授業報告 博物館学特別講義 II 第16回 7月31日

第16回 7月31日

担当:山村高淑


山村高淑先生による「北大における先住民ヘリテイジツアーの試み」、第2回目のルートは、キャンパスの北側を散策するものであった。花木園を抜け、ポプラ並木を過ぎ、農場から細道に入り、工学部の横から恵迪寮への道をたどり…、そして遺跡保存庭園へ。その道すがら、山本先生と観光学院の博士課程に在学中のジャンさんが、iphoneを用いた画期的な情報発信方法を実際に見せてくださった。iphone用に無料で提供されているアプリ「Layar」を活用した新しい方式である。

これまで、博物館の展示物や、屋外の建築物や遺跡の解説パネルから、さらに詳しい情報(その場所に恒久的に設置することのできない音声データや動画等)にアクセスできるようにする場合は、1)GPS方式(人物の位置情報をもとにデータを提供する)、2)マーカ方式(モノにQRコードを貼り、それを通してデータを提供する)が採られていた。いずれも開発当初は画期的な技術であったことに違いはないが、問題は、情報を得るまでのプロセスの煩雑さにあった。

ところが、第3番目の方式であるマーカレス方式をとっているのが、iphoneアプリ「Layar」である。たとえば、総合博物館の前に置かれた解説パネルを例としよう。まず情報提供者は、そのアプリを用いて、事前に解説パネルの写真(二次元)と、そのパネルに関連する音声データ等をタグ付け(関連付け)しておく。これで、情報はクラウド上に保存される。そこで今度は、利用者がアプリを用いて実物の解説パネル(三次元)を「撮影」すると、クラウド上にあげられていた先の情報を、ただちに表示してくれるのである。外観が天候や光の加減によって左右されやすい彫刻や建築自体を「撮影」した場合は、アクセスしにくいという点があるものの、情報へのアクセス時間が大幅に短縮されるというメリットは大きい。

博物館学特別講義IIの最終授業となった第16回目は、次世代の技術に間近でふれ、これからの情報発信の新しいかたちが予感される刺激的な90分間であった。(文学研究科 思想文化学専攻 修士課程1年 山田のぞみ)