授業報告 博物館学特別講義 II 第4回 5月10日

4回 510


担当教員:小林快次
 今日は小林先生の最後の講義であった。今回の講義では、博物館評価のためのアンケートの活用方法について学んだ。

 
来館者の実態を客観的に評価するためには、来館者の基礎データ性別、年齢、職業等だけではなく、博物館の展示に対する意見を探る必要がある。来館者の意見をアンケートによって探るには大きく分けて2つの方法があり、多数の来館者に質問紙に記入してもらう方法と、質問者が来館者に対面式で意見を聞き取る方法である。前者は多数の来館者の動向を大まかに知ることができ、後者は少数の来館者の博物館展示に対する関心を深く探ることができる。過去に北大総合博物館で行ったアンケートは、ミュージアムショップのグッズ開発やリニューアル展示に特化した調査を除いて全て前者の形をとり、来館者のアンケート記入の負担を減してできるだけ多くのデータを得るために具体的な質問項目は博物館側で設け、それを5段階または4段階で評価してもらう形式をとっていたということである。

アンケートによって得られた来館者のデータをまとめる際には単純集計と2つの質問を組み合わせて集計を行うクロス集計を行う。これにより、単純集計だけでは見えなかった来館者の特徴が見えるようにもなる。例えば北大総合博物館で行われたアンケートでは、展示に満足しているとの回答が全体の8割近くにのぼり、一方で来館回数が1回以上の客層が極端に少ない。この結果を満足度と来館数に関してクロス集計しなおすと、来館数1回の来館者の満足度が高く、来館数が上がるにつれて満足度が大幅に下がる傾向が見られた。

ここで注意する必要があるのは、自分たちがそのデータを評価するときに主観が伴われているという点である。アンケートは現状の来館者の動向を統計的データとして提示するが、それをどのように解釈するかは我々次第であり、それ故アンケートを行う目的は明確にする必要があると小林先生は強く仰っていた。

今回で3回に及ぶ小林先生の講義は終わりである。3回の講義を通じて常に先生が仰っていたのは、「博物館のあり方に正しい、正しくないという区分けは存在せず、どのようなあり方が自分にとって理想かを考える事が重要である」という事であった。博物館のあり方の多様さを実感し、自分にとっての理想の博物館とは、理想の展示とは何なのかについて深く考えさせられる講義であった。(理学院自然史科学専攻修士1年 福田洋之)