世界に2亜属63種が知られる:ニセハマベエンマムシ亜属Hypocaccus(51種,全世界),ハマベエンマムシ亜属Baeckmanniolus(12種,オーストラリア区を除く全世界).日本からは5種1亜種が知られる(このほかに不明種 aino がある).海浜性だが,一部の種は内陸の河原の砂地にも生息する.
1(2) 前胸背は平滑で,側部が弱く点刻されるにすぎない(図12A).中胸腹板後縁部(中胸-後胸会合線)は波線とならない. .. ハマベエンマムシ亜属
.......................................... ハマベエンマムシ
2(1) 前胸背は粗く点刻される.中胸腹板後縁部は点刻を具えた波線となる. ............................ ........................... ニセハマベエンマムシ亜属
3(4) 尾節は無点刻の部分をもつ.その無点刻部分は,時折粗い点刻列で二分される(図10E). .......... ................................. アラメハマベエンマムシ
4(3) 尾節は全体に点刻され,その点刻は先端に向かって細かくなる.
5(6) 前頭は粗い皺で密に覆われる(図10B).中胸腹板縁条は中央で途切れる(図9B). .............. ................................... ヤマハマベエンマムシ
6(5) 前頭に1,2本の横溝がある.中胸腹板縁条は完全.
7(10) 鞘翅基半部は平滑.
8(9) 鞘翅会合条は縁条とつながる. ............... .................................... ニセハマベエンマムシ
9(8) 鞘翅会合条は縁条と結合しない.(再検討を要する;種の記述参照). ................................. ................................. アカンハマベエンマムシ
10(7) 鞘翅半基部も粗く点刻される. .............. .............................. カラカネハマベエンマムシ
Hypocaccus (Hypocaccus) alexi Kryzhanovskij, 1976
図説H: 224; hara, 1994: 245 [再記載,♂交尾器].
体長3.68, 幅2.76.他種に比べやや大型で,鞘翅は小楯板後方の鏡部を除き粗く密に点刻される.尾節の中央に一対の無点刻部がある.珍しい種で,山地の河原から採集されている.分布:北海道,本州.沿海州.
カラカネハマベエンマムシ (図8D, 9D, 10D)
Hypocaccus (Hypocaccus) lewisii (Schmidt, 1890)
図説H: 224; hara, 1994: 248 [再記載,♂交尾器].
体長 2.26 -3.17, 幅 1.67-2.39.背面は粗く密に点刻を具え,前胸背中央と鞘翅鏡部分のみ無点刻に残される.海浜の腐肉に集まる.日本では北方に多く,日本海側では九州まで分布が延びる.分布:北海道,本州,九州.樺太.中千島.沿海州.韓国.
ニセハマベエンマムシ (図8C, 9C, 10C)
Hypocaccus (Hypocaccus) sinae (Marseul, 1862)
図説N: 67; 図説H: 223; hara, 1994: 250 [再記載,♂交尾器].
体長 2.39 -3.34, 幅 1.86 -2.45.ハマベエンマムシとよく似るが,中胸腹板後縁部が点刻を具えた波状であることから区別できる.同亜属他種とは鞘翅前方に点刻をもたないことから区別できる.ハマベエンマムシと本種は同所的にいるため,慎重な同定が必要である.三角台紙で腹面を覆うと同定に手間がかかるため,側面に台紙を張り付けるとよい.海浜の腐肉から採集される.まれに内陸の河原からも採集される.分布:北海道,本州,四国,九州.大陸中国.ウスリー.樺太.アフガニスタン.東洋区.オーストラリア.韓国.
ヤマハマベエンマムシ (図8B, 9B, 10B)
Hypocaccus (Hypocaccus) subaenus (Schmidt, 1890)
図説H: 223; hara, 1994: 252 [再記載,♂交尾器].
他種よりわずかに小型で凸型になる.背面は密に点刻され,特に前胸背は粗点刻を密に具える.中胸腹板にも点刻を具える.中胸腹板縁条前縁は途中で途切れる.砂地の河原から採集される.地理的な分化があるようで,特に本州のものは再検討が必要である.分布:北海道,本州.韓国.
アカンハマベエンマムシ (図11)
Hypocaccus (Hypocaccus) akanesis M. Ohara, 1994
Ohara, 1994: 255 [再記載,♂交尾器].
交尾器の形質が特徴的であるため,やや摩耗した雄一個体で記載したが,その後より状態のよい雌一個体が採集されたので,近く再記載をする予定である.再記載にともない形質記載の変更などもあるが,ここではhara (1994)の処理のまま保留としておく.分布:北海道.
ハマベエンマムシ (図12)
Hypocaccus (Baeckmanniolus) varians varians (Schmidt, 1890)
図説H: 223; hara, 1994: 258 [再記載,♂交尾器].
体長 2.45 -4.19, 幅 1.90 -3.20.サイズ,表面の点刻状態に変異があり,時に同定の難しい個体がある.前胸背の点刻はほとんどなく光沢が強い.中胸腹板後縁部に点刻はなく波状にもならない(まれに点刻を具える個体がいる).尾節は先端2/3が無点刻となることが多い.本属中では最も普通種で,海浜の動物性腐敗物から採集される.分布:北海道,本州,四国,九州.中国.台湾.樺太.ベトナム.フィリピン.スリランカ.ソロモン.オーストラリア.
オガサワラハマベエンマムシ
Hypocaccus (Baeckmanniolus) varians hatsune (Nakane, 1977)
図説H: 224; hara, 1994: 262.
鞘翅が茶色になる.雄交尾器は原亜種との差は見い出せない.分布:小笠原.
このほかに大陸の沿海州と中国に亜種 H. (B.) varians continentalis (Reichardt, 1941)がいる.