活動報告 「ランの王国」展 展示解説学生の最終考察

ミュージアムマイスター認定コースの一環として、2016年度夏季企画展示「ランの王国」で展示解説に取り組んだ3名の学生の最終考察レポートをご紹介します。

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今回のプロジェクトを通して、展示解説員は、一方的に知識を伝えるだけではなく、来館者から語られることを受け止める“聞き手”としての役割も重要であると感じた。通常、人々が博物館を見学するとき、受動的に情報を受け取るばかりになることがほとんどである。しかし、静かに見学する人々に話しかけてみると、展示への感想や疑問、これまでの思い出などを多くの方が嬉しそうに語ってくださった。展示を見るとき、人々は多かれ少なかれ、なにかしらの語りたいことを抱いているのである。そこで、それらの語りを引き出し、一緒に共感したり考えたりする役割を解説員が担うことで、博物館に双方向的な対話の機会を作ることができる。そのような対話の機会は、人々の展示への理解や関心を深めるだけでなく、博物館を訪れる体験をより意義深いものとするのではないだろうか。今回行った多種多様な方々との交流は、多くの学びがあり、私にとっても有意義な時間だった。
(理学院自然史科学専攻 修士1年 増田彩乃)

私が『企画展示「ランの王国」展示解説プロジェクト』に参加した理由は、私が植物学を専攻したいと考えいるからということと、博物館の展示解説をしてみたいということであった。このプロジェクトに参加する前は、「展示解説」というと「展示内容全体を来場者に説明して歩く」というイメージであった。しかし、そのようなイメージは、第一回目の最初の10分で崩れた。その理由は、端的に言えば、展示の見方、楽しみ方は人それぞれであって、非常な多様性があるため、私が介入してどうこうするべきものではないと感じたからである。
その後、私はこのプロジェクトで展示解説をするにあたっての自分なりのテーマを定めた。それは「来場者と展示の一期一会が、より良い記憶となるようなお手伝いをする」ということである。企画展示の会期中に、何度も足を運ぶ来館者はそう多くはないだろう。であれば、その日そのときに見た展示が、その来館者にとっての「ランの王国」となるのである。それならば、来館者がその日そのときに見た展示が、その来館者にとって、より豊かで思い出深い展示になるような、介添えをしようと考えたのである。思い出話を聞かせていただいた方、展示解説を聞いていただいた方の、企画展示室を出るときの満足そうな笑顔や、「ありがとう」、「楽しかった」というお言葉は、何より嬉しいものであった。
博物館のバリアフリーについては、現場で初めて気づかされることが多かった。設備等のハード面と人の手によるソフト面の両方の視点から、博物館や展示のデザインを壊さないような着地点をこれからも考えていきたい。
最後に、「ランの王国」展示解説を通じて、植物の一群であるラン科の多様化戦略をじっくりと学ぶことができた。植物学を志す者として、植物の生き様の一端に触れることができた非常に良い機会であった。
(理学部 生物科学科 2年 森本智郎)

私は植物が大好きで、専門も植物生態であるため、博物館がランの企画展をすると知った時から、是非何らかの形で関わりたいと思っていた。今年の2月末の卒論ポスター発表会にも参加したため、市民の方々向けの解説には慣れているつもりでいたが、自分の研究について解説した時とは違って、初めのうちは自分の解説が正しいのかあまり自信が持てなかった。しかし、来館者の方が「そうなんだ、面白い!」「植物って賢いんですね!」と目を輝かせてくださる瞬間が本当に嬉しく、多くの方に植物の面白さを知っていただきたい一心で期間中ランについて一生懸命勉強した。

解説をしていく中で気付いたことは、解説員は解説をすることだけが仕事ではなく、時に聞き手になって来館者の方とコミュニケーションをとることも重要である、ということである。展示を見にいらっしゃる方の中には、私よりもランについて詳しい方、栽培経験の豊富な方も多く、その方々の話を聞くことで私も勉強させて頂いたし、会話をすることで相手方にもより楽しい時間を過ごして頂けたのではないかと思う。8回の解説はとても楽しく、良い経験になったと。機会があれば、今度は全く専門外の分野での解説に挑戦してみたい。
(環境科学院 修士1年 和久井彬実)

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