卒論ポスター発表会 反省会・事後指導の実施と発表者の考察レポート

【卒論ポスター発表会 反省会・事後指導の活動報告】

2012年3月15日(木)に、卒論ポスター発表会の反省会・事後指導を行いました。

反省会・事後指導では、発表者からは卒論ポスター発表会に参加した感想や意見、来年に向けての改善点などを報告してもらいました。また、北大カフェプロジェクトのメンバーや学生参加プロジェクト「卒論ポスター発表会の運営」を受講した学生からは、運営等に参加して意見や感想、来年に向けての提案などを報告してもらいました。

【発表者による考察】

発表者には「卒論ポスター発表会」に参加して得た考察をレポートにまとめてもらいました。発表者10名の考察レポートを以下に紹介します。

私がポスター発表を通じて感じ、また学び得たことは、恐らく他の発表者の感想の中にちりばめられているでしょうから、それ以外に個人的にどうしてもお伝えしたいことを申し上げます。

私の発表はアイヌ語カラフト方言のutahという語について調べたものなのですが、そもそもこの研究の着想や、論を展開するうえでの問題意識というのは私のオリジナルではなく、ポスター内の先行研究でご紹介した通り、私の恩師でもある佐藤知己氏が論文で示された着想、問題意識です。私の研究は佐藤氏の視点をそっくり用いて、その上に他の資料での分析結果を追加し考察したものです。改めて申し上げますが、私の研究は私の独創性に端を発するものではありません。

それにも関わらず、発表では私も舞い上がっており、そういったことを蔑ろにして自らの研究だと言わんばかりに発表してしまった過ちに今やっと気づき、また評価の一つである独創性の公平性をも図らずも乱してしまったことを深く反省しています。今後よりしっかりとした姿勢で研究に向き合えるよう、自戒を込めて感想に代えさせていただきます。

(文学部4年 岸本宜久)

研究内容が「ラオスの銅の鉱山」であったため、審査員以外で話を聞きに来て下さった方の9割以上が男性であった。予想はしていたが、少し残念であった。もう少し女性の方にも話を聞きに来ていただくために、パンフレットの紹介文をもう少し女性の興味を引くものにしていたら良かったと感じた。

質問内容としては、「本当にラオスに行ってきたのか」「なぜ鉱山に興味を持ったのか」というものがほとんどであった。また、専門分野の方々からはまず聞かれないであろう「基本的なことを深く追求する」ような質問もいくつかあった。そのため、専門用語をわかりやすく説明することの難しさに改めて気付かされた。

説明の仕方としては、がちがちの敬語でまじめに話すよりも、多少くだけた感じで話した方が、聞いてる側の反応が良いように感じた。ポスター発表の場では、聞いてる側が質問しやすい雰囲気を作り出すことも重要なのだと学んだ。

(理学部4年 小篠絵梨花)

私にとって卒論ポスター発表会は、大学4年間の集大成であった。自分の研究室内だけで卒業論文を完結させるのではなく、多岐にわたる分野の方々に見ていただけることで、全く違った視点のご意見やアドバイスを頂けた。また、理解の仕方も十人十色であり、『この人はこう理解してくれるんだ』と様々な人に理解してもらう楽しさを身をもって体験することができた。このように「卒業ポスター発表会」は私にとって実に実りの多いものであった。こんな素晴らしい体験をできたのも博物館の皆様や、関係者の協力があってこそだと思う。深く感謝申し上げたい。後輩たちには是非参加を勧めたいと思う。どうもありがとうございました。

(農学部4年 坂本ひさ江)

卒業研究を通して試行錯誤しながら習得した専門知識や考え方から一旦離れ、研究全体を一般の方目線で客観視してシンプルに再構築し、わかりやすく伝える。卒論ポスター発表会では、こんな貴重な経験をさせていただいた。私の場合「有機農産物の評価」という身近なテーマだが、結果は複雑で簡単に結論付けられず、準備中はどう噛み砕いて説明すれば伝わるのか途方にくれた時期もあった。全体を通して気づいた事は、研究する者は社会との接点を意識し、「何のためにこの研究をするのか?」「この手法・結果から将来何ができるのか?」という根本的な問いの答えを常に考える必要があるということである。「有機農産物って他の農産物と何が違うの?」という私自身の疑問から始まった卒論だが、テクニックや知識の吸収に気を取られ大切な部分を忘れがちだったかもしれない。その根本に向き合うチャンスをくれた卒論ポスター発表会に心から感謝している。

(農学部4年 渡邊彩乃)

いかなる場合においても、例え聴衆が本質とは全く関係のない疑問を投げかけたとしても、自身の研究を説明するにあたって常に論理的に説明および返答をする必要があり、感情的になるのは好ましくない。とくに聴衆の対象が専門家でなく、自身の研究に関する知識を有していない一般大衆の場合なおさらである。

また、前提の知識がないからこそ面白い発想を投げかけられることもあり、このような場でのユニークな指摘から大発見へとつながる可能性もあるのだろう。

研究は分野によっては必ずしも一般大衆に受け入れられるとは限らないが、何らかの形で一般大衆への説明の場を設けることは科学の維持・発展に必要である。

(農学部4年 上原匡貴)

