【セミナー報告】「北海道大学総合博物館所蔵―昆虫標本について―」

タイトル:「北海道大学総合博物館所蔵―昆虫標本について―」

講師:大原 昌宏(北海道大学総合博物館 教授)

日時:2016年2月13日(土)13:30〜15:00

会場:北海道大学 人文・社会科学総合研究棟1F W103番教室

 

講演内容

今年度最後から二番目となる土曜市民セミナーでは、雪解けでお足下の悪い中、66名の方にご参加いただきました。

講師の大原昌宏先生は、大学博物館の成立経緯とその必要性、松村松年先生から始まる北海道大学にまつわる昆虫研究の系譜、総合博物館に所蔵される貴重な昆 虫標本の紹介とご自身の研究の内容、昆虫の応用研究として虫害の防除やバイオミメティクスへの利用の可能性などについてお話ししてくださいました。講演は面白 いエピソードや豊富な写真資料を多数交えながら行われ、わかりやすく気さくな説明に、参加者の皆様も引き込まれてゆく様子が伺えました。

講演では、北海道大学に日本で最初の昆虫学教室が設立され、様々な国と地域から標本を集め研究してきた蓄積があること、現在総合博物館には数多くのタイプ 標本を含め200万点ほどの昆虫標本があり、その所蔵数は現在も増え続けていることなどが語られました。また、先生がご専門にされているエンマムシをとり あげつつ研究者としての活動についてもお話しされました。エンマムシは世界で約4,000種、日本でも約120種が確認されており、主に他の昆虫を捕食す る昆虫で、円山で「アリクイエンマムシ」という種が新種として発見されたこともあります。私たちが目にする図鑑などの情報の裏に、フィールドワークと文 献・標本の調査のために奔走し、綿密に記載してゆく研究者の姿があることが分かりました。

質問の時間には、学術的に描かれる昆虫の図にどういった決まりがあるのかという質問が挙がりました。それに対して先生は、全体図はイラストレーターや画家 の方に依頼し、きちんと特徴をつかむよう希望を伝えつつ仕上げること、スケッチは部位の上下関係や構造が分かるような描き方の決まりがあり、研究者自身が ペンやパソコンのソフトIllustratorを使用して描いていることを説明されました。そのようにして描くことで、ディティールや部分のつくりが写真 よりもわかりやすく伝わるそうです。ほかにも様々な質問が寄せられ、昆虫を研究することの魅力と苦労が伝わってきました。

今回の講演では北海道大学総合博物館の昆虫標本を多くご紹介してくださいました。参加してくださった皆様にもこれを機に、この博物館への関心を新たにし、再び開館される日をより待ち遠しく感じるようになっていただけたのではないかと思います。

(文学部1年 杉谷紬、水産学部1年 小野寺翔太)                                    

   

開演前、受付の合間を縫って司会の練習             公演終了後、大原先生と記念撮影