発表者の事後考察

2015年度卒論ポスター発表会でポスター発表をした学生の事後考察を一部ご紹介します。

私の学科では卒業論文が終わって数か月経ってからのポスター制作だったため、本番直前に中間発表を詰め込んでポスター案を詰めていった。中間発表では他学部の参加者の研究内容を聞くたびに、同じ大学の中で自分が全く知らないような研究が行われていることを体感した。ポスター発表当日も、審査員の先生方や来場者の方々に、学内での講評よりもさらに素朴な疑問を投げかけられた。研究を続けていると、自分が専攻する分野のことを誰もが知っているようについつい思ってしまうが、それが当たり前ではなかったことに気付かせてくれる貴重な機会であった。と同時に、様々な学部を有する総合大学である北大だからこそ、このような機会があるのだとも思った。分野が違っても、相手にわかりやすく伝えるということの難しさ、大切さを改めて感じた2日間だった。あの場で投げかけられた素朴な疑問にも答えられるよう、これからも研究を続けていきたいと思う。

(工学部 環境社会工学科 後藤 裕也)

 

今回の卒論ポスター発表会の全工程を振り返った気持ちを一言で表すなら、つらかった。自分の研究の話がしたいのにその前提となる専門用語の壁があったり、分子生物学という市民の方々には馴染みのないテーマに取り組んでいるなど、挙げればきりがないほど自分にとっては大変だった。特にポスターのデザインについて、他の発表者は写真やイラストを用いて市民の方々の目を惹くような案を用意していたが、分子生物学というテーマの宿命なのか、どうしてもパッと見て難しいイメージを与えてしまう無骨なものになってしまったことが悔やまれる。しかし、逆に言うと、これは分子生物学を学ぶ者として必ず直面する課題であり、先輩方や先生方はこれを乗り越えたからこそ研究室という枠を越えて活躍できているのだと実感した。この実感を4年生という時期に得られたことは何よりの収穫であったといえよう。実力不足で稚拙なポスターではあったが、完成に至るまでに協力してくださった方々、そして見に来てくださった市民の方々に強く感謝したい。

(農学部 応用生命科学科 池田 敬登)

 

ポスターのデザインやレイアウトは時間のない中だったが、数回のエスキースを行うなかで、改良できてとても勉強になった。また、他学部で同じ4年生として卒論を書いている学生と意見交換するのは、貴重な経験になった。卒論ポスター発表会の当日2日間がとても有意義だった。自分の専門外の人に研究の概要を伝えることが難しいこともわかったが、2日間話し続けることによって、話し方のテンポやリズムをつかめたような気がした。また、話し方、話の間の取り方、語気の強め方弱め方等、今まで意識したことのなかった部分を鍛えられたことは大きな収穫だった。結果として、優秀コミュニケーション賞というかたちで評価していただき、努力して2日間発表した話し方の部分に自信がついた。今後もの積極的にポスター発表の機会があれば参加していきたいと思う。

(工学部)

 

卒論ポスター発表会を通して、自分の研究を他分野の方に知っていただくことの面白さを学ぶことができた。当たり前だと思っていた地球に関する基礎知識が、市民の方々に驚きをもって受け入れられており、自分の研究の面白さを再確認することもできた。ポスター一枚で自分の研究成果を伝えなければならないため、難解な事象の説明や、前提知識をどのようにすれば視覚的に分かりやすく映るかを一番に考えて、レイアウトを熟考した。そのポスターを携えて実際に市民の方々に研究内容を説明する際には、難解そうに見える研究内容に対して、市民の方が距離感を感じてしまっていないかを一番に気にかけた。一度「わからない」と思ってしまうと、最後まで「わからない」のまま説明が終わってしまうため、相手の反応を見ながらできる限りひとつひとつ簡潔で明快な言葉を使うようにしながら説明するように心がけた。地球科学について専門にされている方も何人かいらっしゃった。今後の研究・調査における心がけについてご教授いただき、大変勉強になったことも大きな成果である。修士の研究においても、このように市民の方々に説明する機会があれば、ぜひ参加したいと感じた。

(理学部 地球惑星科学科 日下 葵)

 