今回の卒論発表で痛感したことは、言葉の選び方の重要性である。自分の持っている知識や使用する単語のどこまでが一般的でどこまでが専門的なのかは、実際に本番で人と話すまで気づけない部分が多かった。

またこのような発表の場では分かりやすさを優先して、内容を端的に表現しがちになってしまうが、それによって結果が誇張され、研究内容の解釈が変わってしまう危険性もあるように感じた。科学に携わる人とそれ以外の人では、そもそも知りたいと思う点やそれについての解釈の仕方が異なることが多い。自分の実際に行ったことや本当に伝えたいことと、実際に発表する際に理解してもらいやすい言葉や内容に直すこととのバランスの取り方が非常に難しかった。

一般の方に自分の研究分野を知ってもらえたこと、自分の理解していない点を明白にできたことは自分にとって大きな利益であった。この経験を生かして今後も研究に励みたいと思う。

(理学部4年 太田菜央)

2日間にわたって開催されたポスター発表会に参加し、普段は接することのない他学部の方や一般の方に自身の卒論に関しての発表を行った。ポスター1枚という制限がある中で、ポスターだけで自身の研究に関して知っていただき興味を持っていただけるのか作製の段階から非常に苦労した。それは、自身の研究内容で用いる専門用語をただ簡単な言葉に置き換えるだけではなく、実際にポスターを見る側の立場になってどのようなことに興味を持ち、知りたいかを考えることで、聞いている方にとって理解していただける説明を心がける必要があったからである。普段研究室で質問されないようなことを尋ねられることで逆にこちらが気づかされる部分もあったり、再度自身の研究をする意義を深く考えさせられる非常に良い経験であった。私は修士に進んでもこの研究を引き続き行うので、今回得た経験を活かして今後の研究生活に役立てたい。

(農学部4年 天野太郎)

今回この発表会に参加して気づいたことは、様々な方々にまずは興味を持っていただけるように、さらに簡単でわかりやすいポスター作成、発表、対話を行うことが非常に大切ということであった。この発表会では、自分の持っている知識などの前提と、聞いてくださる方のそれとが全く異なるために、自分の内容についての背景などの補完がされにくい。だがそういったものを全て説明すると発表自体が退屈なものとなってしまう。内容とその周辺知識についてどこまで説明するか、またどこまで省略し簡単な言葉に言い直せるかのバランスとそれを成せる能力が大きなキーポイントであると私は感じた。最初はそれがあまり上手にできなかったが、最終的に少しではあるが上達することができ、結果的に自分の発表を再確認、説明能力の上昇、そして様々な方々との対話を行い様々な考えや意見をいただけたことが今発表会での大きな収穫であった。

(農学部4年 林周平)

来館者の方々、審査員の方々の率直なご感想、ご質問が何よりの気づきを与えてくださった。同じ専門領域に属する人間のあいだでは暗黙の了解となっているような事項を、言葉を移し替え説明しようとする取り組みは、半ば無意識的に使っていた学術用語や概念、方法論を改めて問い直す機会となった。

来館者の方、審査員の方からは、研究内容をお伝えするための努力を通して、社会と自分の専門領域との関係を考えさせられた。そして、他のポスター発表者からは、互いの研究内容を聴きその発表の仕方を批評し合うことによって、自分の研究を広い学問世界の中で相対的にとらえることができた。他学部、他研究室に所属する同学年の学生とともに準備をすることができ、研究に対する真摯な姿勢に大変刺激を受けたことも貴重な経験であった。

専門的な内容を簡略化する作業には、ともすれば事実を曲げてしまう危険性が常につきまとう。それを乗り越えるためには、本当の意味での自らの専門領域に対する深い理解と、専門外の方と共通の理解を得たいという心の両方が不可欠であることを学ばせていただいた。そしてそれこそが、これからますます身につけていかなければいけないことであるとの思いを強くしている。

(文学部4年 山田のぞみ)

私は今回、卒論ポスター発表に向けて初めてポスター作成に取り組んだ。作成に当たり、自身が所属する学部以外の方々に対する専門的な研究の紹介の仕方、情報は多すぎず少なすぎず、そして理解し易く見易いポスターのデザインなどを心掛けた。これらは研究室内だけで発表した場合には、気を配らず、そしてその難しさに気付かされなかったことである。準備の段階で他の学生の発表を聞くことで、理解され易い話の道筋の立て方や分かり易いポスターのデザインの仕方などを学び、自身の発表に反映させた。

また実際に発表して印象深かったことは、発表を聴きにいらした方々が大変熱心に耳を傾けて下さったことである。ぎこちない発表でも、最後まで立ち去らず聞いて下さる方々に対し、自分自身も出来る限りの発表を行いたいという気持ちが芽生え、頑張ることが出来た。今回の発表を通し、「人」や「研究」と今まで以上に向かい合えたことで、その二つの結びつきを学ぶことが出来た。

(水産学部4年 長田詩織)


学生参加プロジェクト「卒論ポスター発表会の運営」に参加した学生の考察もご覧いただけます。
http://www.museum.hokudai.ac.jp/education/museummeister/list/9437/