【活動報告】2012年2月4(土)〜5日(日)岩石パラタクソノミスト養成講座(上級)

岩石パラタクソノミスト養成講座(上級)

日 時:2012年2月4(土)〜5日(日)10:00〜16:30

場 所:北大総合博物館・共同研究室

講 師:在田一則(総合博物館資料部研究員)

          鳥本准司(総合博物館資料部研究生)

参加人数:5名

目的:岩石の偏光顕微鏡観察用薄片の作成方法を学び、作成実習を行う。火成岩(かこう岩・はんれい岩)の偏光顕微鏡観察を行い、主要な造岩鉱物の特徴を理解するとともに、鉱物の晶出順序・反応関係を推定する。偏光顕微鏡により変成岩の変形組織を観察し、その形成過程について学ぶ。


スケジュール

4(土)

10:00−10:10 開講式

10:10−12:00 講義(岩石薄片作製の手順)・実習(岩石薄片の作製)

12:00−13:00 昼食

13:00−14:00 講義(マグマのでき方とマグマの結晶分別作用)

14:00−16:30 実習(かこう岩・はんれい岩の偏光顕微鏡観察)

5日(日)

10:00−12:00 実習(岩石薄片作製の続き) 

12:00−13:00 昼食

13:00−14:00 講義(岩石の変形構造)

14:00−16:10 岩石薄片(変形岩)の偏光顕微鏡観察と変形センスの推定

16:10−16:30 閉講式(アンケート作成・修了証の授与)


1日目

<午前>

岩石薄片の作製手順の説明の後、1階の薄片製作室で薄片作製実習を行いました。一部の方は、持参した岩石を使用していました。参加者のほとんどは、岩石を切断するダイヤモンドカッター(丸鋸)の使用や岩石表面を研磨剤と回転研磨板・ガラス研磨板で磨り減らして磨くことは初めての経験で、最初は皆さんかなり緊張し、おっかなびっくりの様子でした。岩石を薄片の大きさに切断し、片面を3種類の研磨剤で磨き、それを接着剤でスライドグラスに貼付けるまでを行いました。

<午後>

最初の講義は、中級ではあまり説明をしなかった、元になる玄武岩質マグマからどのようにして、はんれい岩(塩基性岩)からかこう岩(酸性岩)までのいろいろな岩石ができるか(この作用が結晶分化作用です)についてでした。その後、実際のかこう岩やはんれい岩の薄片を偏光顕微鏡で観察していただきました。中級で行った主要な造岩鉱物の特徴や識別方法の理解の復習のほか、新たに鉱物どうしの接触関係を観察して、マグマから鉱物が晶出する順序を推定することもしました。
   

2日目

<午前>

前日にスライドグラスに接着した岩石試料をダイヤモンドカッターで薄く切断し、もう一方の面の研磨とカバーグラスの接着です。最初は荒い研磨剤を使用し、ある程度まで薄くしたら、細かい研磨剤とガラス研磨板による微妙な研磨です。目的は厚さ30ミクロン(0.03mm)です。油断すると磨り減ってなくなってしまうので、ときどき顕微鏡でチェックをしながらの作業です。余裕のある方にはダイヤモンドペーストによる研磨まで行ってもらいました。まわりがだいぶ磨り減り面積が狭くなった方もいらっしゃいましたが、皆さんほぼ完成しました。

<午後>

午後の講義は変成岩の変形構造についてです。液体であるマグマから晶出する火成岩とは異なり、変成岩は一般に地下の応力も加わった状態での鉱物どうしの反応(固体反応)ですので、応力によるいろいろは変形構造が見られます。逆に、その構造により岩石に加わった力の性質や方向を推定できます。このようなことの説明です。地震は地下深部における岩石の破壊現象ですので、地震破壊の様子が岩石の変形構造に残っていることがあります。  

午後の実験はそのような変成岩の変形構造の観察です。火成岩にはほとんど含まれていない、変成岩に特徴的な鉱物についても見ていただきました。いろいろな変形構造の薄片が揃っているわけではありませんので、各種の変形構造を示す薄片写真を使って、どのような力が加わってできたかを推定してもらうことをクイズ形式で行いました。

  講義・実習を通じて、偏光顕微鏡観察によって岩石を作っている鉱物の種類や性質がわかるばかりでなく、岩石の構造を観察することによって、鉱物がマグマから晶出する順番や鉱物どうしの反応の推定、さらに岩石に加わった応力の方向など岩石の形成過程も推定できるということを理解していただけたかと思います。

アンケートによると、薄片作製実習での、日頃行ったことのないダイヤモンドカッターによる岩石切断や研磨機器の使用に、皆さん満足されていたようです。