2012年度卒論ポスター発表会 発表者の考察レポート

発表者には「卒論ポスター発表会」に参加して得た考察をレポートにまとめてもらいました。発表者12名の考察レポートを以下に紹介します。


  異なる背景知識や価値観を持ち合わせる者同士で対話するからこそ生まれる新たな着想や発見がある。しかし、その対話の前提として自身の考えをうまく整理しできるだけ簡略かつ十分に相手に伝えることはなかなか難しい。今回、様々な分野の方々とここまで積極的に対話をする機会をいただけたことは、私にとって非常に貴重な経験であり、また同時に自身の力不足も痛感させられた。また、専門分野の違う方々に対して研究内容を伝えるにあたり、自身の研究に対する客観的な認識というものを明確に再確認する必要があり、自分の研究と、あるいは自分自身と深く向き合うよい機会となった。来館者の方々との議論だけでなく、他の発表者の興味深い卒論にも触れることができ、また制作や発表の過程でそれぞれの個性やアイデアに触れられたことも、非常に面白く得難い経験であった。今後も、幅広い視野を持ち俯瞰的な視点に立ち返って物事を見ることを忘れずにいたいと思う。

(農学部 応用生命科学科 4年 大橋悠文)

  卒論ポスター発表会への参加は、私にとって非常に貴重な経験となった。自分がこの1年間懸命に取り組んできた卒業研究だが、今回のポスター発表の機会がなければ、自分の専門分野以外の方々に研究内容をお伝えする機会は得られなかった。そして、参加することによって市民の方や教職員の方々、学生などから普段の自分のゼミなどでは得ることができない貴重な意見を頂くことができた。さらに、それを通して自分の研究についてより深く考える機会を得られ、今後の自分の研究のヒントともなった。

  一方で、このようなイベントは来館者の方々にとってもよい機会であったのではないかと考える。今回のように学生が大学で行っている研究について本人から直接聞ける機会は他にはほとんどないからである。特に、これから進路を決める高校生や学部生にとっては自分の興味を見つけたり広げたりするよい機会だと感じた。

  以上のように卒論ポスター発表会は発表者、来館者の両者にとってメリットとなる。来年以降の継続と拡大にも期待、協力したい。

(農学部 生物資源科学科 4年 小坂典子)

  ポスターの制作から発表まで、多くの気づきを得ることができた。ポスターの制作にあたっては、研究内容を簡略化することによって知らぬ間に事実を変えてしまう危険性に気づかされた。内容をわかりやすくしようとすると、図式的に当てはめてしまいがちだが、そうすることで既成の事実の意味をも変えてしまう恐れがある。そうならないためにも、一つ一つの言葉の選択や、内容の正しい理解が必要となると強く感じた。

  来館者の方々、審査員の方々からは、多くのご意見、ご質問をいただき、改めて自分の研究に向き合うことができた。対話を通して発見した新たな疑問点や、他分野の方々の視点からの鋭いご指摘など、自分の考えをアウトプットしなければ得られなかったような気づきがたくさんあった。

  何よりも、多くの方々に、「面白かった」と言っていただけたことが、自信につながった。

  このことを生かして今後につなげていきたいと思う。

(文学部 人文科学科 4年 坂本真惟)

  卒業論文ポスター発表会に参加して、まず印象に残っているのが、芸術系、あるいは工学系の学生からも質問や「おもしろい」という感想を多く寄せていただいた点である。確かに、研究内容をいかに発信するかというポスター制作方法やプレゼンテーション方法を学ぶよい機会になった部分も大きいが、私個人としては、自分と異なる領域にも積極的に関与する他の学生や来館者の姿勢に学ぶべきところが多くあった。異分野の研究にもどんどん積極的アプローチする、そういった点を自分にも取り込んでいきたい。

