【活動報告】2012年9月29日(土)−30日(日)岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)

岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)

日 時:2012年9月29日(土)−30日(日) 10:00〜16:30

場 所:共同研究室・機器分析室

講 師:在田一則(北大総合博物館 資料部研究員)

参加人数:6名

スケジュール

29日(土)

10:00〜10:10 開講式

10:10〜12:00  講義(プレートテクトニクスと岩石の成因)

12:00〜13:00  昼食

13:00〜14:00 実習(岩石の肉眼観察)

14:30〜16:30 講義と実習(偏光顕微鏡を扱うための基礎)

30日(日)

10:00〜12:00 実習(主要な造岩鉱物の鏡下観察)    

12:00〜13:00 昼食

13:00〜16:10 実習(岩石の鏡下観察とスケッチ)

16:10〜16:30 閉講式(アンケート、修了証の授与)


講義内容

1日目

<午前>

  午前の講義では、初級ではあまり触れなかった岩石の成因について詳しく説明しました。とくに、地殻を作っている岩石の65%を占めている火成岩の成因について、プレート境界のタイプの違いとどのように関わっているかをお話しした。また、マントルを構成するかんらん岩の一部が溶けてできた玄武岩質マグマから、超塩基性(超苦鉄質)のかんらん岩から酸性(珪長質)の花こう岩までの多様な岩石が形成される仕組み(結晶分化作用)についても説明しました。

<午後>

  午後の実習では、初めに、初級で行った岩石の肉眼鑑定の復習を簡単に行い、後半では偏光顕微鏡の原理と使い方の実習を行いました。偏光顕微鏡は、通常の光学顕微鏡とは異なり、ものを拡大して観察することのほかに、顕微鏡の上下に設置されている偏光装置により、鉱物(結晶)の光学的性質を調べ、それによりその鉱物を鑑定するという目的もあります。そのための基礎として、偏光現象、複屈折、干渉色などについて説明しましたが、皆さんにとっては説明不足かなとの印象でした。光学的異方体(ほとんどの造岩鉱物)を通過する光が二つに分かれるという複屈折現象は市販の偏光フィルタや方解石結晶を使って説明しましたが、皆さんは方解石を通すと文字が二重に見えることに驚き、偏光フィルタを回転させながらその二重像を見ると、二重の字が交互に消えたり現れたりするのに感心していました。

2日目

<午前>

  午前は、各自1台の偏光顕微鏡を使い、偏光顕微鏡で見たときの主要な造岩鉱物の特徴や見え方を学び、それらの特徴によって鉱物を識別(鑑定)することを実習しました。上のニコル(偏光板)をはずした状態(開放ニコル観察)と入れた状態(十字ニコル観察)を交互に切り替えて観察するので、慣れない皆さんにはたいへんのようでした。さらに十字ニコル観察では、鉱物のさまざまな、ときには万華鏡のように鮮やかな干渉色が見え、なぜそのような鮮やかな干渉色を生ずるのかを理解するのはたいへんのようでした。しかし、かんらん石や白雲母の鮮やかな干渉色には皆さん感動したようすでした。

<午後>

  午後は、代表的な火成岩(深成岩3枚、火山岩3枚)、堆積岩(3枚)、変成岩(3枚)の薄片を使って、個々の岩石の観察とスケッチをしました。スケッチの目的は丹念に観察することによってそれぞれの鉱物の特徴を覚えていただくことにあります。しかし、ほとんどの皆さんは顕微鏡をのぞきながらのスケッチは初めての経験のようで、根気のいる作業に、目も疲れ頭も痛くなったのではないでしょうか。しかし、鉱物同士の組み合わさり具合からマグマから結晶する鉱物の晶出順序がわかるということには納得していただいたと思います。造岩鉱物の光学的性質は鉱物方向によっても変わります。そのため、同じ鉱物でも違うように見えることがよくあり、鉱物を識別するには慣れと努力が必要です。

  最後に修了証書をお渡しして終わりました。