卒論ポスター発表会では、ポスターを制作できる、他の参加者の研究を知ることができる、自分の研究を多くの方に知っていただけることが魅力だと思う。事前の ミーティングでは、ポスター制作の上で大切なことを教えていただき、多くのアドバイスをいただいたおかげで、最終的にポスターに載せる情報を明確にすることができた。同時に、学部4年生のさまざまな研究内容を知ることで視野が広がり、とても刺激を受けた。発表会初日は、スマートな説明ができずに来場者の方 に長々と話し続けてしまった。しかし、意見をいただきながら繰り返し説明しているうちに、自然と情報を絞って簡潔な説明ができるようになり、自分でも驚い た。2日間連続で聞いてくださった方に「昨日より上手くなった!」とおっしゃっていただけたことがとても嬉しかった。私が研究対象とした「暗渠」をすでに知っている来場者もいれば、初めて知った方もいらっしゃったため、相手によって話す内容が変わり、楽しくもあり難しくもあった。審査員の方には、多くの貴重な意見をいただき、新たな視点で自分の研究を見る必要があることに気が付いた。2日間の日程はなかなかハードだったが、非常に有意義で濃い時間となった。関係者のみなさまにとても優しくしていただき、感謝の気持ちでいっぱいである。ポスターを制作する時期が卒業論文の執筆の時期と重なりなかなか大変だったが、それでもこの卒論ポスター発表会に参加する意義があった。私のこの文章を読んで下さっている学部生の方は、ぜひ参加しましょう!

(農学部 生物環境工学科 玉置 都華)

 

ポスター発表者募集のチラシを見た時点で、私は自分の研究内容を人に正しく伝えられる自信が全くなかった。だが、自分の研究テーマである絶滅危惧植物の保全は、まず多くの人に植物を認知してもらうことが大事だと思い参加を決意した。ポスターは1年間で集めてきたデータをどの順に並べるのか、結果から伝えたいことは何か、と研究を少しずつまとめながら試行錯誤して作成した。数回の中間発表会では他の参加者や先生方から意見をいただき、自分の研究のオリジナリティを前面に出すポスター作りを学ぶことができた。最も苦労したのは「分かりやすく説明する」という点であった。どの程度の知識を相手が持っているのか探りながら、大事な点を逃さず理解してもらうことは容易くなかった。だが、説明後に結果について意見をくださる方もおり、自分の研究が伝わっていたと非常に嬉しく感じた。今回の経験を踏まえて今後も人に伝えながら、幅広い視点を持って物事を考え研究を進めていこうと思う。

(農学部 生物資源科学科 田村 紗彩)

 

卒論ポスター発表会にあたって、自分の発表ではいかに効果的に絵画を利用できるかが、一つの課題と考えていたが、それでも制作の過程では絵画の大きさや文字とのバランスに苦労した。完成版でも、もう少し図版を大きくできたらと感じてしまった。しかし、卒論の内容をポスターで発表するために論文の要点や主張を整理する作業は、卒論をそのまま読み返すのとは違う形で論文を見返すこととなり、自己の論文の主張やオリジナリティの問題を改めて痛感した。発表では、「ナポリの東西の風景が画面内で合成されている」という話が来場者の中では一番興味を持っていただけた部分だった。これは論文の中では話を進めるための前段にあたるものだったので意外だった。自分とは違う分野や環境にいる方が何に関心を持ち、注目するかを知るいい例になったと思う。今回のポスター発表会では、論文を作るだけでは得られない経験が得られたので、今後の研究にも活かしていきたい。

(文学部 人文科学科 町田 義敦)

 

この会に参加できたことはとても貴重な経験だった。まず、自分の論文の中からポスター発表にふさわしい内容を絞り込むことに苦労した。市民の方々や異なった分野を研究する学生にとってもわかりやすい内容から説明できるようポスターの中身を整理していった。そのため、ポスターの内容は来場者の方々に理解していただけたと思うが、論文と順番や内容の濃さが変わってしまったため、まとめや自分の考えをポスターに十分に反映することができなかった。審査員の方からもこの点についてご指摘を頂いたので、今後こういった発表の場に参加する際には論点が相手に素早く・的確に伝わるように工夫することを意識していきたい。次に、来場者の方々とのお話の中で歴史的建造物の保存・活用に関して様々な意見を聞くことができたこともこの会で得たことの一つだった。今まで自分が気づかなかった視点から保存・活用をとらえている方々の意見を今後の研究に役立てていきたい。

(工学部 環境社会工学科 柳原 千絵子)

 

今回のポスター発表会を通して、人に何かを伝えたいと思う時には、最初の段階で興味を持って頂くことが大切であると強く感じた。私は植物を見る楽しさ・面白さを少しでも多くの方に伝えられたら、という思いで今回の発表に参加した。しかし、人と話すことはあまり得意ではなく、話はじめは少し緊張してしまい、話の後半になってやっとスムーズに言葉が出てくるという調子だった。話のはじめに興味を持って頂けないと、その後に話に引き込んでいくことは難しい。相手を引き込む話し方等のコミュニケーション能力については、自分にとって一番の課題であると思う。それでも、自分が取り組んだ研究の話を通して、さまざまな方と植物の話ができた2日間はとても楽しく、貴重な時間であった。今回学んだことを活かして、今後もなるべく多く発表の場を経験して行きたい。そして、研究の発表を通して、少しでも多くの方に植物の魅力を伝えられたらと思う。

(農学部 森林科学科 和久井 彬実)