【活動報告】2013年9月28日(土)〜29日(日)岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)


岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)

日 時:2013年9月28日(土)〜29日(日) 10:00〜16:30

場 所:北大総合博物館・2階機器分析質

講 師:在田 一則(北大総合博物館 資料部研究員)

参加人数:8名

スケジュール

28日(土)

10:00〜10:10 講座開講の挨拶、講師の自己紹介、受講生の自己紹介、スケジュールの説明

10:10〜12:00 講義(地球深部の層状構造、プレート運動と岩石の成因)

12:00〜13:00 昼食

13:00〜14:00 講義と実習(偏光顕微鏡を取り扱うための基礎と顕微鏡の構造)

14:10〜14:20 休憩

14:20〜16:30 実習(偏光顕微鏡による岩石の観察項目)

29日(日)

10:00〜12:00 実習(主要な造岩鉱物の鏡下での特徴と観察)

12:00〜13:00 昼食

13:00〜16:15 実習(岩石の鏡下観察とスケッチ)

16:15〜16:30 片付け、アンケート記入、修了証授与式、閉講の挨拶


講義内容

1日目

<午前>

   今回の参加予定者は東京から参加した2名を含めて9名でしたが、お一人が急に本州転勤になり、引っ越し作業があるということで、朝資料をお渡ししただけの参加になりました。

   午前の講義では、岩石初級で行った地球の構造の復習とプレートの運動とそれにともなういろいろな岩石の形成について学びました。とくに、地球表層部である地殻でもっとも多い岩石(火成岩)のもとであるマグマがどのようにして作られるか、また、マグマからさまざまな火成岩が作られる仕組み(結晶分化作用)について学びました。

<午後>

   偏光顕微鏡は通常の光学顕微鏡にはない、偏光(1方向にのみ振動している光)を取り出す装置(偏光ニコル)が上下2ヶ所にあり、それにより、岩石を作っている鉱物(結晶)の光学的性質を調べて、鉱物の種類を鑑定します。そのため、偏光顕微鏡観察に必要な光の性質や偏光現象・複屈折について、偏光フィルターや方解石の結晶を使って実験しました。方解石を通して見ると、文字が二重に見える(複屈折)こと、それに偏光フィルターを当てて回転させて見ると、二重の像の一方と他方が交互に消えることなどの観察により、多くの造岩鉱物が示す複屈折現象、複屈折した光は1方向にのみ振動している(偏光)ということを理解しました。さらに、各人1台の偏光顕微鏡を使って、偏光顕微鏡による観察項目とその光学的な観察根拠についてパワーポイントによる説明を聞きながら実習しました。

   ほとんどの皆さんは偏光顕微鏡の使用は初めてのことで、戸惑いとともに興味津々という感じを受けました。
   
   

2日目

<午前>

   前日の偏光顕微鏡の観察項目の実習の続きです。偏光顕微鏡観察は鏡筒にある上方ニコル(偏光フィルター)を入れたり(直交ニコル状態)、はずしたり(平行ニコル状態)して、鉱物(結晶)の形・色・多色性・劈開(鉱物の結晶学的割れ目)・干渉色・消光角などの光学的性質を調べます。ニコルのほか偏光顕微鏡には、今回は使いませんでしたが、いろいろな装置があるので、初めての方には操作自体がたいへんのようでした。しかし、偏光顕微鏡が対象を単に拡大して見るだけではなく、その光学的性質を知ることができるということを理解していただけたと思います。また、2つの光が干渉して生ずる万華鏡のように鮮やかな干渉色には皆さん感動の様子でした。

<午後>

   午後の前半は、大型ディスプレイに写した岩石薄片の偏光顕微鏡像によって、個々の造岩鉱物の特徴の説明を聞き、各自観察によってそれを確認しました。しかし、同じ鉱物でも結晶の方向によってまったく違って見えることがあり、鑑定にはいろいろな特徴を観察し総合的に判断する必要があります。皆さんは典型的に見える薄片をお互いに見せあっていました。

   後半はスケッチをしました。スケッチは根気のいる作業ですが、鉱物や岩石の構造の特徴を理解するよい方法です。個々の鉱物の特徴とともに、顕微鏡の視野全体もスケッチしました。皆さん、それぞれの鉱物の特徴を表現した素晴らしいスケッチをしていました。

   時間が限られているので、完成には至りませんでしたが、皆さんにとっては岩石中級受講のよい記念品となったと思います。