1-3-7-2 ツブエンマムシ族 Anapleini

 Anapleus 1属からなり,Olexa (1982)により創設された.


ツブエンマムシ属 Anapleus Horn, 1873

 世界に13種,新・旧北区,中米,東南アジア,南米,アフリカに分布.日本には4種が分布する.すべて体長2 - 3ミリで体全面が点刻で覆われているため,種の特徴がとらまえにくい.体長と点刻密度が重要な形質となるが変異も多く,きわめて同定の難しいグループである.土壌中,倒木上,ピットホールトラップで採集されている.

1(2) 尾節の中央は平圧される.   ............ オオツブエンマムシ

2(1) 尾節に平圧される部分はない.

3(4) 鞘翅の点刻は密で,肩部では点刻間は点刻の直径の約1/3離れる.  ............ ツブエンマムシ

4(3) 鞘翅の点刻は疎で,肩部での点刻間は 直径の1,2倍離れる.

5(6) 後胸腹板の点刻は一様.   ............ ナラツブエンマムシ

6(5) 後胸腹板の点刻は粗いものと細かいものが混成している.  ............ オカヤマツブエンマムシ


ツブエンマムシ (図6左上)

Anapleus semen (Lewis, 1884)

 図説 H: 224, f. 40-20; Ohara, 1994: 153[再記載,♂交尾器].

 体長2.05-2.23ミリ,幅1.46-1.85ミリ.4種のなかでは中型にあたる.黒色で脛節と触角は赤褐色.他の3種に比べ鞘翅表面の粗点刻は密で,点刻直径の0.3 - 0.5倍でお互いに離れる(図6左上).尾節の中央は平圧されず一様な凸状.後胸腹板中央は粗点刻を具え点刻は正中線付近で細かくなる.倒木上,ピットホールトラップによる採集で得られている.分布:北海道,本州,四国.

ナラツブエンマムシ (図6右上,左下)

Anapleus nakanei M. Ohara, 1994

 Ohara, 1994: 159 [原記載(奈良,本州)].

 体長1.89 - 2.07ミリ,幅1.42 - 1.52ミリで小型.鞘翅の粗点刻は疎で点刻直径の約1.5倍離れる(図6右上).後胸腹板中央は粗点刻を具え,粗点刻間に細点刻をもたない.尾節の中央は平圧されず一様な凸状.種小名は中根猛彦博士に献名.分布:本州,九州.

オカヤマツブエンマムシ (図6左中,右下)

Anapleus nomurai M. Ohara, 1994

 Ohara, 1994: 161 [原記載(奈良,本州)].

 体長2.09 - 2.13ミリ,幅1.44 - 1.56ミリで小型.A. nakanei にきわめてよく似る.2種間に点刻の微妙な密度や大きさの差はあるが,識別点としての実用は難しい.唯一「後胸腹板中央の粗点刻間に細点刻をもつ(図6右下)」違いが明瞭.尾節の中央は平圧されず一様な凸状.種小名は野村周平博士に献名.分布:本州.

オオツブエンマムシ (図6右中)

Anapleus hagai M. Ohara, 1994

 Ohara, 1994: 162 [原記載(中頓別,北海道)].

 日本産では最も大型,体長2.45 - 2.84ミリ,幅1.96 - 2.09ミリ.黒色で脛節と触角は明るい茶色.鞘翅の粗大点刻は直径の約1.5倍離れる(図6右中);先端1/5は皺状になる.尾節の中央は平圧される.種小名は芳賀馨氏に献名.分布:北海道,本州.


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