概要

島弧−大陸縁辺部の地質テクトニクス場では、活発なマグマ活動とそれに(密接に)伴う熱水活動に関係して多様な金属鉱床が形成されている。金属元素をトレーサーとして、地殻における元素循環に関わる地球化学的研究を行なうことを目的として、国内外の各種金属鉱床における詳細な野外観察や標本収集を行なっている。さらに、それらの関係標本類を用いた各種室内実験を実施することにより、鉱物記載、鉱床生成条件や元素の起源の推定、元素の固定プロセスとその制御要因の解明等の研究を行なっている。

テーマ

島弧—大陸縁辺部における金属鉱化作用とその成因解明

マグマ活動の活発な島弧−大陸縁辺部における熱水活動と金属鉱化作用に関して、現地調査(国内各地、カムチャッカ、インドネシア等)と共に各種室内実験を実施している。具体的には、a)浅熱水性金鉱床の成因と生成環境、b)ゼノサーマル型多金属鉱脈鉱床の生成過程、c)ポーフィリー(斑岩)型Cu-Mo鉱化作用の特性などに関する研究。

約100万年前に生成した金鉱石(光竜鉱山産)

約100万年前に生成した金鉱石(光竜鉱山産)

 島弧-大陸縁のテクトニクス環境

島弧-大陸縁のテクトニクス環境

熱水・変成流体の特性と起源、および重金属移動過程の解明に関する地球化学的研究

地殻における物質移動と地質現象の重要な担い手である熱水について、湯沼、鉱石、変成岩、及び活地熱地帯などを対象に化学分析、流体包有物、安定同位体比等の観点から実験・検討を加え、新知見を得ている。具体的には、a)火口湖・湯沼の地球化学的研究、b)流体包有物のMicrothermometryと化学組成・安定同位体比、c)活地熱帯・温泉地域における熱水の起源と重金属輸送過程に関する研究などである。

金属鉱化作用を伴う浅所マグマ-熱水系モデル(豊羽鉱山の例)

金属鉱化作用を伴う浅所マグマ-熱水系モデル(豊羽鉱山の例)

熱水条件下で成長した鉱物の組織とその成長制御要因の解明

地殻における熱水を介した元素移動において、浅所での複雑な地質過程と物理化学的条件の変化により、結晶の成長という表現形で元素固定が成される。そのプロセスは結晶成長組織の形で保存されるため、その鉱物組織の解析が熱水の特性や変化を詳細に明らかにする期待が大きく、以下の研究対象を選び検討している:a)熱水鉱床(鉱脈・スカルン・海底熱水鉱床等)、b)温泉スケール(国内外の地熱・温泉地帯)など。

閃亜鉛鉱(黄~濃褐色部)と菱マンガン鉱(透明部)の成長組織(稲倉石鉱山産Mn鉱石)

閃亜鉛鉱(黄~濃褐色部)と菱マンガン鉱(透明部)の成長組織(稲倉石鉱山産Mn鉱石)

熱水変質作用の研究

元素移動に深く関わった熱水は、その通路にある母岩において特徴的な変質帯を形成する。従って、母岩の熱水変質作用の詳細な野外観察と各種室内実験に基づいて、それぞれの変質帯における活動熱水の温度、pH条件、酸化度、元素移動などの各種情報を得ている。具体的には、a)鉱床母岩の変質作用と熱水の特性(鉱脈型熱水性鉱床母岩)、b)水/岩石反応における元素の挙動と変質過程(各種熱水変質帯)など。

今後の展望

岩石学的・鉱物学的手法を用いた鉱石の形成作用(金属元素の濃集作用)の研究は、単に鉱石の構成鉱物記載や生成条件を明らかにするだけでなく、今や国際的にも大きな課題となっているレアメタル、レアアース資源やクリーンで無限の新エネルギーとして期待される地熱エネルギーの探査・開発にも大いに貢献するであろう。また、このような鉱床学的研究は、地殻における元素の移動濃集プロセス(地球化学的挙動)の解明につながる事から、逆の分散過程における環境汚染(坑内排水・土壌の重金属汚染・放射性廃棄物等)防止にも多大な貢献をすることになる。