【セミナー報告】「地球深部にひそむ隕石をさぐる」
タイトル:「地球深部にひそむ隕石をさぐる」
講師:山本 順司(北海道大学総合博物館 准教授)
日時:2015年11月14日(土)13:30〜15:00
会場:北海道大学 人文・社会科学総合研究棟1F 6番教室
講演内容
講師の山本順司先生より、地球深部に潜む隕石が持つ地球の情報について、ご講演いただきました。
今回で5回目となる土曜市民セミナーでは、小さなお子様から学生、市民の方々など、幅広い年齢層の方にご参加いただき、参加人数は100名を超えました。
地球は隕石からできていると考えられています。地球の形成過程で、元素の大規模枯渇とコアの形成が生じ、隕石の化学組成が大気と地球深部に移動しました。
隕石の情報があると考えられている地下670kmに、人類はまだ到達できていません。10kmほど掘削するのが限界だそうです。
そのため、地球深部の情報を得るために、地球深部から湧き上がってくるマグマを利用します。
そのマグマは海洋底で見られ、海水で急冷されたため結晶を作らずガラスとなっており、内部に希ガスを閉じ込めています。
希ガス成分は不活性ガスのため化学反応を起こしません。このため、この希ガスから地球深部の情報、すなわち隕石の情報を得ることができます。
そして、これまでの研究から、この希ガスの成分は炭素質コンドライトという隕石の成分と一致することがわかりました。
この炭素質コンドライトは、C型惑星から来たものであると考えられています。今後は、C型惑星について研究することで、新たな地球の形成過程の情報を得られるそうです。
また、ご講演の中で研究のための数々の装置が紹介され、その中の一つに山本先生が製作を担当されたものがあり、驚きの声があがっていました。
調査の際の困難な出来事や、諸事情などがユーモラスな語り口で紹介されており、会場に笑いが起きることも多々ありました。
質問の時間では、「地球以外の星も、隕石でできているのか」「他の惑星でも、大気に隕石の記憶が残っているか」などという質問があがりました。
それに対し、「微惑星や塵が集積して惑星が形成されるため、地球以外の惑星も隕石からできている」「惑星には引力があるので、ガスを調べれば隕石の記憶を調べることができる」というご回答をいただきました。
他にもご自身の経験から生じた質問をされている方もいらっしゃいました。
今回のセミナーを迎えるまで、漠然と地球は隕石でできていることは知っていましたが、どのようにして隕石を調べるかということは考えたことがありませんでした。
隕石を調べるというと、構成する鉱物などを調べるものだと思っていましたが、ご講演の中で希ガスを調べて隕石と地球深部を比較するという手法があると聞き、驚きました。
また、地球の掘削は10kmほどしか到達していないというお話がありましたが、更に深く掘り進めるためにはどのような技術の発展が必要なのかが気になります。
宇宙だけでなく、地球深部の研究も地球の形成過程を明らかにするために欠かせないものであることを、今回の講演で学ぶことができました。
(総合教育部1年 時永万音、理学部地球惑星科学科4年 日下葵)
会場前で来場者の方にチラシをすすめる時永さんと日下さん 講師の山本先生のご紹介