【報告】「北大古生物学の巨人たち」展 展示解説学生の最終考察

2016年度冬季企画展示「北大古生物学の巨人たち」では、ミュージアムマイスター認定コース「学生参加プロジェクト」の一環として、北大生4名が展示解説に取り組みました。プロジェクトを終えた学生がまとめた最終考察レポートをご紹介します。

 

2月1日から8回に亘り、展示解説に携わっての考察をまとめてみたい。日常に於いては大学で指導を受けるのが主だが、今回取り組んだ展示解説では反対の立場で相手に対して正しい情報を伝えることにある。一部屋の企画展示物の説明を行った。先ず展示物を十分理解し知識を我が物にしなければならない。その点では図録『北大古生物の巨人たち』がバイブルになった。入館者の質問は多岐にわたり、古生物に関しての知識の必要性を感じた。展示の解説パネルが伝える基本的な情報に加え、図録を読み直してより深い理解に努めた。また、図書館で『恐竜学入門』、『恐竜の世界』、『ワニと恐竜の共存』等を借りて基本的な知識を深めた。これにより思いがけない恐竜についての勉強ができたのは望外の収穫だった。

いままでに数多くの諸外国を含めて博物館、美術館を訪ねたがそれぞれの館のそれぞれの特徴と展示意志があり、深く理解すればする程興味が深くなる。北大総合博物館はまさに

北大の歴史と共にあり150年の深い伝統を感じる場所になっている。今回のニッポノサウルスを中心とした展示は5代の教授陣の業績と共にノーベル賞の鈴木先生の展示室と同じ位、北大にとって誇れる部屋になっていると感じた。

展示解説を通して感じた事はニッポノサウルスの展示でカーテンが左右逆にしたらと思った。そうすれば頭が左に陳列してあるので理解し易い。デスモスチルスの全体骨格がある3階の場所を地図つきで説明しておくのも一案だと思った。恐竜の足跡は説明を付ければより興味が増すと思う。発掘しているハドロサウルスがどの位の大きさが画面から想像するのは難しいので比較の対象になるかもしれない。3階の恐竜展示室の床に足跡をペイントしても良いかもしれない。

将来、文部省が予算を増やしてくれるなら、大英博物館やルーブル美術館等にあるような無線機の貸し出しができたらいいと思う。それまでは現在行っている短期間での展示室を決めての学生やボランティアの展示案内をより多く企画して欲しいと思う。博物館を支えるボランティアの方が想像以上におられるのを知り、心強く感じた。

博物館の持っている膨大な資料の整理、分類、清掃作業が土台になっていることを知った。今後は機会を見つけて出来るだけ作業に参加してゆきたい。

(大学院文学研究科 地域システム科学講座 修士2年 近藤 喜十郎)

 

私は北海道大学総合博物館で行われた企画展「北大古生物学の巨人たち」に学生スタッフとして参加した。全8回の展示解説スタッフとしての活動を踏まえ博物館の意義について考えていきたい。

まず、博物館が研究の場であることはいうまでもない。今回の企画展でも数多く展示されていたタイプ標本などはまさにその一端を担っている。先人たちが残した学術的な資料は博物館という場所で保管され、研究されているのである。また、ニッポノサウルスの足に残る補強痕は当時の研究手法や保存に関する考え方を知るための資料でもある。

さらに、博物館はアカデミックな世界と市民の方々が交流することができる数少ない場所なのである。「巨人たち」がいうように研究者には研究成果を世に還元する義務がある。しかし、そういった機会はなかなかあるものではない。だからこそ博物館という場所で世間にその成果を知らしめる良い機会となるのである。そのためには、我々学生なども一体となっていかにわかりやすく、いかに多くの人に我々の活動を知らせることができるかを考え続ける必要があると考える。

(総合教育部(理系)1年 福田 祐生)

 

私が「北大古生物学の巨人たち」の展示解説プロジェクトに参加することを決めた理由は、夏季の「ランの王国」で学び、考えたことをさらに深め、また、新たな実践をしてみたいと考えたからである。特に新たな取り組みとして考えていた英語対応については、私の初回対応時が外国人来場者のピークになってしまったことで、満足いくものにはならなかった。しかし、どのような説明の言葉を用意しておくとよいのかが掴めたことは収穫であった。

当企画展示で展示されている化石標本のほとんどが「タイプ標本」とよばれる、学術的に非常に貴重なものであった。最初はその貴重さを伝えようとしたが、来場者の興味に応じて解説したり会話したりする間に、学術的な貴重さを伝えることは“+α”でよいのだと気付かされた。来場者それぞれに、化石を見て「凄い」と感じることがあったと思う。それは、化石が長い時間をかけても無くならなかったことや、先人たちの努力により発掘されたこと、他には単純にその大きさに対してなどである。来場者が感じた様々な「凄い」の一つに、「こんな貴重な化石を観られて凄いね」が含まれていれば嬉しい。

(理学部 生物科学科2年 森本 智郎)

 

今回の古生物学の展示解説は私にとって、初めての専門外の分野での解説だった。私の専門は植物であるため、正しく解説ができるのか、少し不安に感じていた。初めは「解説をする」ことにこだわりすぎて、来館者の方と上手くコミュニケーションが取れなかったが、ランの王国展で学んだ、「時には聞き手になることも大切」ということを思い出し、自分よりも古生物に詳しそうな来館者の対応をする際は、相手の話を聞くことを心掛けた。聞き手に回ることで、無理せず来館者の方と向き合うことができた。

今回の企画展は、恐竜が大好きで見に来たという方がとても多かった。私は植物が大好きで研究をしているが、分野が違っても何か大好きなものがあるという点で共感することができた。相手に共感すると、自然に会話ができるようになり、次の解説につながるようなお話をたくさん聞くことができた。8回の解説を通して、来館者の方と会話する際の「共感」の重要性を実感した。

展示解説をすることで、今まで学んだことのない古生物学という分野に触れることができ、普段関わることのない方との交流をたくさん経験できた。今回学んだことを、何らかの形で自分の研究にも活かしていきたい。

(大学院環境科学院 生物圏科学専攻 修士1年 和久井 彬実)