2011年度後期学生参加プロジェクト「クラーク博士と札幌の植物」展示制作の参加学生による考察レポート

ミュージアムマイスターコース 社会体験型科目の一環として行われた、学生参加プロジェクト「クラーク博士と札幌の植物」展示制作に参加した学生の総括レポートをご紹介します。

 

 この制作に参加している学生との共同作業やパネルの作成、展示ケースなどの会場設営、文章の校正といった作業を通じて、空間の使い方、小道具を使った展示の作り方を知ることができた。そして、クラークにはこれまで構内にある胸像のイメージしか持っていなかったのだが、貴重な標本や資料を扱うことで、その人柄を知り、より身近に感じられるようになった。さらに、学術標本資料と一般の来館者とをつなぐ作業を通じて、研究室にいるだけでは分からない博物館の力を感じることが出来た。また、全工程において楽しんで作業をすることができた。

 また課題点としては、作業に不慣れで作業効率が悪く、予定していた時間内に終わらせることができなかった点。これにより作業時間を延長した点。パネルの文字や文章の校正において、文字量が多いままとなり、それらを読む来館者に対する配慮が欠けていた点が挙げられる。しかし、これにより「伝えたいこと」と「伝わりやすいこと」を両立させた展示作りの難しさも感じられた。

(理学院修士1年 木下大旗)

 

 今回の展示制作では、制作側と来場者の視点が異なっていることから生じる手作りの展示の難しさを実感した。私は展示解説にも参加しているのだが、来場者の方に「肖像画がただ置いてあるだけで説明書きがなく、誰なのか全くわからない」と言われてしまい、クラークの肖像画だと認識していただけることを当たり前のように思っていたことを反省した。展示を作っているうちに、作る側はどんどん展示内容を取り込んでしまって初見の来場者の視点を忘れがちになってしまう。パネルの内容についてもそうで、文の手直しをしているうちに知識がついてしまい、予備知識のない来場者に分かりやすいかどうかの判断がしにくくなる。私自身植物は全くの専門外であり、私がわからなかったこと・知らなかったことはそのまま来場者の不明点につながるはずである。来場者の視点に立った展示を作るためには、制作側が感じた第一印象も大切にし、なぜそう感じたのかを分析する必要がある。

(文学部4年 福岡沙和)

 

 展示制作を通して成果としてあったことは、二つある。

 一つ目は、展示物をより効果的に見せる方法を考えたことである。多くの展示物がある中で、単に展示台の高さに差をつけても、その展示台が展示ケースの下板と色が同化していれば、強調は弱くなってしまう。そのため、下板もしくは展示台に布などで色を付けることで区別がはっきりさせることで展示の見易さ、情報伝達に変化をもたらすことできる。

 二つ目は、伝えたい情報の整理である。展示を制作する側は、たくさんの情報をもとに展示制作を行う。そのため、一つでも多くの情報を伝えるために展示物・展示パネルを制作する。しかし、実際に来館する人ほとんどは、大量の文字情報を処理できない。そのため、本当に必要な情報を選別することで、その展示の意味するところを正確かつ分かりやすく伝えることができる。さらに、図・写真を効果的に用いることで伝わりやすさを向上させることもできる。

(理学部2年 三嶋渉)

 

 「クラークと札幌の植物」の展示制作を行った成果としては、ただひとつのパネルを作るにも多くの人の力が必要であるという事を実感できたことである。今回、自分はイラストレイターで館内マップなどを制作したがその制作に至るまでにはどのようなものにするかを考え、その後他の人に添削してもらい、実際に(イラストレイターで)制作してまた添削を行うという手順を踏んで完成した。展示がこれほど多くの人の力を借りて出来上がるという事を初めて知る事ができ、これから他の展示に関してもこのような視点から見ていく必要があるように感じた。

 また課題としては初めての展示制作という事もありマップの制作に多く時間を取られてしまった事、十分に工夫を凝らす事ができなかった事である。今回でイラストレイターの使い方を十分学ぶことができたため、このような展示制作にこれからも積極的に参加しその中でこの課題(反省)を生かしていきたい。

(理学部2年 山本大貴)