  また、発表会当日、自分の研究を高校の先生にお話しし、子どもに伝えるということに関して意見を交わすことができたのも大きな経験であった。化石に関して、子どもに「かっこいい」というところまでのみならず、研究の意義のラインまで興味を持ってもらうことは難しい。確かに、研究は人にアピールするためだけに行われるべきではない。しかし、やはり研究というラインまで様々な方に興味を持っていただける、そういった普及活動を機会があれば行っていきたい。

(理学部 地球科学科 4年 園部英俊)

  ポスターを作り、様々な方にそれを見ていただくということによって、自分の研究を改めて捉え直すことが出来た。

  まずポスター制作は、卒業論文を既に書き終えていた私にとって、卒業論文の再構成という意味合いが強かった。自分が最も伝えたい部分を伝えられるように構成を考えることで、自身の研究をどう解釈しているのか、改めて気付くことが出来た。

  そして、何よりも様々な方にポスターやポスター草案を見ていただき、ご質問・ご意見をいただいたことで、自分では気付くことができなかった視点で自身の研究を顧みることができた。特に印象的だったのは、「文系の研究は最終的にどこへつながっていくのかが分かりにくい」という、来館者の方からのご意見だった。私は美術について学んでいるが、社会にどう役立つのか、確かに分かりにくいものであると思う。好きで研究していることではあるが、好きだというだけでなく、自分の研究の意義について、考えることや伝えることを忘れてはならないということを気付かせて下さったご意見だった。

  今回の卒論ポスター発表会を通して得たものを、今後の研究にも活かしていきたい。

(文学部 人文科学科 4年 野田佳奈子)

  卒論ポスター作成を通して、シンプルで情報が伝わりやすいポスター作りのコツを習得できた。また、来館者の方々との対話の中で、私の研究につながるヒントを得ることができた。

  ポスター制作過程において、担当教員をはじめとし、卒論ポスターに携わる他分野の方々、先輩から後輩まで多くの方々に添削をしていただいた。私なりに内容を工夫したポスターでも他の方にはまだまだ分かりにくい事を認識できた。ポスター作りのコツを身に染みて習得できたのは、多くの方々の多様な視点による添削のおかげである。

  またポスター発表では、来館者の方々に研究内容について一緒に考えていただけるような話し方を目指した。その結果、私が思いつかなかったアイデアや私の知らなかった知識・視点を得ることができた。さらに他分野の方に興味を持っていただけたことが私の研究に対するモチベーションの向上につながった。

  この経験を活かし、今後もより伝わりやすい方法を模索し、積極的に他分野の方々と対話していきたい。

(農学部 生物機能化学科 4年 常木生也)

  学科での発表会であってもせいぜい地質や生物地球化学といった周辺の分野の話しか聞くことがない。それでも十分に毛色が違うように感じていた。ましてや文系や分子生物学といった他分野の研究について聞く機会はなかなかない。他の発表者の内容は興味深く思えた。

  普段あまり気にしないポスターのデザインに関しても時間をかけて議論できた。先生方や他の発表者の方々には美的センスに富んだ方が多くいらしたので、勉強になった。

  実際のポスター発表においては、想像以上に理解が深くなければならないということを実感した。普段は専門用語を用いて楽をして分かったふりをしていることを言いかえなければならない。分かりやすい説明には、話したいことの根本から理解しなければ難しい。このことを感覚として多少身につけることができたことが今回の発表で得たものの内の一つだと思っている。

  この発表会での教訓を生かして、大学院に進学したのちも精進していきたい。

(理学部 地球科学科 4年 中島悠貴)


  普段の研究室内での発表では多数の方を対象に話をするので本当に自分の発表が相手に伝わっているのかわからなかった。しかし、今回のポスター発表会では1対1で説明するので、相手に正しく伝わっているのかどうか知ることができ、大変有意義であったと思う。最初はやはり専門用語などについてうまく説明することができず、自分の言いたいことをきちんと伝えられなかったが、2日間かけて試行錯誤していくうちにだんだんと自分の言いたいことを少しは伝えられるようになったと思う。しかし、反省点としてわかりやすさにこだわるあまりに内容をやや誇張して発表してしまい、聴衆に誤解を与えてしまったかもしれないことが挙げられる。今後も同様の企画があれば積極的に参加して自分のコミュニケーション能力を磨いていきたいと思う。

