授業報告 博物館学特別講義 II 第12回 7月9日

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担当:鈴木幸人

今回の授業ではまず、「ディスプレイデザイナー」という仕事について、若者向けに紹介するNHKの番組ビデオを鑑賞した。ディスプレイデザイナーは百貨店のショーウィンドウや遊園地など、様々な場所でのディスプレイ制作に従事しているが、今回取り上げられていたのは美術館の展覧会に関わる仕事風景である。それは新しくオープンする美術館の、第一回目の展覧会となる現代美術の大きな展覧会であった。「敬遠されがちな現代美術を、いかにわかりやすく伝え、美術館に来たことのない人にも足を運んでもらえるような展示」を目指し、思考錯誤しつつ展覧会のデザインを作りあげる様子が描かれていた。その仕事は、まず展覧会のイメージを掴み、具体的な設計図を提案し、会場の実際の製作を行うという大きな流れでまとめられる。中でも特に印象的だったのは、最初の段階で、自身が作品について勉強し、作品のもつ意味合いまでを理解できるようになるための準備作業に、想像以上に重きが置かれていたことである。それによって、デザインの提案内容も変わってくる。どの作品に力を入れて見せたいのか、それはなぜなのか、という感覚を、学芸員とデザイナーが共有していないと、作品をひきたてるような展示は作ることができないのだろうと思った。
ビデオ鑑賞後の意見交換では、展示を作るにあたっての、学芸員と業者の方との関わり方についての意見が多かった。作品についての専門職である学芸員と、展示の仕方についての専門職であるデザイナーは、どのように協力するのが最も理想的なのだろうか。明確な答えは無いだろうが、大切なことは、1つのコンセプトを共有すること、互いのノウハウに任せずに自分でも勉強を重ねること、クリティカルであること、等と言えるのではないだろうか。学芸員に限らず、展覧会に関わる方々の仕事内容について勉強することで、展覧会や展示作業を多角的に見ることができ、1つの展覧会の背後には多くの人の思いや努力があることを実感する授業であった。
(文学研究科思想文化学専攻 修士1年 室谷美里)