授業報告 博物館学特別講義 II 第7回 5月31日

第7回 5月31日
担当教員:石森秀三
 観光学高等研究センターの石森秀三先生の講義最終回(3回目)。講義は「民族系博物館の可能性」というタイトルで、前半は世界各国の民族系博物館について映像を交えて説明し、後半で民族系博物館を巡る諸問題に関してお話していただいた。
 授業の前半はイギリス、オランダ、メキシコ、フィジーの民族系博物館を説明したビデオを見ながら、各博物館の来歴や特色を扱った。植民地から集めた民族資料多く展示する先進国の博物館と、独立後に国を代表する民族のアイデンティティーとなる資料を展示する途上国の博物館では、館の目的に大きな違いがあるように感じた。しかし、どちらの博物館も、現在の私たちが日々抱えている課題(環境問題や民族問題など)に挑戦する展示を取り入れようとしている点は同じであった。多くの民族(先住民族を含む)が持つ様々な視点・価値観は私たちが直面している問題を考えるうえで大いに参考になると思う。
 後半では民族博物館を巡る諸問題として、グローバル化と文化多様性、民族の知的所有権が挙げられた。世界は時代と共に複雑化し、複雑化した世界を単純にしようとする際に「世界大戦」が起きてきたと自分は理解した。幾度かの大戦の後、世界が複雑であることを肯定するかのごとく、「文化多様性条約」が結ばれたのだと思う。余談だが、「生物多様性」という言葉があり、「生物が環境変化から生き残るためには多くの生物が必要である」というコンセプトだが、人間も生物である以上「文化多様性」という言葉も同じ文脈で語られているのだろう。合理的な考え方だ、と講義を受けていて感じた。

 授業の最後に「博物館は必要か」という、第1回の問いに戻った。「博物館は経済的収益を得る場所ではなく、感動・発見・想像力を得る場所だろう」という言葉が非常に印象的であった。これまで、博物館がお金稼ぎを目的とした場所ではないことは重々承知していたが、何を目的としているのか明確な答えが見つからなかった。これから、博物館を舞台に活動する機会があれば、相手に感動・発見・想像力を与えられるような人でありたいと強く思った。(農学院環境資源学専攻修士1年 村松弘規)