(農学物 応用生命科学科 4年 永田大地)

  卒論ポスター発表会に参加することで自分が得た最も大きなことは、市民の方々に自分の研究テーマを伝えるということを前提に、改めて自分の研究テーマに向き合うことができたことだった。一般の方向けに解釈することで、普段は研究として向き合う内容をより噛み砕いていく過程で、自分の研究テーマの魅力や課題を再認識することができたことは、非常に大きな成果だった。この経験は、総合博物館のポスター発表でなければ得られなかったと感じる。

  また、他学部の4年生と、市民向けにポスターを制作する、という過程を共に経験できたことも、とても貴重な経験だった。発表者には理系から文系まで様々な人がおり、12人でお互いの意見を出し合ったり、自分の研究の紹介をし合ったりする中で切磋琢磨し、より自分の研究への意識を高めることができたと感じる。今後、12人が大学院へ進み、発表した研究テーマがどのように発展していったのか、いつか報告し合えればと思う。

(農学部 生物資源科学科 4年 新美恵理子)

  今回のポスター発表では多くの人に私の発表を聞いていただいた。恐竜という分野を研究している事や普段から博物館におり展示解説も経験している事、学芸員実習で博物館の業務を経験した事などから一般の方に専門分野を説明する事には慣れていた。しかし、自分自身の研究内容を説明する事は想像以上に難しかった。特に子供を相手にしたときにそれを強く感じた。展示解説では相手に合わせて話の内容自体を変えてしまう事ができるが、研究発表では話の内容それ自体は変えられないからだ。結果、今回相手をした子供達には少々内容が難しくなってしまったかもしれない。ポスター発表会では子連れの来場者が殆どおらず、話のレベルを調整する機会もあまり無かった。今後何かの機会でまた研究内容を発表する事があれば、この事を念頭においた説明を心がけたいと思った。

(理学部 地球科学科 4年 高崎竜司)

  私の所属する芸術学講座では、学生の興味・関心をとても大切にする。自身の関心に従って研究対象を選び、勉強している。私も高校生の時に出会って感動を覚えた建築物を対象とし、研究を続けてきた。

  今回の卒論ポスター発表会にあたって私が一番に重要視したことは、自分がその作品を好きだということを伝えたい、という思いである。そのために、今まで撮った写真を広げて、魅力が一番伝わるようなものを選び、見やすいように配置を決め、作品の雰囲気を伝えられるようなデザインにしようと心がけた。そのポスターが評価をいただいたことは本当に嬉しく、これからの研究への大きな自信となった。

  来館者の方々、審査員の方々に多くのご質問やご指摘をいただき、知識や考察の不足を痛感することも多くあった。しかしそれ以上に、自分の好きな作品の話を熱心に聴いていただいたこと、一緒にそれについて対話ができたことは最上の楽しく充実した時間であり、心に残る経験となった。

(文学部 人文科学科 4年 室谷美里)

  総合博物館が行なっている様々な実験的試みに強く惹かれ本企画に参加した。市民の方々に向けての発表ということで、専門用語は一切使わずに説明することと、そうであっても迎合せず本質を理解してもらうために全力で説明することを心がけて発表を行った。結果高校生から大学の先生、文系理系問わずたくさんの方が聴きにいらして下さり、様々な意見をいただいたり質問を受けたりなどのコミュニケーションを取りながらポスター発表することができた。

  学問が社会貢献しないのであれば、単なる自己満足にすぎないと考えている。私は有機化学からがんなどの疾病などにアプローチをしたいと考えこの道を選んだのであるが、毎日遅くまで残って取り組んできた研究を多くの人に伝えられて本当に良い機会だった。お世話になった博物館の先生方、運営スタッフの皆様、カフェプロの皆様、そして発表を共に行った11人の同期たち、ありがとうございました。

(理学部 生物科学科 4年 脇本行彦)