医学標本の世界

医学標本の世界では解剖学的ロウ製皮膚病模型のムラージュを展示しています。
ムラージュ(moulage)とは「型による成形」という意味のフランス語です。ロウを用いた模型の起源はエジプトの副葬品(紀元前3500年頃)に、人物模型としての起源は同じくエジプトのデスマスク(紀元前2000年頃)に遡ることができます。本格的な解剖学的ロウ製模型は16世紀に始まりますが、その中でもロウ製皮膚病模型は最も盛んに作製され、現存するムラージュの殆どは皮膚ムラージュです。しかし、皮膚ムラージュの作製には多大な労力と財力を必要としたため、多数を保有できたのはごく一部の大学や病院に限られました。症状の記録や医学教育に盛んに利用された皮膚ムラージュは精巧を極め、芸術の域にまで達しました。カラー写真の登場により役目を終えたムラージュですが、その作製方法が秘伝であったため、現在では修復も不可能です。医学的にも歴史的にも芸術的にも極めて貴重である皮膚ムラージュをご覧ください。

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考古遺物の世界

考古学とは、遺跡から出土した「遺物」と、その土に残された痕跡である「遺構」から人類の過去を復元する学問です。遺跡にその遺物や遺構が残された背景には、何らかの理由があるはずです。推理小説の名探偵のように、考古学者は断片的な証拠をつなぎ合わせてその謎を解き明かそうとしています。
遺物には土器や石器といった人工物のほか、貝や骨、植物の種、炭化物なども含まれます。遺物から人々の生活を復元する証拠を見出すためには、詳細な観察が欠かせません。さらに、部分的に破壊してその内部の原子の組成やDNAの塩基配列、組織の構造を調べることで初めて明らかになる事実もあります。
当館に収蔵されている遺物とその分析成果を通して、古代の人々の生き様に思いをはせてみてください。

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生物標本の世界

現生の生物の種数は、2,000 万、おおく見積もると1億という説もあります。記載され名のついた種は、約 175 万種。2,000 万種としても 1 割に満たない種しか私たちは認識できていません。
北海道大学では、開校以来、植物、海藻、昆虫、魚類、菌類の生物標本を蓄積し、生物分類学者を伝統的に輩出してきました。北大の生物標本を用い、多くの種が記載されてきました。アジア域の種の基本となる貴重なタイプ標本が多く含まれることも、北大の生物標本群の特徴です。
しかし、さらに新種は存在します。多くの新種は野外と同様に、博物館の標本庫からも見いだされています。博物館の生物標本は、タイムカプセルに封じ込めた生物多様性そのものであり、記録として重要性のみならず、将来の貴重な研究材料でもあるのです。
分子生物学の発展により、生物学は形態と分子の両面から進化・生態をとらえられるようになりました。分子情報の充実は、標本のもつ形態情報をより一層価値あるものにしています。北海道大学は、生物標本を扱う研究を、充実した環境で行える数少ない大学のひとつです。次世代の生物分類学者の本学への入学を期待し、膨大な生物標本のプロフィールを紹介します。

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古生物標本の世界

青く広がる海と空、深く生い茂る森や溢れ出る湧き水。この美しい地球には、175万種を超える生物がすんでいます。地球に生命が誕生したのは、約38億年前。私たちを取り囲んでいる生命は、地球というゆりかごの中で、気の遠くなるような時間をかけてゆっくりとゆっくりと、つちかわれたものなのです。
古生物学とは、約38億年という長い歴史のなかに実在していた生物を「化石」という形で発見し、生命の歴史をたどっていく研究です。どのような環境に、どのような生物がすんでいたのか、環境と生物の関連性や生命の神秘を紐解いています。
泥や砂などは、水に流され風に吹かれていき、地面にミルフィーユのように層になってつもります。これを地層といい、この中にはそれぞれの時代にすんでいた生物が化石となって残されることがあります。まるで古い書物を読むように、地層というページを一枚一枚めくっていくことで、思いもよらぬ太古の生物が発見され、生命進化の神秘を伝えてくれるのです。
生命の歴史をたどることで、進化という現象を見ることができます。進化を研究している研究者はたくさんいます。しかし、古生物学だけは、まるでタイムマシーンに乗っているかのように、地層をめくることで過去に実在していた生物を手に取ることができる唯一の学問です。
この「古生物学の部屋」では、生命の歴史を展示しています。当館に収蔵されている化石とともに、時間の流れを体感してみてください。

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鉱物・岩石標本の世界

古環境や極限環境という言葉が存在するように、地球には人間が介在できない領域が存在し、それが私たちの生活に影響を与えています。特に地球内部の変動は、私たちが生活を営むこの地球表層環境を作り、支え、そして時には激変させてきました。人類の持続性をより長期的にとらえるには、このような目に映らない空間や地球史的な時間を考慮した議論が必要になるでしょう。
この展示室は、こういった地球の悠遠な時空間に触れていただくために作られました。
環境が持つスケール感をつかむための手がかりにしていただけましたら幸いです。

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科学技術史資料の世界

北海道大学の研究・教育の現場で用いられてきた機器や装置、関連する資料の一部をご覧いただきます。
ある一つの研究室、一人の研究者を対象にしたとしても、日夜進められる学術活動の全貌をとらえることは極めて困難です。同じように、ある時期に大学全体でどのような種類の研究が活発であったのかを横断的にとらえることもほとんど不可能でしょう。
「分野の異なる専攻や研究室あるいは教室で、同時期に同じ技術に根ざした手法・装置によって研究がおこなわれていたとしたら…」「技術や装置は、どのような改良を加えられて科学技術の発展に寄与したのでしょうか」「研究者の道具はどのように変わってきたのでしょうか。そして研究者はどのような思いで、機器や装置を手に研究人生を歩んだのでしょうか」
科学技術史資料群は、こうした学術活動のリアリティを復元するための “新しい装置” となります。資料群を俯瞰する視点で観覧いただきながら、一つ一つの機器や資料の端々、機器の使われ具合や管理番号のプレートや銘板などにもご注目ください。そしてこの先に何を残すべきかについても思いを巡らせてみてください。

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