【研究 古生物】 北米大陸初の羽毛恐竜の発見と鳥類の翼の起源を解明

研究論文名:Feathered non-avian dinosaurs from North America provide insight into wing origins.

(北米から発見された非鳥類型羽毛恐竜が与える翼の起源に関する見識)

研究成果のポイント

・ 北米大陸初の羽毛恐竜の発見。

・ 翼を持つ最も原始的な恐竜の発見。

・ 原始的な獣脚類における翼の成長。

・ 翼の起源の解明。

著者:氏名(所属)ダーラ・ザレニトスキー(カナダ・カルガリー大学),フランソワ・テェリエン(王立ティレル古生物学博物館),グレゴリー・エリクソン(米国・フロリダ州立大学),クリストファー・デブール(カナダ・カルガリー大学),小林快次(北海道大学総合博物館准教授),デイヴィッド・エバース(カナダ・王立ティレル古生物学博物館),フランク・ハドフィールド(カナダ・パルコプレップ株式会社)

公表雑誌:Science

公表日:米国東部時間:2012 年10 月26 日

研究概要:1995 年から2009 年にかけて,カナダ・アルバータ州南部に露出するホースシューキャニオン層とダイノソーパーク層(ともに白亜紀後期カンパニア期:約7000万年前)から,羽毛の痕が残されたオルニトミムスという恐竜が3体発見されました。これらの標本は,アルバータ州南部の町,ドラムヘーラーにある王立ティレル古生物学博物館(Royal Tyrrell Museum of Palaeotology)で保管されていいます。

オルニトミムスは,ティラノサウルスに代表される獣脚類というグループに属し,鳥類起源の解明において重要な恐竜です。また,近年,多くの恐竜に羽毛があることが報告されており,鳥類は恐竜から進化したことが明らかになっています。しかし,鳥類がどのようにして翼を持ったのかという理由は不明のままでした。

今回研究の対象になったオルニトミムス3体の標本のうち2体は,まるでミイラ化されたような化石であり,羽毛の痕跡が,体の周りに保存されていました。この2体は,それぞれ体長が1.5m と3.4mと推測され,年齢は小さい方が1才未満と生まれて間もない個体で,もう一体は少なくとも5才にはなっており,成長期を過ぎたあたりだと考えられています。また,さらに大きな3体目の個体の腕には,羽毛が生えていた痕跡がありました。この個体は,体長3.6m ほどで,年齢も10才と,成長期を過ぎた成体であったことがわかりました。

オルニトミムスの発見後,カナダ・カルガリー大学のダーラ・ザレトニスキー博士と王立ティレル古生物学博物館のフランソワ・テェルリン博士を筆頭に,北海道大学総合博物館の小林快次准教授とアメリカ(フロリダ州立大学)の共同研究によって,これらの化石が,北米初の羽毛恐竜であると確認され,翼の起源の解明につながりました。


幼体と成体のオルニトミムス (写真:Julius Csotonyi氏提供)