【活動報告】2014年10月11日(土)〜12日(日)野外採集・地質見学会

野外採集・地質見学会

日 時:2014年10月11日(土)〜12日(日)

場 所:北海道北部地域(士別―下川―中頓別―歌登)

講 師:松枝 大治(北大総合博物館 資料部研究員)

           石井 彰洋(士別市立博物館)

           岡本 研 (士別市立博物館)

見学対象等:北海道北部、イドンナップ帯・日高帯の蛇紋岩類と随伴鉱物の産状観察および標本採集、休廃止鉱山におけるズリ鉱石採集と坑排水処理施設見学、砂金掘り体験 等
講義内容
10月11日(土)

09:00JR旭川駅集合後、貸切りバス(中型)で出発、移動バス内にて引率者から本見学会趣旨および詳細スケジュール等の説明が行われました。参加者は例年同様、遠くは東京、茨城を始め、帯広、旭川、厚真に加えて、札幌市および近郊の各市町村から合計26名が参加しました。

10:15士別市立博物館到着、士別市立博物館案内関係者と合流し、最初に館内地質関連展示を見ながら今回の見学地における地質概要の説明と関連展示の見学を行いました。判りやすい展示内容で代表的な標本展示等もあり、見学の予備知識を得るためには大変効果的でした。

11:30同博物館を出発、移動バス内にて現地案内者から詳細な本地域の地質発達史および見所(オフィオライト、カンラン岩、希産鉱物含クロムリヒター閃石など)についての説明がなされました。

11:50音根別ダム到着後、早速マムシ沢付近分岐点付近で散会して河原でカンラン岩、蛇紋岩、角閃岩、リヒター閃石、普通角閃石などの標本採集を行いました。その後、温根別ダム横の蛇紋岩大露頭において、蛇紋岩中に貫入する斑レイ岩とその熱変成作用で生じたアクチノ閃石およびアラレ石脈の産状観察と採集を行いました。ここでは良好な標本採集ができ、参加者も満足していました。

13:20同露頭を出発、時間節約を兼ねて移動バス内にて昼食を取りながらの移動となりましたが、約1時間半後に稼行時は道内最大級の層状含銅硫化鉄(キースラガー)鉱床の旧下川鉱山に到着し、ズリ堆積場にて含銅硫化鉄鉱石の採集を行いました。事前予備調査ではあまり期待できませんでしたが、当日は人海戦術効果(?)もあり、かなり良好な試料採集ができたのは幸運でした。

15:50頃日暮れも近くなったため、現地を出発し途中の音威子府コンビニエンスストアで事前注文していた夜間セミナー用の飲み物や軽食等をピックアップ、

18:20にほぼ予定通りピンネシリ温泉ホテル望岳荘に到着しました。入浴、夕食後に20:00から地元からの参加希望者も加わり、夜間セミナーを開きました。話題提供者と内容は次のようです;?堺 俊樹:道北の地質構造発達史、特にオフィオライトや蛇紋岩の分布、?松枝大治:本巡検訪問地に産する代表的かつ希産各種鉱物の基礎鉱物学とその産出意義、?西山 茂:枝幸砂金掘り論(道北の砂金・白金四方山話)。演者の熱も入って予定講演時間の超過が相次いだことと、会場の使用時間制限から予定していたフリー懇談の時間が不足してしまったのは大変残念でした。しかし、セミナー内容はいずれも充実していて大変興味深く、今回の巡検を裏打ちする意味でも効果的であったといえます。22:30にセミナーを終了し一応解散しましたが、巡検終了後の参加者アンケートによれば、その後も各部屋で個別に熱心な懇談が行われ、情報交換に大いに役立ったとの感想が寄せられています。
   
10月12日(日)

08:15朝食後、ピンネシリ温泉望岳荘を出発し、近くのシュウマロネップ川に到着、河原の露頭や河川礫から我が国では最大級のアンチゴライト巨晶を採集しました。中には最大3cmに達する透明美結晶やアンモナイト化石転石を採集した参加者等も居られ、大変ご満悦の様子でした。

09:10頃に現地を出発し、途中の中頓別コンビニで事前注文の昼食(弁当)をピックアップ後、近くの中頓別郷土資料館に到着、我が国でも有数の歴史を誇る砂金掘り関連の展示を見学し、当地における過去の歴史を学びました。

10:00資料館から程近い所にあるペーチャン川砂金掘り体験場に到着、わざわざ稚内より出向いて頂いた全日本砂金掘り協会監査・北海道砂金史研究会理事の半澤幸夫氏と合流して、プロの砂金掘り実技指導を受けた後に参加者全員で砂金掘りを開始しました。事前の技術指導の甲斐もあり、そこここで収穫の歓声が湧き上がっていました。最後に半澤氏にプロの技を見せて頂き、一同感嘆の声を上げるばかりでした。約1時間あまりの砂金掘り体験後、歌登経由の移動バス内で昼食を取りながら次の訪問予定地である本庫鉱山へ向かいました。

13:00予定通り本庫鉱山に到着、坑排水処理場見学と旧坑口周辺でズリ鉱石(銅鉛亜鉛)の採集を行いました。本庫鉱山は、道内では約1220万年前と珍しく古い形成年代(中期中新世)を示す銅鉛亜鉛鉱脈鉱床で、鉱床学関連研究者間ではその成因や生成環境等が注目されている鉱山です。本処理場では、人類がその鉱山開発の恩恵を受け文化的で便利な生活を営むことが出来た鉱山開発後も、その裏で引き続き半永久的にこのような坑排水処理事業などが継続されていることの意味・重要性などを参加者に理解してもらうことが出来たと思われます。

13:30に同鉱山を出発し、珊瑠(サンル)鉱山に到着(15:30)、本庫鉱山と同様の坑口閉鎖工事と坑排水処理施設現場を遠望しながらズリ鉱石(含Se金銀鉱石)の採集を行いましたが、期待以上に良好な鉱石ズリ標本の採集ができました。

16:10に同鉱山跡地を出発し、途中道の駅なよろでトイレと買い物休憩を挟んで、

18:30予定通りJR旭川駅に無事到着、解散しました。
   
 

共催:北海道大学総合博物館・士別市立博物館