2019年度卒論ポスター発表会 発表者・運営スタッフの事後考察

2020229日(土)・3月1日(日)の2日間で開催を予定していた2019年度卒論ポスター発表会は、コロナウイルスの感染拡大の状況を考慮し中止となりました。
卒論ポスター発表会は中止となりましたが、ポスター発表者として文・理・工・農・水産の5つの学部から10名、発表会の運営には文学部・水産学部・理学部から3名が参加しておりました。
中間発表会で互いに議論を重ねてポスターの内容・デザインを改訂し、リハーサルで発表方法を具体的に学んだ発表者達、そして発表会のポスター・プログラム制作など運営を担った学生達の考察レポートを掲載致します。

 

発表者

本発表会には分野外の方々に自分の研究をわかりやすく伝えるためにはどのような工夫が必要なのかを学ぶために参加をした。本番に向けた中間発表会では普段の研究室で特に気にせず使っている専門用語が、実は専門外の方々からすると真新しい用語だということを自分の発表や他参加者の発表に対し意見交換をする際に知ることができた。この議論を通して、聞き馴染みのない専門用語を如何にして簡潔に説明する難しさを体感した。また、同じ内容を伝えようとする際に、図や構成を工夫することによって相手の理解や印象の持たれ方が大きく変わることがわかった。つまり、伝えたい相手によって伝え方も大きく変わることがわかった。

また、研究を発表するに至るまで様々な方々の支えがあって研究が成り立っていることが学べたのがとても大きな成果であった。

本番の発表会の開催が中止になってしまったのはとても残念ではあるが、発表までの過程を通して多くのことを学ぶことができて本会に参加してとても良かったと感じている。

近藤 誠(理学部地球惑星科学科気象学研究室)

 

博物館来館者向けの卒論ポスターを作成する上で印象深かった点は、市民の方の知識量を想定して分かりやすくポスターを作る必要があったことである。学科内の人に向けたポスターは何度か作成したことがあったが、自分の専門分野では当たり前とされる前提条件や専門用語が市民の方には分からないことがあるため、説明がより難しく感じた。分かりやすい説明を心がけても、自分では考えもしなかったところで説明が不十分だったことがあり、中間発表会で様々な分野の方に意見をもらうことができたのは貴重な経験になった。口頭での説明は私自身苦手としているところがあり反省する点が多いが、練習によりいくらか改善できることが分かったため、これから練習を重ねていきたいと思った。また、中間発表会でほかの参加者のポスター案を見たことはレイアウトの点で非常に参考になったため、今後のポスター作りに活かしたいと思った。

今回の発表会は中止になってしまったが、専門外の人と研究について話す機会はほとんどなかったため、それまでの過程で得られたものはとても多く、参加して良かったと感じた。

最後になったが、先生方をはじめ運営スタッフの皆様に深く感謝を申し上げる。

齊藤 優里(理学部地球惑星科学科)

 

学会などの専門分野でのポスター発表では、要点をわかりやすく視覚的に興味を引くものが良いと思うが、今回のポスター発表は市民の方や学内の他分野の方、さらには同じ専門の方など幅広い方を対象としている。普段学生がどのように研究しているのかを伝えたり、より一般的にわかりやすい発表が求められるため、正確で簡潔な表現は大事だが、わかりやすく平易な表現にすること、また必要な予備知識となり得る基礎的な内容についての図の挿入や説明を心掛けた。そのため、ポスターとしては情報量が多くあまり良いものとは言えなかったと思われるが、教育普及の視点では市民に研究者の分析がブラックボックスにならないように説明する必要があると思っているため、限られた紙面に理解の助けとなる多くの情報を盛り込めたと思う。また、自分のポスターは、中間発表などで指摘を受けたように、新しい分野であり、さらに数式が出てくるため、それだけで避けられないように、より視覚的に理解できる内容になるよう気を付けた。実際に発表する機会は残念ながらなかったが、誰に向けてどのような内容を伝えるか、説明のみでも十分かなどの点を、市民の目線で考える機会を得られたのは、大変貴重な体験であった。

