授業報告 博物館学特別講義 II 第10回 6月21日

第10回 6月21日

担当教員:鈴木幸人

 文学研究科の鈴木幸人先生の講義3回目。今回の授業は主に過去に先生が執筆された論考を参考に進められた。まず、「日本美術の評価における美術館の役割」では、先生の企画担当した展示を多数挙げられ、それらが大阪市立美術館の特性(コレクション・地域性・歴史等)を活かしたものであったことが説明された。他の博物館の授業で、展示を企画する際には、その博物館で当該展示を開催する意味は何かという問いが重要であると聞いていたため、やはりその博物館の特性を活かすことはより良い展示をする上で重要であると感じた。

 次に、『熱風』の特集記事「展覧会的知ということ−−美術館をめぐる対話のための前提・私案」から、美術館・博物館が来館者や地域といかに関わっていくかについて講義された。印象に残ったのは、展示の本来の目的は来館者の感性と知性の活性化であり、集客(地域経済への波及効果)ではないこと、また、学芸員の役割は作品が秘めているであろう様々な側面を、常に新たなコンテキストに並べ替えることで引き出し、その展示を壊してまた新たな側面を探し出す「作品の架け替え」であること、の2点である。作品の新たな側面を引き出すことは、来館者の感性と知性を新たに活性化させることに繋がり、博物館と作品の両方を最大限に生活かす学芸員の「展示」という仕事の重要性を感じた講義であった。(理学院自然史科学専攻修士1年 山下伸志)