エンマムシ属 Merohister REITTER, 1909

 世界に6種,日本からは3種が知られる.前胸背側方に粗い点刻群をもつことで区別される.本属の日本産の種については私の再記載がある( Ohara, 1992a,b).

1(2) 頭部の前頭条内側前方にいくつかの粗い点刻をもつ.  ...........  アイヌエンマムシ

2(1) 頭部の前頭条内側に粗い点刻はもたない.

3(4) 中,後脛節は普通で偏平にはならない.前胸背の点刻はたいてい側方前半にある.雄生殖器のパラメラは細長い............  エンマムシ

4(3) 中,後脛節は広く偏平になる.前胸背の点刻は側方全体にある.雄生殖器のパラメラは太く短い............  アマミエンマムシ


エンマムシ (図4C, D, E)  Merohister jekeli (MARSEUL, 1857)

 Hister jekeli: 図説 N: 70. ..... Merohister jekeli: 図説 H: 226; Ohara, 1992a: 375 [再記載,♂交尾器].

普通種.古い牛糞,豚糞,鶏糞,植物やキノコ類の腐敗物,動物性腐敗物などさまざまな環境から採集される.分布.千島列島(色丹),北海道,本州,四国,九州,佐渡,伊豆諸島,対馬,南西諸島.樺太.沿海州.韓国.台湾(本土,蘭嶼島).中国.フィリピン.インド.


アイヌエンマムシ (図4A, B) Merohister aino (LEWIS, 1884)

Ohara, 1992a: 385 [再記載,♂交尾器].

体長(PPL:前胸背前端から尾節後端まで)7.2 - 8.2mm,最大幅5.05 - 5.9mm.黒色;フ節,触角は暗褐色.前頭条は通常前方中央で途切れ,その内側には数個の粗い点刻をもつ.前胸背側条は完全;その内側に粗い点刻を広く後方までもつ.鞘翅の外副肩条は基部1/2,内副肩条は後方2/3にあり,背条1-3条は完全;4条は後方1/2から完全にあるものまで変異がある;5条と会合(6)条は後方1/4にある.前尾節,尾節はエンマムシに比べ粗い点刻をまばらにそなえる.脛節は偏平.鳥の巣材の中や伐採木の上を歩いていた個体が採集されているため,樹上の鳥の巣に依存した種と考えられる.少ない.分布.北海道,本州(栃木県より北).


アマミエンマムシ (図4F, G) Merohister uenoi M. Ohara, 1992

  Ohara, 1992b: 495 [記載,♂交尾器].

原記載で採集された1雄のみが知られる.大型種.体長(PPL)9.23mm,最大幅6.46mm.黒色;フ節,触角は赤褐色.前頭条は完全で前方中央でやや後方へ角張る.前胸背側条は完全;その内側にはまばらに粗い点刻をもち,後半はよりまばら.鞘翅の外副肩条は肩部にあり,内副肩条は後半にある;背条1-3条は完全;4条は基部1/6を欠く;5条は後方1/3;会合条は中央後方1/4にある.前尾節,尾節は粗い点刻をそなえ,尾節ではやや密.脛節は偏平.雄交尾器は特異な形をしており,パラメラの腹面に鈎をもつ.採集者の大林延夫博士によると,採集当日動物死体などの採集はしていないため,材かビーティングで採集されたものらしい.ainoに形態も似ており,同じ様な生活をしている可能性がある.種名は上野俊一博士に献名.分布.南西諸島(奄美大島:初野).


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