酒井 涼香(水産学部)

 

大学で専門的に学んでいることを市民の方々に発信する活動は、学部3年生から試行錯誤しているテーマの一つである。今回は、ポスター1枚と口頭説明のみで自分の研究の工程や成果を発信しなければならず、悩ましいと同時に、工夫の甲斐がある部分だと考えた。

他学部の先生や学生と行った準備段階では、自分の中で整理できていないことは他の人に伝わらず、整理できていることも説明の仕方によっては理解されないことがあり、自分の研究を客観的に見つめ直すことができた。また、お互いにポスターデザインや口頭説明の方法を指摘することで、それぞれの研究内容やモノの見方・捉え方・考え方を知り、それらを自分のポスターに反映させることができた。

コロナウイルスにより、本番で発信する機会はなくなったが、参加しなければ出会わなかった人達や研究テーマがあった。それらを、これからの修士学生として行う様々な取り組みに繋げていきたいと思っている。

佐々木 悠貴(工学部環境社会工学科建築都市コース)

 

今回は残念ながら発表会が中止となってしまったが、この企画に参加できたことで研究発表に関する自分の考え方や能力が洗練された実感があり、貴重な経験となった。他の参加者や先生方の意見を受け取り、改良を重ねる中で、相手を想定した研究発表を心がけら れるようになったと感じる。はじめのうちは研究内容をまとめることばかりに気を取られていたが、次第にうまく内容を伝えられるような言葉選びや、関心を向けてもらえるような話題の振り方を考慮するようになったことで、聴いてくれる相手に対して親切な発表を実現できたように思う。また主観で評価することが難しい、ポスターの見やすさについて、多くの方の意見に触れられたことも今回得られた貴重な学びの一つであった。色使いやレイアウトに関して、他の方の良い点を取り入れ、反省点を共有することを繰り返す中で、多くの人にとって見やすいポスターを作るためのノウハウが身についていったように感じる。 今回得られた考え方や能力は、私にとって大きな財産となった。共に準備をしてきた全ての方々に感謝したい。

高田 健太郎(理学部地球惑星科学科)

 

卒論に関わり始めてから1年間、自分の専門外の方々がいる場で発表するはじめての機会として卒論ポスター発表会に参加させていただき、他分野の方々や市民に研究内容を「伝える」難しさを感じた。「伝える」ために具体的に意識した点、新たに気づいた点を以下にまとめた。

①研究内容:専門外の方々にも興味を持ってもらうためには、研究のオリジナリティ(既往研究になく当研究にあるものは何か)、意義(当研究で明らかになったことが、社会にどのような良い影響があるのか)を把握することが重要だと感じた。自分の研究の位置付けを理解してもらうことによって身近に感じ、研究の分析の章までついてきてもらうためである。

②ポスターデザイン:研究の構成が見やすいように、少し強めに配色するべきだと感じた。原色系の色を効果的に使ったり、同じ内容には同じ色をあてたりするなど、遠くから見てもはっきり伝わることを意識するべきだった。特に、発表会の会場が、照明やパネルの背景色により全体的に薄い茶色が基調となっていたにも関わらず、ポスターの基本色を薄い茶色にしてしまったのは失敗だった。

③発表時の振る舞い:これは卒論ポスター発表会に関わらず全ての発表時に該当するが、声、体の動き、視聴者とのやりとりが重要だと感じた。声に関して、大きな声ではっきり話すのはもちろん、間と抑揚を以って緩急をつけるのが重要だと感じた。また体の動きに関して、着目点を図示しつつ、体の向きはなるべく視聴者に向け、アイコンタクトの意識についてもご指摘をいただいた。さらに、これは新鮮なアドバイスだったが、ときどき視聴者に質問を投げかけるなどして視聴者とのやりとりも欠かさないという点も重要だと感じた。

