【4月8日開催】 バイオミメティクス市民セミナー (第76回) – 『近代国家日本とバイオミメティクス』


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リバースエンジニアリングという言葉をご存知でしょうか。逆行工学とか分解工学と訳される模倣の手法です。辺境の孤島である『この国のかたち』は、模倣によって造られたと言っても過言ではありません。司馬遼太郎風に言えば、明治維新における急速な近代化、奇跡とも言える戦後復興は、模倣によって多様な価値観を柔軟かつ寛容に受け入れた日本人の“無思想の思想”によるのです。さらに寺田寅彦の慧眼をすれば、“環海の島嶼に特有の天然の無常さ”によって醸された『日本人の自然観』が背景にあります。

フランスの社会学者ガブリエル・タルドは『模倣の法則』において、人間の社会活動はすべからく模倣の産物であると説きました。オーデッド・シェンカーの『コピーキャット 模倣者こそがイノベーションを起こす』では、“模倣のプロセスは、体系的でありながら、さまざまな要素を融合させる創造的なものでなければならない”としています。サルマネでは、いけないのです。

模倣によって生物が進化することは、ミラーニューロンの発見で明らかにされました。進化適応は壮大なるコンビナトリアル・ケミストリーであり、生物多様性は生物の生き残り戦略の結果であり、思いのほかにレジリエントでロバストネスがあり持続可能なのです。それを可能としたのは、どこにでもあるユビキタス元素を使い、再生可能エネルギーを用いた自己組織化プロセスによる「モノづくり」であり、産業革命以来の人間の技術体系とは作動原理や製造プロセスのパラダイムが異なっているのです。生物学者のフランソワ・ジャコブは、“生物進化はブリコラージュだ”と言っています。ブリコラージュとは“あり合わせの道具や材料で物を作ること”だと説いた人類学者クロード・レヴィ=ストロースは、ブリコラージュである野生(未開、前近代化)のモノづくりと近代との対比を通じて、日本人が“過去の伝統と現在の革新の間の得がたい均衡”を持ち続けることを期待していました。

急速なアジアの近代化は、“日本型モノづくり”の閉塞的状況をもたらしました。そして、地球の環境収容力を超えた人間活動は、“持続可能な開発目標(SDGs)”を掲げざるを得ない状況をもたらしています。さらに、シンギュラリティーは、人間の存在意義そのものを問うているのです。“歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として”は、カール・マルクスの名言です。もはや人間を“模倣”するのは止めて、いっそのこと、生物を真似てみてはどうでしょう。

バイオミメティクスは、究極のリバースエンジニアリングなのです。北海道命名150年、今回の市民セミナーでは、近代化がもたらした光と影に思いを馳せながら、改めてバイオミメティクスの意義を問い直してみたいと思います。