【活動報告】2012年12月8日(土)〜9日(日)岩石パラタクソノミスト養成講座(上級)

岩石パラタクソノミスト養成講座(上級)

日 時:2012年12月8日(土)〜9日(日) 10:00〜16:30

場 所:北海道大学総合博物館・共同研究室、薄片作成室

講 師:在田一則(北海道大学総合博物館)

          島本准司(北海道大学総合博物館)

参加人数:5名

スケジュール

8日(土)

10:00〜10:10 開講式

10:10〜12:00 講義(岩石薄片作製の手順)・実習(岩石薄片の作製実習)

12:00〜13:00 昼食

13:00〜14:30 講義(マグマのでき方とマグマの結晶分別作用)

14:30〜16:30 実習(火成岩の偏光顕微鏡観察)

9日(日)

10:00〜12:00 実習(岩石薄片作製実習の続き) 、講義(変成岩の変形)

12:00〜13:00 昼食

13:00〜14:30 講義(岩石の変形構造)

14:30〜16:10 実習(変成岩の偏光顕微鏡観察と変形センスの推定)

16:10〜16:30 閉講式(アンケート作成・修了証の授与)

講義内容

  パラタクソノミスト講座(鉱床上級)では、鉱床中級講座で実施した鉱石中の鉱石鉱物の反射顕微鏡による定性的同定法とは異なり、新たに硬度・反射率測定顕微鏡を用いた定量的同定法を実習しました。この実習のために、博物館或いは受講者が自分で用意した鉱石標本試料を用いて、研磨片作成実習を行いました。また、鉱床における有用金属元素の移動濃集作用に極めて重要な役割を果たした熱水(高温の水)の性質と起源を探る目的で、鉱石に伴う各種鉱物中に含まれる微細な流体包有物の産状観察および加熱・冷却顕微鏡による均質化温度(生成温度)・塩濃度測定等の検討も行いました。

1日目

<午前>

  岩石薄片の作製手順の説明の後、1階の薄片製作室で薄片作製実習を行いました。一部の方は、持参した岩石を使用しました。岩石薄片は、光が岩石(鉱物)を透過するほど薄く(0.03mm)し、かつ表面を平らにする必要があり、薄片作成にはかなりの技術を必要とします。参加者の皆さんは、岩石を切断するダイヤモンドカッター(丸鋸)の使用したり、岩石表面を回転研磨板やガラス研磨板で研磨するのは初めての経験で、最初は皆さんかなり緊張し、おっかなびっくりの様子でした。岩石を薄片の大きさに切断し、片面を粒度の異なる研磨剤で磨き、それを接着剤でスライドグラスに貼付けるまでを行いました。

<午後>

  最初の講義は、中級ではあまり説明をしなかった、元になる玄武岩質マグマからどのようにして、はんれい岩(塩基性岩)からかこう岩(酸性岩)までのさまざまな岩石ができるか(この作用が結晶分化作用)についてでした。その後、かこう岩やはんれい岩の薄片を偏光顕微鏡で観察しました。中級で行った主要な造岩鉱物の特徴や識別方法の理解の復習のほか、特に鉱物どうしの接触関係の観察からマグマから鉱物が晶出する順序を推定することを行いました。鉱物の特徴を理解するために、部分的なスケッチをしました。
   
   

2日目

<午前>

  前日にスライドグラスに接着した岩石試料を薄片に仕上げる作業を行う予定でしたが、接着がうまく行っていなかったため、急遽予定を変更して、変成岩(変形岩)の変形についての講義を行いました。液体であるマグマから晶出する火成岩とは異なり、変成岩は一般に地下深部の応力も加わった状態での鉱物どうしの反応(固体反応)によってできるので、応力によるいろいろは変形構造が見られます。逆に、その変形構造により岩石に加わった力の性質や方向を推定できます。このようなことの説明です。地震は地下深部における岩石の破壊現象ですので、地震破壊の様子が岩石の変形構造に残っていることがあります。

<午後>

  スライドグラスに再度接着した岩石試料が固まったので、ダイヤモンドカッターで薄く切断し、もう一方の面の研磨とカバーグラスの接着を行いました。最初は荒い研磨剤を使用し、ある程度まで薄くしたら、細かい研磨剤とガラス研磨板による微妙な研磨です。ときどき顕微鏡でチェックをしますが、いつのまにか磨り減ってなくなってしまう人もいました。余裕のある方にはダイヤモンドペーストによる研磨まで行ってもらいました。

  その後は、火成岩にはほとんど含まれていない、変成岩に特徴的な鉱物についてその特徴と見分け方を偏光顕微鏡で観察しました。また、変形構造の観察もしました。しかし、いろいろな変形構造が見られる薄片が揃っているわけではないので、各種の変形構造を示す薄片写真を使って、どのような力が加わってできたかを推定してもらうことをクイズ形式の実習も行いました。

  講義・実習を通じて、偏光顕微鏡観察によって造岩鉱物の種類や性質がわかるばかりでなく、岩石の組織や構造を観察することによって、鉱物がマグマから晶出する順番や鉱物どうしの反応の推定、さらに岩石に加わった応力の方向など、岩石の形成過程も推定できるということを理解していただけたかと思います。

  アンケートによると、薄片作製実習での、日頃行ったことのないダイヤモンドカッターによる岩石切断や研磨機器の使用に、皆さん満足されていたようです。