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活動報告

 

パラタクソノミスト養成講座 野外採集・地質見学会

 

(1)実施機関

北海道大学

(2)日時・場所

2013年10月12日(土)~13日(日) ・ 常呂町、斜里町、知床半島

(3)参加者数

33名

(4)活動概要

12日(土)
08:00~    JR北見駅集合・出発
09:00~    女満別空港(参加者3名ピックアップ)
10:15~    留辺蘂、常呂Au鉱山
11:50~    JR北見駅経由(参加者1名ピックアップ)
12:30~    常呂国力Mn鉱床着
13:15~     同 上 発(移動バス内で昼食)
14:45~    小清水原生花園(鳴き砂)(知床博物館合地学芸員と合流)
15:30~    斜里町、斜里川前浜(砂鉄)
16:10~    斜里町知床博物館(見学)
17:30~    ウナベツ自然休暇村(斜里町峰浜)着、入浴・夕食
19:00~21:00 夜間セミナー

29日(日)
08:00~ 自然休暇村発(斜里町・網走市参加者合流)
08:30~ 知床半島、真鯉(メノウ)
08:50~  同 上 オシンコシン(柱状節理)
09:40~ 宇登呂世界遺産センター(見学)
10:20~ 宇登呂(水冷破砕岩)
12:00~ 知床五湖(昼食、地すべり地形ほか)
13:30~ カムイワッカ(湯の滝)
14:00~ 岩尾別温泉(炭酸塩シンター)
15:10~ 自然休暇村(斜里町参加者解散)
15:40~ JR斜里駅(2名下車)
16:50~ 網走経由、JR女満別駅(2名下車)
17:00~ 女満別空港(4名下車)
17:35  JR北見駅(解散)

 

講義内容
1日目
 今回の巡検は斜里町知床博物館との共催で実施されたもので、北大総合博物館で募集、応募された参加者27名の他に、2日目からは別途知床博物館募集で参加された斜里町・網走市からの参加者6名(当初登録は10名)が加わって実施されました。

<常呂Au鉱山>

  常呂Au鉱山は昭和40年頃まで稼行された歴史があり、含金銀銅鉱物の産出が知られている鉱山で、現地の鉱山ズリ跡において比較的含有量の高い貴重な「銀黒」鉱石を採取した参加者もいました。

<国力Mn鉱山>

  常呂帯の層状Mn鉱床は海洋底の堆積性のものと考えられており、おもに赤鉃鉱を伴う黒色の二酸化マンガン鉱物からなりますが、マンガン鉱石は過酸化水素水により発泡(酸素放出)するため容易に識別できます。国力鉱山からは新鉱物のオホーツク石やマンガンパンペリー石を始めとした各種の稀産Mn鉱物などが産出しますが、それらしい標本採取ができた参加者も複数おられました。

<小清水原生花園、鳴き砂>
  「鳴き砂」は全国で約200箇所知られていますが、北海道では珍しく原生花園海岸に発達するものを含めて極めて珍しいものです。鳴き砂の正体は殆ど純粋な石英砂からなります。オホーツクの荒波で円磨された石英が、乾燥状態でこすれあうことにより音が鳴ります。現地で知床博物館の合地学芸員から詳しい説明と実演がなされた後、参加者は海岸の砂の採取を行いました。

<斜里川、砂鉄>

  網走から斜里にかけては屈斜路火山の火砕流等が広く分布しています。斜里川や海岸の砂にはこれらを起源とする砂鉄が含まれ、比重差により川の流れや海岸の波浪の影響で局所的に磁鉄鉱が濃集した黒い砂の集合体(砂鉄)が見られます。参加者は用意された磁石とポリ袋を利用して砂鉄の採取を行いました。しかし、参加者の多くは巡検ガイドによる事前の注意を忘れてそのまま直に磁石で採取したため、後で案内人が大変苦労して付着の砂鉄除去をする破目になりました(案内人の注意はよく聞きましょう!)。

<知床博物館>
  今回の共催者である知床博物館の見学を行い、展示物を前にして合地学芸員から知床半島の地質や発達史のみならず、広く生物や自然についても説明を受け理解を深めました。また、多くの参加者は同博物館で出版されている各種ガイドブックや書籍を購入しておられました。

<夜間セミナー>
  食後に開かれた夜間セミナーでは、合地学芸員により今回の巡検訪問先である知床半島の詳細な地質や自然、及び神居古潭帯に産する翡翠(ヒスイ)の成因・生成条件等について伺い、最後に日高ヒスイ標本をプレゼントされました。軽い飲み物や軽食をとりながらの和気あいあいの気楽なセミナーでしたが、約2時間の予定であったセミナーは次第に出席者の熱が入り、その後夜遅くまで質問や意見交換などが行われ、大変実り有るものとなりました。その中で、次年度の巡検候補地なども議論されました。

2日目
<真鯉メノウ>

  火山活動の最後に生じる熱水活動に伴い、岩石の割れ目中に熱水溶液中の珪酸成分(SiO2)や炭酸成分(CaCO3)が溜まり、メノウ・オパールや方解石脈が生成します。それらが海岸部で波浪の影響で円磨され、海岸の礫の中に混じって見つかります。巡検参加者は真鯉の海岸で沢山の乳白色の綺麗なメノウを採取することができました。

<オシンコシン柱状節理>
  知床を代表する景色の一つに挙げられるオシンコシンの滝付近では、玄武岩質安山岩が分布し、特徴的な規則正しい割れ目を示す柱状節理が発達しています。それらの産状観察を行うと共に、滝を背景に集合写真の撮影も行いました。

<宇登呂世界遺産センター>
  2009年4月、知床半島の世自然界遺産指定を受けて開館した知床世界遺産センターにおいて、知床の地質を始めとする多様な自然や動植物に関する展示見学を行いました。

<宇登呂水冷破砕岩>
  宇登呂の街には水冷火砕岩や貫入岩類が発達しますが、代表的な「ゴジラ岩」の奇岩露頭で合地学芸員による詳細な産状観察と成因に関する説明を受けました。

<知床五湖>

  折からの天候悪化と時間の関係から、短時間ではあったが知床五湖では知床硫黄山の山体崩壊によって形成された堰(せき)止め湖の集まりであることの説明を受けながら、湖の周囲を歩いて見学しました。残念ながら、悪天候のため雲に隠れて知床硫黄山や羅臼岳は一望できませんでした。

<カムイワッカ湯の滝>
  活発な活動によって形成された知床硫黄山から流出した硫黄溶岩(北大博物館展示)は、カムイワッカ湯の滝に沿って流れ出して世界的にも注目されました。現在も強硫酸酸性の温泉水が流れ出し、沢を下流に向かって流れ出しています。参加者は、その滝を上流に向かって裸足で歩いて登り、途中割れ目を埋めて発達する石英脈の観察等も行いました。あいにく、境省の規制で崖の崩落の危険性がある上流への立ち入りは制限されていましたガ、さらに巡検スケジュールの関係でそれ以上の登滝は断念して滝を下ることになりました。

<岩尾別温泉シンター>
  予定外でしたが、帰路に岩尾温泉に短時間立ち寄り、活動中の温泉水から沈殿しつつある炭酸塩シンターの観察を行いました。

 

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