授業報告 博物館学特別講義 II 第11回 6月26日

第11回 6月26日

担当:鈴木幸人


今回は第3回目で、鈴木先生の授業は最終、「大阪市博物館フォーラム2010」講演資料の読みすすめが行なわれた。講義では、「フェルメール展」、「円山応挙展」、「祈りの道 吉野・熊野・高野の名宝展」、「阪神タイガース展」や「大阪市博物館施設研究会(大博研:だいはっけん)」に関する昨年の講義内容を網羅し、その上で、予測総入場者数に図録や関連グッズの売上を加味して算出する入場料の設定や、企画会社、マスコミ事業部等との関わりを通じて制作されていくビジネスとしての「展覧会」の捉え方、展示作品借用時における約束の信用性や情報内容の精査、事前の入念な開催館内整理の重要性などが語られた。さらに、博物館の強味は、学芸員がその専門性を活かして「展覧会」を行えることであり、学芸員の専門性は「展覧会」という形に結実する、という究極の結論に至った。ここで先生が、単なる社会の世知辛さを私達に教え込もうとしているのではないことは明らかで、講義には、私達が将来社会に出るにあたり、認識しておくべき重要な事柄が多く含まれている。学芸員は、社会的にはストラテジストであり、博物館展示においては観覧者を納得させる存在でなくてはならないという学びがある。その際の考察や判断に必要になるのは、第1回で語られた、学芸員の内にある「美徳」という、鍛え上げられた精緻なフィルターである。世間知らずであっては通用しない。

最後は、先生の専門である動物図鑑についての話で、昭和20〜40年代後半までの動物画の掲載方式を、動物園展示に置き換えて捉えていくというものだった。捕食関係にある異種動物が、同一ページに一同に描かれるパノラマ式の掲載を「地理学展示」と捉え、実際にはあり得ない共存画と見受けられるものから、各個体の視線が合わない描かれ方をしていることにより、同一環境にありながら、異なる次元に存在していると見受けられる、いわば、観覧者の「視点」を問われるものもあった。パノラマ式に代わり、次第に「分類展示」の掲載方式がメインになる。先生はこれを味気ないと苦笑したが、時代の移り変わりにより、動物画の描き手が、何をどのように伝えたいと考えるようになったのかについても一考してみたい。(文学研究科 歴史地域文化学専攻修士1年 新井藤子)