1-3-2. コブエンマムシ亜科 Chlamydopsinae 

 世界から9属約50種が知られ,大半の属はオーストラリア・タスマニア・ニューギニア(5属),中南米(2属)から記録されており,東洋からはCeratohister(インド)とEucrtiopsis(台湾・日本)の2属が知られる.日本には最近記載された2種が分布.多くの種はアリの巣内で発見されている.Ohara (1994), Lawrence & Newton (1995: 816) で指摘しているとおり,本亜科の系統的な位置はよくわからない.私は前胸の構造からセスジエンマムシ亜科の近くに置いたが,調べた標本も少なく,さらに検討が必要である.


コブエンマムシ属 Eucurtiopsis Silvestri, 1926

 Silvestri (1926)が1属1種 mirabilis として台湾から記載.日本から2種が加わり,現在3種が知られる.鞘翅外側に切れ目を持ち,その内側に毛を密生させる.この特異な特徴で他と区別される.

1(2) 体長(前胸先端から鞘翅後端)1.79 - 1.88 mm. 頭部に縦隆起はもたない.前胸背中央の隆起はよく発達する.鞘翅外側縁部の隆起は著しい............... アリノスコブエンマムシ

2(1) 体長(頭部先端から鞘翅後端)1.58 mm. 頭部中央に2縦隆起を持つ.前胸背中央の隆起は弱い.鞘翅外側縁部の隆起は弱い. ........... オキナワコブエンマムシ

アリノスコブエンマムシ (図3A)

Eucurtiopsis ohishii (K. Sawada, 1993)

Boreochlamydus ohtanii K. Sawada, 1994: 28 [♂交尾器]. ---- Eucuritopsis [sic] ohtanii: Ohara, 1994: 78 [再記載]. ---- Eucurtiopsis ohtanii: Nishikawa, 1995: 258 [擬態]. ---- Eucurtiopsis sp.: Nishikawa & Maruyama, 1993: 230, 246, Pl. 13, fig. 2 [全体図].

 本種はすでに十数年前に中根猛彦博士が石田正明氏より標本を譲り受けており,私のもとに標本を置き共著の記載準備をしていた.西川正明氏も記載準備をしていたが(西川・丸山,1993),私の学位論文に含める予定を伝え,かち合うのを避けた.ところが,まったく独立に関西でも澤田高平博士が準備されていたようで記載がなされた.私の学位論文の発表が遅れ,中根博士,西川氏にはご迷惑をかけた.さて,アズマオオズアリ Pheidole fervidaの樹皮下コロニーより採集される.本種は兵アリの頭部に擬態しているらしい.分布:本州(埼玉,神奈川,静岡、三重)、九州(大分).

オキナワコブエンマムシ (図3B)

Eucurtiopsis hiranoi Nishikawa, 1995

Nishikawa, 1995: 259.

 交尾器未検討.おそらく土壌リターから採集されたもの.分布:南西諸島(沖縄本島).


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