【活動報告】2013年8月31日(土)・9月7日(土)遺跡出土遺物:木製品パラタクソノミスト養成講座(中級)

遺跡出土遺物:木製品パラタクソノミスト養成講座(中級)

日 時:2013年8月31日(土)・9月7日(土) 10:00〜16:00

場 所:8月31日 札幌市中央図書館・札幌市埋蔵文化財センター

9月7日  北大総合博物館・共同研究室

講 師:守屋 豊人(北海道大学埋蔵文化財調査室)

佐野 雄三(北海道大学農学研究院)

渡邊 陽子(北方生物圏フィールド科学センター)

参加人数:5名

スケジュール

8月31日(土)

10:00〜10:10 講座開講の挨拶、講師の紹介、スケジュールの説明

10:10〜11:55 木製品の残存状態の観察に関する講義

11:55〜13:00 昼食休憩

13:00〜15:00 札幌市埋蔵文化財センター展示室における、木製品の観察

15:00〜15:10 休憩

15:10〜15:55 人々と古環境との関連についての講義

15:55〜16:00 講座閉講の挨拶

9月7日(土)

10:00〜10:10 講座開講の挨拶、講師の紹介、スケジュールの説明

10:10〜12:00 肉眼的な観察に基づく木材の樹種識別講義

12:00〜13:00 昼食休憩

13:00〜15:00 肉眼的な観察に基づく木材の樹種識別の実践

15:00〜15:10 休憩

15:10〜15:55 北海道大学埋蔵文化財調査室に移動、構内遺跡出土木製品の観察実践

15:55〜16:00 講座修了の挨拶、修了証の授与
講義内容

1日目

<午前>

本講座は5名の受講生を迎え開催されました。まず講座開講の挨拶および講師の紹介、本講座全体のスケジュールについて説明をしました。続いて、木製品の残存状態の観察に関する講義を行いました。脆弱である木製品のため、現代に付けられた傷と加工痕との区別、展示室で活用するためなどにおこなわれている「保存処理」のあり方を、実際の資料を例示して講義が展開しました。受講生たちは、北大構内の遺跡から発見され、保存処理された資料を手に取り、木取りや加工痕、残存状態、保存処理方法等に着目しながら観察を実践しました。

<午後>

札幌市埋蔵文化財センター展示室において、展示されている木製品の観察を行いました。札幌市埋蔵文化財センターの概要を説明した後、K39遺跡エルムトンネル地点(第6次調査範囲)の出土木製品を受講者各自で観察し、観察方法を学びました。講師による、観察結果発表の例示の後、観察項目に沿って、展示されている木製品を観察し、各々の視点で資料に関して気づいた点を観察結果として発表しました。各受講生は、臆することなく、皆の前で発表していました。休憩をはさんだ後、人々と古環境との関連についての講義を行いました。遺跡から発見される木製品として、竪穴住居址に発見された柱材を例示し、多くの柱材が周辺古植生に存在した樹種を利用している点、垂木などに利用された、主体的樹種と若干の相違がある点を説明して、札幌市周辺遺跡における、擦文文化の人々と古植生との関わりが説明されました。

以上をもって、パラタクソノミスト養成講座(中級)1日目が終了しました。
   
   

2日目

<午前>

本講座二日目は5名の受講生を迎え開催されました。まず講座二日目開講の挨拶、本講座全体のスケジュールの説明、講師の紹介をしました。続いて、佐野講師、渡邊講師による、「肉眼的観察に基づく木材の樹種識別」の講義がおこなわれました。説明の資料をスクリーンに映し出し、木材構造の写真を見ながら、針葉樹と広葉樹との区別、広葉樹における組織配列の特徴説明、肉眼観察をおこなう際の指標について丁寧に説明する講義が進められました。受講生からは、写真の見方、諸特徴を理解するため、質問が講師に数多くなされていました。

<午後>

材鑑を用いた、「肉眼観察に基づく樹種識別」を実践しました。北海道を代表する樹木をよりよく理解するための観察材料(材鑑)14点を各受講生が各々で観察し、午前中に説明された各指標を確認しながら、講義が展開されました。講義が各資料を区別し、樹種を特定するテスト形式であったため、答え合わせの際には歓喜の声があがる勢いで、すべての答えがあっていた受講生の笑顔が印象的でした。

樹種識別の知識を深めた後、構内出土の木製品について観察実践をおこないました。木製品の木取り、加工痕の区別とともに、木口面における木材組織の認識が可能かどうかを確かめる受講者の姿がみられました。

上記の内容を経て、パラタクソノミスト養成講座(中級)全日程が終了しました。