授業報告 博物館コミュニケーション特論V 第8回 6月12日

担当:藤田良治、湯浅万紀子

今回もビデオレッスンを行った。2人の学生が展示解説を行い、オーディエンスとなる他の受講生達が評価シートに記入していった。評価シートには解説の分かりやすさや聞き取りやすさなどに関する5段階評価の項目の他に、改善すべき点や良い点などを書き込む自由記述欄がある。解説者の様子はビデオで撮影され、それぞれの解説直後に教室でビデオを見て、先生方と受講生で長所や癖、改善すべき点などを指摘した。解説者本人もそれを受けて、コメントした。
ビデオを撮ることによって、展示解説の場を客観化して見直すことができた。解説者が自分の喋りに集中するのは当然のことだが、オーディエンスも解説者の解説に夢中になってしまうため、他のオーディエンスの位置や態度といった周りのことが分からなくなることもあると考えられる。自分の場合、今回はオーディエンスとして解説者の話を聞いていたが、他のオーディエンス(一緒に講義を受けている仲間や先生)の位置が見えず、「あっ、この人、こんなところにいたのか!」と、ビデオを見ていて感じることもあった。このように、展示解説の空間全体を客観視できたのである。
そして、解説者の様々な癖が見えてきた。説明しながら、目線は展示物の方を向きっぱなしであったり、解説用の小道具を左手で持っていて更に左足を出して半身になっているためなのか、左側にあまり目線が行っていなかったりしたことなどの癖は、ビデオを見て改めて指摘できた。ビデオでは早送りもできるため、目線の配分などは、数倍速で見ることによって、大まかな傾向をつかみやすかった。また、展示解説の巧拙にさほど影響はしないが、腰に手を当てる癖や、左足に重心を乗せる癖などが、解説者が気づいていなかったことが指摘され、解説者が驚くこともあった。このような癖を把握しておくことは、就職活動での面接のふるまいに活かせるそうである。
癖や改善点だけなく、良いところも見つけて指摘することもできた。例えば、目線が展示物の方に向いてしまっていた学生は、ジェスチャーは大変上手で、おそらくそのために私自身、聞いているときはその人の世界に引き込まれていったのだが、それをビデオで見直してみることによって、「やはり、この学生はジェスチャーうまいな」と、再確認することができた。自分はオーディエンスとして解説を聞いていて、「ジェスチャーがうまいな」と薄々感じていたのだが、解説が終わって自分の感情のバイアスが消えた状態でビデオで解説模様を見直して、確信を持つことができた。
今回の講義を通して、ビデオレッスンは、解説者が自分の特性を把握できるだけでなく、オーディエンスが解説者の良いところを見つけるための訓練にもなる良いツールだと思った。古くは約千年前のカメラ・オブスキュラより、幾度もの変遷を経て、ビデオという代物ができたのであるから、科学技術万歳だと思った。
(農学院修士1年 北原岳明)


ウマの骨格について、ヒトと比較しながら解説する安藤君


教室に戻り、ビデオを見直して、解説を振り返る


海流について、 iPadを用いて解説する雲中君


再び教室に戻ってビデオレッスン。iPadの持ち方について検討。