卒論ポスター発表会 発表者の事後考察

2014年度卒論ポスター発表会で発表を担った一部の学生の事後考察レポートをご紹介します。

 卒論ポスター発表会は研究者同士の発表の場ではなく、市民の方が多い来館者に自分の卒業研究についてポスターと口述だけでもって伝える場である。私が心がけたのは「自分の研究の要点や成果をいかに簡潔に伝えられるか」ということだ。例えばポスターに関しては、重要な箇所を選んで掲載して文章量を減らしつつ、ポスターを見るだけでも研究の概要は押さえられるような、読みやすさとわかりやすさを両立したポスター作りを心掛けた。他の発表者と比べてシンプルなポスターになったが、見やすさという点ではうまく工夫できたと思う。口頭での発表についても「わかりやすく簡潔に」を心がけたが、実際はポスターに掲載した情報をかいつまんで話すだけになりがちで、その来館者が何を知りたいのか、ということに気を配ることができなかった。解説に入る前に聞き手としっかりコミュニケーションをとり、一人一人の興味や背景に応じて話す内容を柔軟に変更できれば良かった。
 研究発表に限らず、自分の伝えたいことを相手に伝えるということは様々な場面で役立つ技術である。今後プレゼンテーションや会議、議論を行う機会には、この発表会で得た経験を上手く活用したいと思う。(理学部地球惑星科学科 太田晶)

 

 私が研究で扱ったプロポーザル方式は、建築物の設計者を選定する方法の1つであり、目には見えにくいテーマであるように思う。その実態把握のため様々な調査を行ったのだが、その複雑さ故に調査結果を簡潔にまとめる作業には大変苦労した。他の発表者や先生の助言もあり、最終的に自分の研究内容を平易な言葉で説明できるようになったことは、私がこの取組みを通じて最も成長できた部分だろう。
 私が行った研究は、今後札幌市のより良い公共建築整備を考える上での基礎的な知見となる。つまり、この研究の成果は、最終的に市民の為に使われていくものである。そのためには、専門家や関係者の間という狭い世界ではなく、市民を巻き込んだ幅広い議論が必要であると考える。
 ポスター発表会ではプロポーザル方式が、市民の方にはまだなじみの薄いものであることを痛感した。一方、身近な問題であるため、丁寧に説明をすれば限られた時間でも十分に理解していただけるという手応えもあった。聞き手との距離が近い形式だからこそ得ることのできたこの経験を活かし、今後はより社会にも目を向け、「発信者」としての役割も担っていきたい。(工学部環境社会工学科 小川史洋)

  

 自身の研究内容を対外的に発表させていただく貴重な機会を得たことを感謝している。この会に参加し、率直に、楽しくやりがいのあるものだと感じた。普段建築分野で研究や設計課題に取り組む場合でも、自分の考えやでき上がったものをアウトプットして発表する機会はとても多いが、今回のように市民の方々や様々な年代の方々に専門的な内容を噛み砕いて伝えることは大変難しく感じた。また、シンプルな質問がかえって鋭く、考えさせられるようなものが多くあった。一方で、建築土木専門の方々にもたくさんのアドバイスを頂いた。中には、分析対象とする作品の絞り方や研究の意義に対するごもっともなご意見もあり、大変参考になった。今後の研究などに活かしていければと思っている。学科分属後は特に他学部の研究に触れる機会も少ないため、後輩たちにも紹介していきたいと思う。
最後に、当日までの数か月間運営に携わっていた先生方、学生スタッフの方々には大変お世話になった。この紙面を借りて感謝申し上げます。(工学部環境社会工学科 佐藤凌)

 

 ポスター発表会へは自分の研究を発表する機会が欲しかったことと、市民への発表ができる数少ない機会だったので参加を決めた。ポスターの制作段階では異なる分野の発表者から質問やアドバイスが飛び交い、自分のポスターや説明が情報不足で重要な部分が抜けていることを痛感した。ただ、そういったアドバイスをポスターに反映させていくことで、回数を重ねるごとにポスターがみるみる改善していく様子は本当に驚いた。改訂を繰り返して完成させたポスターで臨んだ発表会は説明に苦労したものの、楽しい時間であった。異なる分野の方々や市民の方々との会話からは新たな視点や知識が得られ、アドバイスもいただいた。また、最初は難しい顔をしていた来館者に説明していくうちに、表情が柔らかくなり、最後には「分かりやすかった」と言っていただいたときはとにかく嬉しかった。一方で、自分の研究、説明の甘さを強く感じた。今回の参加により、研究を発表することの重要性を感じた。これから先は学会等で多くの人と会話を重ね、自分の研究をより広い、より深い視点から追求していきたい。(水産学部増殖生命科学科 白井孝信

 今回の卒論ポスター発表会は、自分の研究を客観的に見つめ直したり、他学部の研究に触れたりと、良い経験となった。研究者の方から根拠が弱いとの指摘、市民の方からプロポーザル方式を知らなかったという反応、建築関係の方との実情を踏まえた議論など、様々な刺激を受けた。その中で、竣工後に市民の財産となる公共建築が、市民の知らないやり方で知らずのうちに建ち上がっている現状が見えてきた。今後公共建築の設計者選定方式を考えることに加えて、市民が興味をもつ仕組みを考察する必要があるのではないか。ポスター発表について、回数を重ねるほど発表が洗練され、自分の研究のポイントが見えた。各担当部局は、ビルディングタイプごとにプロポーザル方式の知識や運用のノウハウの蓄積がなされる仕組みの構築する必要性があるであろう。本研究は札幌市と議論を深めることでより一層の成果が出るため、継続していく必要がある。
 最後に、企画・運営をしてくださった学生の皆様、ポスター作成など多大なサポートをしてくださった先生方、審査員の皆様、来場者の皆様、カフェプロジェクトのスタッフに感謝致します。ありがとうございました。(工学部環境社会工学科 高橋宏矢)

