えた博物館部(仮称)を作っていきたいと考える。(理学院自然史科学専攻修士1年 福田洋之)


化石ボランティア(1)


化石ボランティア(2)

 

昆虫ボランティア 


図書ボランティア


地学ボランティア