授業報告 博物館学特別講義 II 第9回 6月14日

第9回 6月14日

担当教員:鈴木幸人

 文学研究科の鈴木幸人先生の講義2回目。

 授業内容は前回から使用している「国際博物館の日記念 大阪市博物館フォーラム2010新たな可能性を求めて」の資料の続きを読み、前回の「フェルメール」展以外の大阪市で開かれた展覧会について紹介や検討がなされた。

 今回の授業では2003年に大阪市立美術館で行われた「円山応挙」展、2004年に行われた「祈りの道 吉野・熊野・高野の名宝」展、2005年に大阪歴史博物館で行われた「阪神タイガース」展を事例として、大阪市で行われた展覧会事業について鈴木先生の体験を交えつつ解説がなされた。例えば「円山応挙」展では最大の目玉である大乗寺の襖絵を展示するにあたり、大乗寺で見た襖絵の美しさを展覧会会場という様々な制限のある場所でいかにして再現するかという問題に取り組んだ体験について伺うことができた。

 先週紹介された「フェルメール」展と併せてこれらの展覧会は東京からの巡回展ではない大阪発の展覧会であること、重要文化財の多い関西の強みを活用した展覧会であること、専門知識の豊富な学芸員の存在あっての展覧会であったことという特徴があり、大阪・関西圏の地域性が生かされたものである、とのことであった。

 印象的だったのは阪神タイガースを公立の歴史博物館で取扱ったということである。こうした地域に密着した文化・地域特有の文化を歴史的な視点で考察・検証し位置づけを行なうというのは非常に興味深い試みだと思われる。地域に密着した文化を取り上げることにより、それまで博物館に興味を持たなかった人が訪れるようになり、博物館という場所が人々にとってより身近な存在になるのではないだろうか。地域と博物館の関係性について考えさせられる講義であった。(文学研究科思想文化学専攻修士1年 北村優理子)