授業報告 博物館コミュニケーション特論V 第11回 7月3日

鈴木幸人先生による3回目の講義である。鈴木先生による講義は全3回なので、残念ながら今回が最後ということになる。講義の前半は、鈴木先生が、美術館に学芸員として勤務していた経験をお話して下さった。巡回展を企画したこと、広報ポスターにデザイナーを起用する手法を採用したことなど、当時の状況の中で挑戦的な活動をされていたエピソードが印象的であった。後半は鈴木先生の持ちネタであるという動物図鑑の変遷についてのお話であった。現在出版されている動物図鑑では動物は写真を用いて紹介されていることが多いが、昭和の時代に出版された動物図鑑においては絵を用いて紹介されている。鈴木先生は、昭和の動物図鑑の絵、同じ場所に肉食・草食動物も含めた多様な動物が存在しており、現実にはあり得ない構図で描かれていること、動物の視点がひとつも交わっていないことを特徴として挙げ、日本画との共通点を指摘されていた。特に印象深かったのは、写真を用いた場合、図鑑の中でその動物が「個体」として存在しているというお話である。図鑑はあくまで「一般化」した動物を示す役割を担っているとするなら、絵の方が適切ということになる。動物図鑑に用いる絵と写真、どちらも一長一短あるが、両者ともどんな効果がありどんな影響があるのか、興味深いテーマである。

(会計大学院修士2年 高橋史早)