「巨大ワニと恐竜」展 展示解説担当学生による考察レポート

ミュージアムマイスターコースの一環である「『巨大ワニと恐竜』展の展示解説」に参加した学生のうちの一部の学生からの総括レポートをご紹介します。


今回解説対応をするにあたって私が気をつけたのは「自分は来館者に何を伝えたいのか」ということだ。せっかく企画展に足を運んでいただいたのに、なんとなくワニと恐竜を観て帰った、だけではあまりにもったいない。ワニと恐竜は2億3千万年前にともに生まれ、現代までその共存・競争が続いていること、ワニは1億5千万年も前からその姿をほとんど変えていないことなど、展示の趣旨や自分が感動したことを整理し、それを来館者に伝えようと思った。会話をする上で来館者が不快に感じるような服装・振る舞いをするのは避けねばならないし、来館者の疑問やニーズに沿った話題を選ぶことも大切だ。

解説文を熟読する人はあまり多くないが、そうした文章に代わって、展示の意義・標本の魅力を語り、来館者の展示への理解や感動を深め、あわよくば博物館を好きになってもらうことが解説員の役目だ。そのためには学術的な知識だけでなく、コミュニケーション力や来館者へのおもてなしの心が欠かせないことを、10回の解説を通して強く認識できた。博物館と「ひと」とを繋ぐ解説員として、今後も活動していきたい。

(理学部3年 太田晶)


計10回の解説を通して、私は、解説者が持つべきものは、来館者一人ひとりにしっかり向き合い、来館者から学ぶ姿勢であると感じた。

解説者がすべきことは、来館者それぞれが望むことを敏感に感じ取り、できる限りそれに応えることである。来館者によって年齢、知識、時間の余裕、興味関心、感じ方はまったく異なる。相手にとって最も良い対応をその場で考え、素早く実行しなくてはならない。そこで大切になるのは、日常生活で培われる、相手の立場を考える視点である。展示に関する知識は来館者との会話を深いものとする重要な要素だが、それだけでは来館者は、良いひと時を過ごすことはできない。来館者という「人」と向き合うことが重要なのである。また、来館者から学んでその都度展示や解説に反映することも重要である。期間中、展示やQ&A集の追加が行われた。私も、10回の解説を行う中で来館者から得た反応や意見を解説に反映した。展示は迎える側からの一方通行ではない。来館者との交流がより良い展示をつくるのだと実感した。

(文学部1年 神田いずみ)


私がこの恐竜展の展示解説から大切なことを色々学んだ。まず、展示解説は解説員だけが一方的に話すのではなく、来館者の話もよく聞くことが大切ということだ。来館者の方の話を聞き、そこから興味のありそうな話題や展示物の話を振ることで話が弾み、より展示物の事を知っていただくことができた。また中にはこの話題について聞きたいと言うより話し合いたいという方もいらっしゃったため、会話することの重要性を感じた。次に、自分が解説している展示物だけでなく、それに関連する内容の知識を知っておく必要があるということを学んだ。恐竜展には様々な方が訪れて下さったが、1点目に書いたようにこの分野に詳しい方もいらした。私が説明した時に内容に対する詳しい知識が足りなかったため逆に教えていただくこともあり、背景まで知っておく必要を実感した。さらに、博物館スタッフでもあるために企画展示の事だけでなく、博物館内の施設や他の常設展示の場所等を聞かれることもあり、博物館全般を知っておかなければならないと感じた。

今回の恐竜展では、様々な年代の子どもたちがたくさん訪れてくださった。図鑑を携えてきたり、見学ノートを書いていたり、何度も何度も繰り返し訪れたりしながら恐竜の世界に入り込んでいた。広い年代で楽しめるような展示と解説の工夫が大切なのだと改めて感じた。

(理学部4年 木野瑞萌)


多くの博物館の来館者の方々の観察を通して、強く感じたことは、博物館の来館者として若者、つまり、私と同じくらいの世代の人たちの数が圧倒的に少ないということだ。来館者のほとんどが子供連れや中年からご年配の方で占められていて、10〜20代世代がごっそり抜けていた。修学旅行など団体で、もしくは旅行の一環として家族と博物館を訪れることはあっても、自分で訪れようという人は少ないのだろう。

博物館は、勉強の場でつまらないというイメージを持つ人もいるのだろうが、それは興味のない展示まで隅々まで見ようとするからであり、まずは興味のあるところだけでも見てみれば、違う分野でも実は繋がっていたなんていう自分の中で新しい発見があるかもしれない。そんな発見を体験すれば、あまり興味のなかった分野の展示まで見てみる機会も増えるのではないだろうか。若者の博物館離れは博物館にとっての課題の1つとしてあげられるだろう。

(理学部2年 秦彩乃)