LEPIDOPTERA展 展示解説担当学生による考察レポート

ミュージアムマイスターコースの一環として、Lepidoptera展で展示解説を担当した7名の学生の総括レポートをご紹介します。

 

 私がLepidopteraの展示解説で考察したことの一つは、展示解説に向けての準備や知識整理の重要性についてである。特に今回は自分の専門分野ではなかったため、一から知識をつけることに加えて、関連するエピソードを付け加えることによって自分なりの解説シナリオとした。その結果、チョウ・ガに関する知識だけでなく、それぞれの標本が作られた経緯など、多くの人に楽しんでもらえる話題を提供することができたと思う。もう一つは、解説をすることで解説者自身が新たに学ぶこともあり、それがよりよい展示解説につながるということである。幼い子どもからの素朴な疑問や、専門家からの高度な知識、標本作りを趣味としている方の体験談など、今後に生かせることを解説中のやり取りや質問から得ることができるのはとても良い経験であるし、展示解説ならではの効果であると思う。(文学部3年 大西凛)

 

 今回の展示解説を通し、私は博物館は交流する場所でもあると考えた。初めは一方的な解説や案内を想像していた。しかし展示室に立ち、来館者やスタッフの方との対話から最も多くのことを学んだ。来館者の方の質問により作られたQ&A表のように、展示方法や解説内容は徐々に変化し深まる。展示物に出会った来館者の方が、疑問や経験、知識を私に伝えてくださる。私はそれらを直接学ぶとともに、次はこう話しかけよう、この解説を加えようと、対応をどう改善するか具体的に考えることができた。博物館は情報を発信するだけでなく、展示物とそれに関わる人々が情報を交え、発展させる場所である。私は今後、自らの解説技術も身に付け、興味を持ってもらえるような、一人ひとりに応じた対話ができるようになりたい。(理学部2年 久保田彩)

 

展示における展示解説員の役割について考える。今回のように文字パネルの展示解説が少ないと、文字化されていない情報は展示解説員によって来館者に提供される。この時展示解説員は各々の来館者の興味に合わせた解説を行え、予期しない質問に対しても柔軟に対応する事ができるだろう。しかし、展示解説員の持つ知識や個性の違いにより、均一な質の展示解説を提供し続ける事は難しい。機械による音声ガイドならば安定して均一な質の展示解説を来館者に提供できるが、事前に記録した内容しか解説できない等柔軟性に欠ける。さらに機械の調達や音声データの入力など導入期にかかるコストは展示解説員のそれよりはるかに高い。こう考えると、柔軟性の高い展示解説員を採用する方が展示を構成する上でより役立つと思われる。しかし、展示解説員の柔軟性が発揮されるのは、柔軟に対応できるだけの知識や経験を彼らが持つ場合に限られることを留意すべきである。展示解説に必要な知識や話術、来館者と共感する能力がなければ、展示解説員はただの音声ガイドの−機械の−代用品となってしまうだろう。(理学院修士1年 福田洋之)

 

Lepidoptera展の展示解説を通じて実感したのは、来館者に合わせたきっかけづくりと解説対応の難しさである。博物館には様々な状況で来館される方がいる。小さな子供を連れた来館者の場合、子供には伝え方の工夫が大人の来館者よりも多く必要とする。見学時間が非常に制限された来館者の場合、伝えたいことの全てを伝えきれないことが起きる。このように、来館者の方に展示解説をするきっかけづくりや解説対応は複雑で、一度上手くいったことでも、次は失敗になったりもする。しかし、ほんの少し言葉を変えることや仕掛けをすると上手くいくこともあり、やり方次第である。今後は、小さな子供への解説対応の工夫の仕方について考えていきたい。(理学部2年 三嶋渉)

 

展示を見ている人に唐突に話しかけていた今までの解説は、どうしても知識を押し付けてしまう形になっていたと思う。今回は来館者が「チョウとガはどこが違うか?」「どうしてこんなにたくさんのチョウが飾られているのか?」といった疑問を抱いていることが多く、そういった疑問が口を衝いて出た時に横から口を挟む形で解説をすると話が弾んだ。今回は有名なチョウのタイプ標本も展示され、虫好きの自分にはこの上なく面白い展示だった。事前に北海道に生息するチョウを調べたり、土曜市民セミナーを訊いて知識を増やしたりすることから、解説中に来館した子供たちと虫の情報を交換することまで楽しんで活動することができた。(農学院修士1年 村松弘規)

 

 Lepidoptera展の展示解説を行い、様々な人とコミュニケーションを取ることで、多くのことを経験し、いろいろな話を聞くことができた。その中で印象に残ったのは、世界にはこんなにもたくさんの蝶や蛾がいるのかという感想を漏らす方と、反対に最近はそれらが減ってしまってめったに見られなくなってしまった、昔はもっといたのにという感想を漏らす方がいたことであった。ただ解説するのではなく、それぞれの人の思いを展示解説を通して多くの人に伝えることが、解説員としての使命の一つに挙がるのではと感じた解説体験であった。(理学院修士1年 山下伸志)

 

Lepidoptera展においては自分が以前行った一方的に解説をする展示解説とは異なり、来館者への話しかけ方、来館者からの話の聞き方、来館者との対話など多くの技術が必要になった。このような技術は大学生活、社会に出てからも求められるものであると思う。そのような技術が学べた今回のLepidoptera展は自分にとってとても有意義なものになったと思う。また自分の専門分野でない解説であったが、このように専門分野でないことによって来館者がどのようなことを話したら関心を持ってくれるか、どのようなことを知りたいと思っているかなどを自分の視点から考えることができ、そうすることで来館者からもわかりやすい解説にすることができたと考えている。また鱗翅目という分野の知識が増え、これからもこのような活動に積極的に参加し自分の知識の幅を増やしていきたい。(理学部2年 山本大貴)