卒論ポスター発表会に参加して、上記のような「伝える」のに必要なポイントを認識することができたのは大きな収穫だった。これだけでなく、他学部の研究発表を聴き、視野を広げることができたのもとても良かった。研究方法と意義を分かりやすく結びつけた画期的なポスターもあった。

今後学外での発表が増えるが、発表物へのこだわり、発表時の振る舞いを特に意識して取り組んでいきたい。

野田 暁布(工学部環境社会工学科)

 

博物館における市民向けのポスター発表(およびその準備)を経験し、その難しさと意義について感じたことを基に考察したい。今回の最重要課題として、より多くの人によりわかりやすい説明が求められた。そのため、内容を省略し情報の劣化をさせることなく聞き手に伝えるための最小要素を見極め可能な限り図示する工夫が必要であった。専門性の高い内容は図案を中心に書き換え、より視覚情報に訴えかける構成に直す作業は試行錯誤の連続であった。ここで、他の学部の参加者からの忌憚なき意見が非常に参考になった。専門的ではあるが伝えるべき点を押さえつつ複雑で理解しにくい点にどの様に改良を加えていくべきなのかについて活発に議論できたと言える。

博物館では特に展示物の研究成果を老若男女問わず広める責務がある。専門家と非専門家を繋ぐ媒体として機能するためには今回の企画にみられる努力が必要であることは言うまでもない。専門家が専門家のコミュニティで終わらないための工夫や努力について得るものがあったと言える。

福田 祐生(理学部地球惑星科学科)

 

ことばは日常で当たり前に使われるもので普段はあまり意識を向けることのないものだが、ふと立ち止まって考えてみると思いもよらない発見が得られることもある。たとえば「時の流れ」という表現から私たちが「時間」を「川」のような流体に見立ててとらえていることがわかる。このように、ことばについて考えることは私たちの認知を解き明かす鍵になるのである。私は自身の研究を例にとってこのようなことばの面白さを伝えるために卒論ポスター発表会に参加した。

3回の中間発表会では教員の方々や他の発表者に向けて研究を平易に説明したり発表に適したポスターを作成したりした。伝えることの難しさを感じたが、いただいた意見をもとに自身の研究を改めて見つめ直すことかできた。同時に、面白いとコメントをいただいた時にはやりがいを覚えた。惜しくも本番の発表の機会はなかったが、だからこそ今後この経験を積極的に活かして研究に励みたい。

松村 大寿(文学部人文科学科)

 

自分の研究の面白さを少しでも他の人に知ってもらいたいという思いと自分の発信力を磨きたいという思いからこの卒論ポスター発表に参加した。この発表は自分にとって初めての発表の機会であった。ポスターの制作にあたり、どうやったら他の人に分かりやすいデザインになるか・どうやったら自分が説明しやすいように作れるかといった事を他分野の人たちと議論して制作するのはとても有意義な時間であった。最初に考案したポスター案が改良を重ねて良くなっていくのが楽しかった。また、同学年の文理様々な他分野の人たちが同じ大学でこんなにも様々な研究をしているという事を再認識させられる場であった。

発表会は残念ながら中止になってしまったが、今回得た技術は今後必ず役に立つと思うしそれを駆使して今後の研究を少しでも多くの人に伝えていき、一人でも多くの人に面白いと思ってもらえるように研究活動に励んでいきたいと思う。

的場 竜毅(農学部生物資源科学科)

 

運営スタッフ

企画運営をするのは初めてではなく、そして惜しくも実施は叶わなかったが、それでも様々な点において勉強になった。

企画運営はチームワークと、そしてリハーサルが重要であるということ。それが全体を通して痛感させられたことであった。

まずチームワークについて。およそ1月から準備を始めたが、2月末の発表会に向けて各々の予定をすり合わせ話し合いを重ねていく事で一人では判断・解決しにくい問題に対して前向きに取り組むことができ、より安定した準備をすることを可能にした。

