授業報告 博物館学特別講義 II 第5回 5月17日

5回 517

 

 

 

 

授業の前半では、日本の博物館の状況と、米英両国の博物館の位置づけを比較し、日本の博物館改革の必要性を考察した。日本と米英両国との一番の違いは、社会的使命を明確に館自体が打ち出しているかどうかである。米国も英国も、博物館の社会的使命を広義の「教育」をとしている。米国では、使命を果たし、館自体の公共性アップや資金の確保のために、館長には必ずMBA(経営学修士)を取得している者を置いている。一方、英国では、「博物館は市民の共有財産」という一般認識が、社会的使命の下で構築されている。今日の日本では、「博物館は市民の共有財産」という意識が低い。そのため博物館の社会的使命の再確認と共に、どの様なサービスを提供できるのか、運営システムを再構築していくのかが、今後の課題であると考えられる。

後半では、石森先生のフィールドワーク調査の実体験を交えながら「民族学」について考えていった。大航海時代による世界の拡大は、近代博物館の発生と関わりが深いこと。近代博物館の他文化を展示するという行為は、決して権力と切り離せないものであったことも授業で取り扱われた。


 今日、私たちを取り巻く環境は、グローバル社会に伴う文化多様性の時代へと移行してきている。他文化ではなく、多文化をどの様に表現していくのか。今後、民族系博物館、あるいは、他の博物館にも言える事かもしれないが、もう一つ上の変貌が求められていると感じる。(文学研究科歴史地域文化学専攻修士1年 石岡麻梨子)


今回から、観光学高等研究センターの石森秀三先生担当の授業がスタート。授業タイトルは「博物館は生き残れるか〜民族系博物館は必要か?〜」という、思わずドキンとしてしまうものであった。


担当教員:石森秀三