卒論ポスター発表会 発表者の事後考察

卒論ポスター発表会の一部の発表者による事後考察をご紹介します。

学会発表で求められる研究の独自性や成果だけではなく、何よりその研究の面白さや社会的な位置付けを伝えなければならないことが、この発表会の難所であったのではないかと思う。これらを伝えるためには、いかに専門用語を使わずにその研究における疑問を提起できるかが鍵となった。そのため背景の重点的な説明が必須となり、A0判の紙面という限られた範囲に収めるために自分の研究成果を大幅に削らなければならなかったことは、ポスター制作時には残念に感じられた点であった。しかし発表を終えた今では、これによって必要な情報をごくシンプルにまとめあげるという、発表の場に共通する大切なスキルを学べたのではないかと感じている。

植物の分子生物学という分野そのものの面白さと、自分がその面白いことを楽しんでやっているのだということを、多くの方に伝えることのできる貴重な機会が得られた。いただいた励みの言葉を刺激と活力として、今後も継続して研究に尽力していきたい。(農学部応用生命科学科 4年 荻野由香)
この卒論発表会に参加することで、学んだことがいくつかある。まず、ポスターの作り方だ。学部での発表時はできるだけ情報を載せていたが、今回はわかりやすさを目指すことになった。そのため、ポスターデザインにおいて目を運びやすい情報の配置方法などを学ぶことができた。次に、自分の使っていた言葉は自分の思っていた以上に専門用語があることだ。いつも使っている言葉であるだけに、改めてそれを説明するというのは難しい。また、自分の研究分野では当たり前であることが一般的には当たり前ではないということを感じた。さらに、来場していただいた方に説明する前に、自分の分野にどれくらいの知識があるのかを聞いておくことが必要だということだ。事前に知っておくことで、どの程度、内容もしくは用語や背景などを説明するべきなのかを把握できるため、満足していただける説明をすることができるようになれたと思う。自分の研究を知っていただく方法を、ポスター発表を通じて学ぶことができたため、参加してよかった。(理学部生物科学科4年 木野瑞萌)
今回、準備期間と2日間の発表を経て私が経験したことは、適切に人に伝えると、自分に返ってくるということである。まずポスターの制作においては、ポスターに載せる情報が限られており、情報の正確さを保ちながら研究内容の大筋とそれ以外を判別する作業が最も困難であった。その点では、他分野の学生や教員にポスターを見ていただく中で、気が付かなかった情報の過不足を意識しながら制作することができた。 当日は、多くの方々が考察に関する意見や質問をいくつも述べてくださった。会話の中で、ポスターにない内容にまで発展したことも多かった。質問は、相手のわからない点だけでなく相手が理解している点も知ることができる。適切な回答をすると驚くほど話が発展していくことが分かった。

研究は、目的に向かって様々な視点から切り込むものであると思う。お互いの考えを応答しあう中で、対象物を中心に発展していく。これまでは、博物館の展示解説など他の研究者の研究を中心に交流してきたが、自分の研究を中心におくことで、多様な視点を共有でき、直接研究に反映させられることが一番の成果であった。(理学部地球科学科4年 久保田彩)

 

数万字の論文を、一枚のポスターに凝縮する。この作業を行う中で私が直面したのは、簡潔かつ的確に持論をまとめる困難さであった。あまりに簡潔にすると、論文の有機的な関係が見えなくなり、全体が意味をなさない。それを防ぐことにまず苦労した。本来は必要であったのに掲載しなかった情報は、それでもやはり私のポスターにはあったかもしれない。そしてその逆に、自分が強いこだわりを持ったがために不要な情報を残していただろう。しかし、それは少なくとも人文科学の領域では、単に無用なものではなく、研究のオリジナリティにもつながるものだと思う。第二の困難はそこにあった。すなわち、簡潔にしつつも、他ならぬ自分の研究の面白さを伝えることだ。そうして思考錯誤しながら作り上げたポスターを前に、立ち止まってくださった方々に解説し、「面白い」と言っていただけたことは、非常に喜ばしいことであった。この発表会を通して、今後の研究の大きな糧となる、貴重な体験ができた。(文学部人文科学科4年 高野詩織)
今回のように卒論ポスター発表会を大学博物館で行うということは、娯楽施設としてではなく教育施設としての博物館をアピールする場になると同時に、最新の学術研究を発信する場としての大学博物館の特徴をよく表していると思う。そういったイベントで、学科のポスター発表会との違いを特に感じたのは、発表の重点を研究内容の説明に置くのか、聞き手を意識するか、という点である。専門家の間で自分の研究を俯瞰的に見直すのとは異なり、とにかく交流を通して不特定多数の人へ情報を発信するという印象が強かった。事前の発表準備は学科の発表以上に聞き手にとっての分かりやすさを意識することが多かったし、その上で本場に臨んだ際には、要旨を正しく伝えるために聞き手の反応を受けて練習とは異なる伝え方を工夫する対話の必要性を感じた。優れた研究成果や技術も、聞き手との人間的な意思疎通があって初めて有意義な情報として伝わるのだと改めて考えた。(理学部生物科学科4年 豊田あかり)
同じ分野を研究する学部内発表ではなく、専門知識を十分に持たない来場者に向けて発表する機会を頂けたことは、とても貴重な経験になったと思う。発表の仕方など反省点は大いに見つかった。しかし、それ以上に農業や食の問題に関して、年代や職業の異なる多くの方と話をすることがとても楽しかった。来場者が過去に経験された、様々な食にまつわる興味深い体験の話などを聞かせて頂きながら、一般の方にとっての食料問題とは、多様な個人体験から生まれている面があるものと感じた。また、これから何を研究していくにしても、すべてのテーマの先には個々の実生活がある、ということを忘れてはいけない点も、大いに学ぶことができた。

