作品紹介

―第3章 北大に眠る絵画―

 第3章では、総長室や大会議室などに飾られていたり、建物の改修や改築の関係で一時的に倉庫に保管されていたりしていて、私たちが通常あまり目にすることのできない作品を紹介します。
北海道立近代美術館の一番の人気作と言ってもよい《朝の祈り》を描いた林竹治郎、有島武郎の小説『生まれ出る悩み』の主人公の画家のモデルといわれ、故郷の岩内を描き続けた木田金次郎など、北海道美術史を語る上で欠かせない画家たちの作品は、北海道大学と北海道画壇との繋がりについての考察を促すものです。
他方、全く作者不詳でありながら大変すぐれていると判断されるような作品もありました。ShimizuやNakashimaなどの作品は、作者、作品名、制作年、来歴など不明で、今後の調査を待たなければなりませんが、私たちの心をとらえてやみません。
 このような作品を埋もれたままにしておかず、その美的、芸術的、文化財的価値を明らかにすることは、学術的に必要であるばかりでなく、本学がこれまで果たしてきた、またこれからも果たすべき文化的役割を検証する上でも大変に重要なことだと思われます。

灯台と犬
小川原脩(1911-1994)《灯台と犬》1970年
キャンバス、油彩 53.0×41.0cm 工学部/同秘書室


灯台がたつ丘と目を閉じ横たわる犬が描かれている。これら二つのモティーフは画面を分けるように上下に配置されているが、一方で画面は寒色で統一され、まとまりが感じられる。本作は、画面右下の「Shu.O -70」というサインから、1970年に制作されたと特定できる。この年以降、小川原は犬をモティーフにした作品を多く描いた。他に馬や鶏をモティーフにした作品も残されていることから、この時期小川原が動物を好んで描いていたことがわかる。  
北大ポプラ並木
上野春香(1896-1978)《北大ポプラ並木》1959年
キャンバス、油彩 53.0×45.5cm 学務部/クラーク会館 和室A付属室


 上野春香は、札幌出身、春陽会で活躍した洋画家。ポプラの木々は葉をつけていないものの、道のあたりには緑が茂り、空は霞がかかり、春先の景色と思われる。春の訪れとともに芽吹きつつあるポプラ木々は、ところどころ暖かみのある薄茶色や淡い水色を用いつつ、素早く勢いのある筆で描かれている。画面左下に「HARUKA UENO 1959」のサイン、裏面に「春陽会々員 上野春香作」「北大ポプラ並木 1959.4」の記載がある。