【活動報告】12月3日〜4日岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)

12月3日〜4日岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)

日時:2011年12月3日(土)〜4(日) 10:00〜16:30

場所:北大総合博物館・共同研究室

講師:在田一則

参加人数:6名


スケジュール

3日(土)

10:00〜10:10 開講式

10:10〜12:00  講義(プレートテクトニクスと岩石の成因)

12:00〜13:00  昼食

13:00〜14:00 実習(岩石の肉眼観察)

14:30〜16:30 講義と実習(偏光顕微鏡を扱うための基礎)

4日(日)

10:00〜12:00 実習(主要な造岩鉱物の鏡下での特徴)    

12:00〜13:00 昼食

13:00〜16:10 実習(岩石の鏡下観察とスケッチ)

16:10〜16:30 閉講式(アンケート、修了証の授与)


講座の目的

岩石の三大区分である火成岩・堆積岩・変成岩について、岩石標本や岩石を作っている鉱物(造岩鉱物)標本を肉眼やルーペ(拡大レンズ)で、また岩石薄片を偏光顕微鏡で観察します。それによって、岩石の組織(構造)の特徴や造岩鉱物の光学的な特徴を学び、造岩鉱物や岩石を鑑定する方法を学びます。それらの岩石が地球のどのようなところでできるのか、プレートの運動とどのように関わっているかも学習します。

1日目

<午前>

鉱物や岩石に関する基礎的な知識については初級で学んでいますので、講義では、岩石の成因についてお話ししました。とくに、地殻を作っている岩石の65%を占めている火成岩がプレート運動と関わってどのようにしてできたかをお話ししました。また、マントルを構成するかんらん岩が溶けてできた玄武岩質マグマから、超塩基性(超苦鉄質)のかんらん岩から酸性(珪長質)の花こう岩までの多様な岩石がどのようにしてできるか(結晶分化作用)についても説明しました。
 

<午後>

初めに、初級で行った岩石の肉眼鑑定の復習を行い、後半では偏光顕微鏡の原理・使い方の実習を行いました。最初に「偏光顕微鏡の世界」という10数分の映像を見ていただきました。偏光顕微鏡は、通常の光学顕微鏡とは異なり、ものを拡大して観察することのほかに、顕微鏡の上下に設置されている偏光装置により、鉱物(結晶)の光学的性質を調べ、それによりその鉱物を鑑定するという目的もあります。そのための基礎として、偏光現象とはどういうことかとか、ほとんどの造岩鉱物(光学的異方体鉱物)に見られるその中を通過する光が二つに分かれるという複屈折現象などを、市販の偏光フィルタや方解石の大きな結晶を使って理解していただきました。皆さんは方解石を通して文字を見ると二重に見えることに驚き、偏光フィルターを回転させながら二重像を見ると、二重の字が交互に消えたり現れたりするのに感心していました。私たちの身の回りの光も偏光していることを偏光フィルタを使って確かめました。
   


2日目

<午前>

主要な造岩鉱物の偏光顕微鏡下での特徴や見え方を、各自1台の偏光顕微鏡を使い、鉱物鑑定にそって実習しました。上のニコル(偏光板)をはずした状態(開放ニコル観察)、入れた状態(十字ニコル観察)で観察するので、慣れない皆さんにはたいへんのようでした。さらに十字ニコルでは、鉱物のさまざまな干渉色が見え、なぜそのような鮮やかな干渉色を生ずるのかを理解するのはたいへんのようでした。しかし、かんらん石や白雲母の鮮やかな干渉色には皆さん感動したようすでした。
     

<午後>

代表的な火成岩(深成岩3枚、火山岩3枚)、堆積岩(3枚)、変成岩(3枚)の薄片を使って、個々の鉱物の観察とスケッチをしました。スケッチの目的は丹念に観察することによってそれぞれの鉱物の特徴を覚えていただくことにあります。しかし、ほとんどの皆さんは顕微鏡をのぞきながらのスケッチは初めてのことで、根気のいる作業に、目も疲れ頭も痛くなったのではないでしょうか。しかし、鉱物同士の組み合わさり方からマグマから結晶する鉱物の晶出順序がわかるということには納得していただいたと思います。造岩鉱物のほとんどは光学的異方体なので、切断している方向によって光学的な性質が違います。そのため、鏡下では同じ鉱物でも違うように見えることがよくあり、鑑定法を習得するには慣れと努力が必要です。最後に修了証書をお渡しし、一同で記念写真を撮りました。