2日間とても有意義な時間を過ごせた。これは、複数回の中間発表会でアドバイスをくださった方々、当日発表会を運営された方々、会場の良い雰囲気を作ってくださった北大カフェプロジェクトの方々のおかげである。これらの方々に深く感謝申し上げたい。(農学部農業経済学科4年 広瀬拓)
ポスターの制作段階から特に問われていたのが、研究の意義・目的と結論の整合性についてだった。私の研究は『オランダ建築年鑑』を多角的に分析するものであったが、結果自体に「新しさ」を見いだすことが難しく、最終的に結論の項目には研究の結果をまとめた程度の内容に留まった点は反省すべきである。

発表当日は、多くの市民や審査員の方にポスターを説明したが、これらの方々から質問をいただき、自分自身の研究を整理して話すことが自然と求められることで、研究について改善点や新たな発見が驚く程多く見つかった。多くの方と交流する中で特に強く感じたのは、説明を聞きにいらした方が研究内容について深くまで踏み込んだ説明に関心を寄せてくださった点である。ポスター自体で伝えられることには限界があり、その裏付けとなっている事柄を来館者に伝えることで、研究の理解がより深まっていることを実感できた。この発表会で得られた経験を活かして、今後の研究につなげていきたいと思う。(工学部環境社会工学科4年 松澤亮)
卒論ポスター発表会では、二つのことを得た。一つ目は、ポスターの情報をいかにして削ってゆくかである。ポスターの情報は市民の方々向けということを踏まえ、削ることを心掛けた。しかしながら、短いながらも文章での説明が多く、図にできる部分が少なかったのが反省点である。また、図の意図を適切に理解されていなかった箇所があり、専門用語によるイメージが伝えきれていなかったと推定する。二つ目は、見やすいポスターをどのように作成してゆくかである。見やすいポスターにと考え、メリハリのあるデザインを心掛けた。実際にはトピックごとに背景色を分け、字は白抜きにすることで背景色につぶれないようにした。また、市民の方々が何となくでも面白がってくださるきっかけになればと思い遊びの絵を入れた。きれいなデザインではあるとのコメントをいくつかいただいたので、今後のポスターづくりの参考にしてゆきたい。(理学部地球科学科4年 三嶋渉)
ポスター発表会参加にあたり、研究を行っている分野が市民の方々にとって親しみが少ないことと、内容の難しさから参加を希望すべきか悩んだ。しかし、2月から数回参加したポスターを改訂していく中間報告会での検討や本番での発表を通して得たものは大きく、参加できたことを嬉しく感じている。普段は専門用語に頼り説明を行っているが、今回はどのようにしたら専門用語の本質的な意味を変えず簡単な表現にするのかに苦労し、ポスターを何度も改訂し、説明の内容も工夫をした。このように分かりやすく情報を伝える技術は市民の方々へ伝える場合に限らず、同じ分野の多くの方に研究の目的やその重要性を理解してもらうために重要であり、さらに違う分野の方からの指摘を受けて改善点や新しいアプローチの方法を見つけるためにも重要だと考える。そして、何より来館者や審査員の方々が自分の説明に熱心に耳を傾けて、理解しようとして下さったことがこれから研究を続けていく自分への大きな励みになった。今回のポスター発表で得た知識や経験を様々な場面に活かしていきたいと思う。(理学部地球科学科4年 山本大貴)