またリハーサルは、模擬的に本番の流れを確認することができ、それにより実際にやってみるまで気が付くことができなかった改善点の発見をすることができた。特に難しかったことが、当日の発表会前の流れ等を自力で想像することであった。運営の他のメンバーや先生方に指摘されたことで当日来てくださった来館者の方、審査員の方、そして発表者の方に対してどのような説明やお願いをすべきかより具体的にイメージできるようになり、どんな工夫が必要か考えが及ぶようになった点において、リハーサルは極めて重大な意義があったと思う。

中間発表会では、発表者の方々のポスターに対する熱意や創意工夫、回数を経るごとにより良いものに変わっていく過程を見て、より一層努めようと思われた。

今回惜しくも発表会は実施されなかったが、それでも準備を始めて2か月、リハーサルの日の夜9時まで一緒に運営したメンバーの方、忙しいなか快く協力して下さった発表者の方々、審査員の方々、そして多大なサポート・助言をして下さり断腸の思いで発表会中止を決断された先生方と研究支援推進員の方の協力の下でそこまでたどり着けたことは、自分にとって大きな財産となると思う。協力して下さったすべての方に感謝申し上げたい。

長田 幸子(水産学部海洋資源科学科2年)

 

今回の卒論ポスター発表会(以下、卒ポス)で私は広報ポスターの作成をメインに活動した。広報ポスターは学内のみならず、札幌市内でイベントの告知をするものになる。そのため、今回はデザインをシンプルにすること、なおかつ学外の人たちが卒ポスに対する具体的なイメージを持ってもらえるようなポスター作りを目指した。

作成の中で何度も指摘やアドバイスを、先生をはじめとした人たちからいただきながら、修正や検討を繰り返した。そうしたフィードバックを通して、広報を行うにあたって私自身が持ち得なかった視点を得ることができた。

また、中間発表会でも普段経験できないことや専門外の学問について触れることのできるかけがえのない時間であったと思った。ポスターを展示する4年生方が途中までの出来を報告しあい、相互にアドバイスしたり、専門外の視点をぶつけ合ったりするこの中間発表会では、普段は文学部で芸術史や哲学に触れている私からすれば、みたこともない世界が広がっていた。

総合大学の良さは、多くの学部が理文を問わずに大学の名の下にあることである。しかし、普段の学生生活において他学部の人との親交を交えたりする機会は専門を学ぶうちに減少していく。ましてや自分のしている研究について他学部履修者や学外の人に詳しく、具体的に話す機会となるとほとんどないと言っても過言ではないように思われる。卒ポスは、発表会そのものだけでなく、準備の段階でも来館者よりも濃く、発表者の内容に深く触れることができるのが魅力であると今回の準備期間を通して思った。

上村 麻里恵(文学部芸術学研究室2年)

 

卒論ポスター発表会は、今まで興味を持ってはいたが足を運ぶことができずにいたイベントであった。この発表会の運営スタッフは全員が初めての参加で、過去の資料を参考にしながらの探り探りの活動となった。

発表会の運営を通し、特にメンバー間での動きの把握の重要性を感じた。チームでの活動の長所はメンバー間でフォローし合えることである。自分が編集を担当したリーフレットに関しても、アイデアや原稿集め、製本など多く助けてもらった。学業の都合などで予定通りに進まないこともある中で、自分が困ったときに助けを求められるように、また助けられるばかりでなく他のメンバーが困っているときに助けられるように、お互いに今何をしているのかという動きを細かく報告し合って知っておくことができれば、チームで活動することの良さをより発揮できると思う。対面で話し合う機会を多く持てたことは、仕事を進める上で助けとなった。

また、ポスターの中間発表会にも数回参加した。発表では例えや分かりやすい言葉を使って説明をしてもらい、どれも初めて触れる分野であったがとても引きこまれた。発表者がいきいきと発表する姿と、回を重ねるごとにポスターがより見やすいレイアウトや伝えたいことを強調したデザインに変化していく様子が心に残った。

発表会が中止になってしまったことは残念であるが、運営の経験で得たものを今後に活かしていきたい。

小林 瑞季(理学部化学科3年 )

 

初回ミーティング

中間発表会

最終リハーサル

会場設営