 

 私は中学のころから環境問題に興味があり、このような森林のCO2動態に関する研究に携わることができて、この1年間楽しく研究を進めることができた。私は今回のポスター発表で、いかにわかりやすく研究の意義、方法、結果を伝えるかということに力を入れて準備を進めた。しかし、今このポスター発表会を終えて、私がこの1年で感じてきた研究の面白さをもっと伝えるべきであったと思う。もちろん研究の内容と重要性を伝えることは発表者の義務であるが、この発表会は普通の学会とは違い、市民の方が多くいらっしゃるので、市民の方々にとっては発表者の個人的な感想やストーリーなども話せばもっと楽しんでいただけたのかもしれない。(農学部農業工学科 辻本克斗)

  今回の発表会は、自身の研究を分野外の人に伝える技術を学ぶ大変良い機会であった。研究説明という点では、必要な情報をピックアップし、適切な時間で研究内容を伝える事が重要であると実感した。これらは、聞き手に飽きずに聴いていただくことはもちろん、自身が伝えたい結論へ向けて、必要な情報のみを聴いていただく事で道筋の通った説明として理解を深めていただくために重要であると思われる。また、このときに行った説明の簡素化や具体化が、科学的に嘘偽りが無いか細心の注意を払う必要があると感じた。ポスターデザインという点では、今回のような限られた時間での説明では、ただデザインに凝るのではなく、自分が説明しやすいように「説明」を軸にデザインを考える必要性を感じた。しかしながら、実際に仕上げたポスターは、インパクトが弱く、見る人を引きつけるようなデザインではなかったと反省している。特に今回のような市民の方々向けの発表では、ユニークさをデザインとして形にできたら良いと感じた。

 このような経験ができたのは、聴きに来てくださった方々、審査員・スタッフの皆様、様々な意見と交流をしてくれた発表者の皆様のおかげだと思っております。ありがとうございました。(農学部応用生命科学科 中村俊介)

 

 北海道の酪農風景は見たことがあるだろうか。北海道でも札幌に住んでいる人は実際に足を運んで見たことがある人はごく少数なのではないか。日本にとって、北海道酪農が果たしている役割は非常に大きいといえる。全国の生乳生産量は減少していく中で、北海道はほぼ横ばいである。したがって北海道のシェアはより拡大し、北海道酪農にかかる期待は大きくなっていくだろう。しかし、現在の経営方法では持続的ではないのではないか。そして、それは北海道全体の問題としてみんなが考えていくべきだ。そんな思いから私はこの卒論ポスター発表会に参加した。私のポスターや発表を通して、同じ北海道で起こっている身近な問題としてとらえ、どうすればいいのか少し考えてもらえればうれしい。
 個人的な反省としては、ポスター1枚にどのような情報を取捨選択するのかが難しく、見に来てくださった人にうまく伝えきれなかったところだ。今後はもっと洗練されたポスターを作りたい。(農学部生物機能化学科 濱本亨)

 

 ポスターの制作、中間発表会、発表当日では、様々なことに気づかされた。まずポスター制作時には、卒業論文という長い文章を、わかりやすく簡潔にまとめることの難しさを感じた。簡潔にしようとしすぎ、むしろわかりにくくなってしまう点も出てきてしまった。また、卒業論文を書いている時には気づくことのできなかった、話の筋道のわかりにくい部分や根拠の足りない部分にいくつか気づくことができた。発表会では、同級生である他の発表者の方々の、研究や発表に打ち込む姿に触れることができ、大変刺激になった。また、来館者の方々や審査員の方々に、自分の考えていることを聞いてもらうことができ、また多くの質問や意見等をいただく中で、研究の足りない部分や新たな疑問点や気づかされた。また、当日発表する中で、私の取り扱った画家や作品について、面白いと言っていただけたことが、大変嬉しかった。今回のポスター発表で気づいたことを、今後に生かしていきたいと思う。(文学部人文科学科 藤岡奈緒美)

 

 市民の方々に向けたポスターを作るときに一番苦労したのは。どこまで自分の分野について伝えきれるか、ということであった。太陽系の起源、といえば耳にした方は多いかもしれないが、地学そのものが馴染みのないもので、何をどのように研究をしているということですら想像のつきにくい分野である。そもそも何をポスターにするべきか、自分の研究内容より研究手法の紹介をするのか、そこから悩んだ。最終的には両方を入れる形に仕上げたが、はじめのうちは内容がうまく伝わらないものであった。
 このポスター発表はいい意味で自分の常識を見直す良い機会だと思う。専門分野を学ぶと、用語やその分野の考え方がわかっている前提で話をすることが多く、他分野の人たちにとって何がわからないのかが気づかないことが多い。最初はうまく伝わらないポスター内容になってしまったのも、その常識が通じる前提で作ってしまったからである。
 当日は多くの方に聞いてはもらえなかったが、それでも来場された方に地学の研究について触れてもらう事ができたのはよかった。(理学部地球惑星科学科 山本淳博)